これを機に
数日すると、宋忠が陳留に辿り着いた。
先触れをだしていた為、すんなりと曹操と謁見する事が出来た。
城内の一室で椅子に座る曹操に跪く宋忠。
「宋忠。字を仲子と申します。丞相にお会いする事が出来まして、誠に嬉しく思います」
「そうか。遠路はるばる良く来たな」
曹操からしたら、何しに来たのだろうと思っていたが、宋忠からしたら命じられた事とはいえ、此処まで苦労するとは思っていなかった。
その為、曹操に謁見する事が出来たので、ようやく果たせると息を漏らしていた。
「して、使者殿。何用で此処に参ったのだ? 伝えるべき事があるのであれば、許昌に居る荀彧に伝えれば良いだけでは無かったのか?」
「はっ。丞相の下に参りましたのは、ある方より文を届ける様に頼まれたのです」
そう言って懐に手を入れて封に入った文を取り出して、両手で持ち曹操に渡した。
「これを届けに、この地まで来たのか?」
「はい」
「ご苦労な事よ。返事は書いた方が良いのか?」
「いえ、返事は求められておりませんでしたので」
「そうか。下がって良いぞ」
宋忠は一礼しその場を離れいくのを見送ると、曹操は封を破き中に入っている文を広げた。
一読すると、少し考えた後、曹昂を呼んだ。
暫くすると、曹操が居る部屋に曹昂が来た。
「お呼びとの事で」
「ああ、これを読め」
「拝見します」
曹操の手に持っている文を貰い広げた。
書かれている内容に目を通していく。
「・・・・・・蔡瑁が父上に協力を求めておりますな」
「うむ。その見返りに自分の地位の安泰と甥の劉琮を荊州州牧か刺史に就けて欲しいか。まぁ、妥当だな」
「ですね。それで、父上はどうされるおつもりで?」
曹昂は文を畳み曹操に訊ねた。
曹操は直ぐに答えず顎を撫でた。
「・・・・・・そうだな。上手くすれば、劉表陣営を乱してくれるだろうな」
「それも良いですが。これを機に劉備と劉表の仲を引き裂くのはどうでしょうか」
「引き裂くだと? どうやってだ? 劉表は劉備を体の良い番犬に使っているぞ。劉備も思う所があるだろうが、劉表に恩義があるから逆らう事はせんぞ」
「蔡瑁を使って仲違いさせるのです。父上も少しだけ力を貸してください」
「わたしが? 何をすればいいんだ」
「父上の得意分野ですよ」
そう言って曹昂は考えている策を述べた。
策を聞き終えた曹操は唸っていた。
「悪い手ではないな。それも良いかも知れんが」
曹操はギロリと曹昂を睨んだ。
「お前がそういうのが得意であれば、わたしが手伝う事は無かったであろうに」
「申し訳ありません」
「全く、わたしの息子なのにお前と彰だけはどうして詩を書くのが下手なのだ? 沖は幼いが詩を書けるのだぞ」
「そうなんですか。学問好きで聡明と聞いておりますよ」
加えて心優しい為、家臣から多くの信望を集めていると聞いている曹昂。
何度も会った事があり、会うたびに「あにうえ」と笑顔で寄って来る。
頭を撫でると、目を細めて嬉しそうな顔をしていた。
その姿を見ていると、人懐っこい犬みたいだなと思っていた。
「全くだ。お前にも彰にもわたしがみっちりと教えたというのに、全く出来ないのだからな。わたしからしたら、何故出来ないのかが分からん」
曹操は何故出来ないのか分からないという顔をしていた。
曹昂からしたら、出来ないものは出来ないのですよとしか思えなかった。




