何故に?
鄴から呂曠と呂翔率いる五千の軍勢が荊州に進軍しているという情報は直ぐに曹昂の下に齎された。
「此処までは策通りにいっている様だな。これからどうなると思う?」
届けられた文を読みつつ側にいる司馬懿と法正達に訊ねる曹昂。
「此処からは流石に分かりませんな」
「我らの策により劉備と劉表の仲はギクシャクしていると聞いております。劉備は独自に行動するか、それとも、敵が攻め込んで来た事で劉表と協力して迎撃するかもしれませんな」
司馬懿と法正とはいえ、流石に劉備と劉表がどう動くまでは予想する事が出来なかった。
「まぁ、敵対してくれるだけで十分だがな。よくぞ協力して、見事な策を考えてくれたな」
読み終えた文を丸めた後、曹昂は司馬懿達を称えた。
「有り難きお言葉にございます」
称賛された司馬懿は頭を下げた。法正は称賛された事が嬉しいのか、顔を綻ばせていた。
「しかし、今回の件で話し合って思ったのですが。司馬懿殿と此処まで馬が合うとは思いもいませんでしたよ」
「ははは、それはわたしもですよ。法正殿」
法正の言葉に司馬懿は笑いながら同意した。
「貴殿の考え一つとっても、わたしとは違う。むしろ、それで良い刺激になり今回の様な策が出来たのでしょうな」
「司馬懿殿にそう言われますと、背中がむずがゆくなりますな。ははは」
法正も司馬懿の言葉に同意うる様に笑った。
「「はははははは」」
そして、二人は声を揃えて笑いだした。
笑う二人を見て、曹昂は何となくだがこう思っていた。
(もしかして、わたしは会わせてはいけない二人を会わせてしまったのかもしれない)
権謀術数に優れる二人。
この二人が手を組めば、諸葛亮だろうと曹操だろうと勝てるのではと思っていた。
(よく部下に出来たなと喜ぶべきなのか、会わせても良かったのかなと思うべきなのだろうか?)
自分の成果なのは確かだなと思いつつ曹昂は話を続けた。
「さて、二人の見立てで良い。呂曠達と劉備。どちらが勝つと思う?」
曹昂の問いかけに、二人は暫し考えた。
「そうですな。劉備軍は二千。呂曠と呂翔率いる軍は五千。数の多さで言えば勝つのは無理ですな」
「まして、劉備の配下で名のある者と言えば張飛のみ。張飛の武勇は優れていると聞いておりますが、所詮は匹夫の勇」
「呂曠と呂翔の二人は性根こそ浅ましいですが、武勇だけは優れていると聞いております。兵数も多いですから、今の劉備陣営で戦えば間違いなく敗れるでしょうな」
法正は強く述べた。
曹昂も司馬懿もその言葉に同意していた。
(現状を考えればそうなるだろうな。でも、劉備だからな。何か起こしそうなんだよな)
悪運が強いので何かしそうだと思う曹昂。
そうなった場合も考えておいた方がいいかと思っていた所に。兵がやってきた。
「申し上げます。殿にお会いしたい者が参りました」
「わたしに? 名は名乗ったか?」
「はっ、水鏡と名乗っておりました」
「「「・・・・・・はっ?」」」
兵の口から出た名前を聞いて、曹昂達は目が点になっていた。




