同盟を破綻させる初手
龐統を呼び出した翌日。
曹昂は家臣達を集めた。
大広間にて文官、武官の家臣全員が集められた。
「殿。家臣全員集まりました」
劉巴が上座に座る曹昂に告げると、鷹揚に頷いた。
「皆。良く集まってくれた。今日呼び出したのは他でもない、劉表と孫権が同盟を結んだという事は、もう耳に入っているだろう?」
その問いかけに、集まった者達は当然とばかりに頷いた。
「この劉孫同盟・・・いや、孫劉同盟か?」
同盟名を言っていて、どっちが合っているのだろう?と考える曹昂。
「劉備を仲介させて結んだという事だから、劉孫同盟が正しいのでは?」
「いや、孫権が同盟を結ぶ事を承諾したという事だから、孫劉同盟が正しいと思うが」
家臣達もどっちが合っているのか分からないのか話していた。
少し話しあったが、途中からどうでもいいと思ったのか、皆が同盟で良いと言うのでそう決まった。
「うむ。それで劉表と孫権は同盟を結んだ。この同盟により、父上は南征する事も難しくなった」
曹昂の言葉に同意する様に司馬懿と法正も続いた。
「確かに。荊州を攻めれば、孫権が北上。揚州を攻めれば、劉表が北上して攻め込んで来るでしょうな」
「かと言って戦力を分散して攻めるのは愚策です。指揮が取れなくなりますから」
二人の言葉を聞いて曹昂は頷いた。
「その通りだ。だからと言って戦力を集中して、荊州か揚州のどちらかを攻めるのは下策だ。だから、此処は同盟を破綻させる事にしよう」
「どの様な手段を使ってですか?」
趙儼が訊ねて来たが、曹昂は答えないで虞翻を見た。
「虞翻。孫権には弟が何人かいたな?」
虞翻にそう問いかける理由は、孫策が曹昂に仕えていた頃、孫権にはあったのだが、その弟妹達には会った事が無かったので確認の為に訊ねたのだ。
「庶子を含めますと、三人おりましたが。孫匡はもう亡くなっております」
「そうか。揚州にいる間者からの報告で、最近丹陽郡太守の呉景が亡くなり、孫権の弟が後任として選ばれたそうだ」
「太守ですか。それであれば孫朗は有り得ませんな。あの者は迂闊な所がありますので、太守の任を選ばれる事はありません。ですので、孫翊が選ばれたのでしょう」
虞翻は話していて、有り得るなと思い頷いていた。
「孫翊はどの様な者か知っているか?」
「粗暴でせっかちな性格で、感情を抑える事が出来ない者と聞いております。目付役として家臣となった孫堅の代から仕えている古参家臣の一人の朱治から何度も教え諭しているそうです」
「ほぅ、それでよく太守が務まるな?」
「武勇に秀でていたそうです。今は亡き孫策と性格が似ていた為、一部の家臣の中では孫翊を孫策亡き後、後目を継がせようとした動きがあったくらいですから。まぁ、年齢から言って孫権が適任という事で、孫権が選ばれましたが」
虞翻の話を聞いて、曹昂はこれは使えると思った。
「成程。孫翊の家臣で誰か知っている者は居るか?」
「・・・・・・一人おります」
天井を見上げながら記憶を探る虞翻。少しすると、指を一本立てた。
「どの様な名だ?」
「辺洪と申すのですが、わたしが孫権に仕えていた頃、報告する事があり登城していた時、廊下で知人と話している所を見かけました」
「どんな話をしていた?」
「孫翊に対する不満を零していました。酒を飲んで酔えば、無理矢理酒を勧めてくる。飲めないと言うと暴力を振るうので、手が付けられないと申しておりました」
張飛にも負けないアルコールハラスメントだなと、聞いていて思う曹昂。
「そうか。話してくれて礼を言う」
「はぁ? 別に大した事は申しておりませんが」
礼を述べられて虞翻は首を傾げていた。
「呉郡太守で盛憲という者を知っているか?」
「・・・確か、今は病で官を辞していると聞いております」
「良し。趙儼。直ぐに揚州の間者に盛憲が騎都尉として許昌に召し抱えられるという噂を流せという文を送れ」
「はっ」
「後は事の成り行きを任せるとしよう」
曹昂はそう述べた後、家臣達の報告を聞いていた。




