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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第二十一章

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単純だが効果は抜群

 張遼が陣営に攻撃を仕掛けた頃。

 敵襲を知らせる鉦の音を聞いて、孫権は寝台から身体を起こした。

 鎧を纏おうかと思ったのだが、その前に魯粛が天幕に入ってきた。

「殿っ。敵襲です!」

「分かっておる。数は?」

「分かりませんっ。ともかく、此処は一度本陣を離れましょうっ」

「何を言うかっ‼」

 孫権は怒鳴り声をあげた後、立てかけている戟を手に取った。

「総大将であるわたしが本陣から離れれば、兵の士気が下がって戦にならなくなるであろうっ」

 孫権は近くにいる者に声を掛けようとしたが、魯粛が孫権の寝間着の裾を掴んだ。

「総大将が死ぬような事になれば、戦どころか我々は野に屍を晒す事になりますっ‼」

 魯粛の諫言を聞いて、孫権は言葉を詰まらせた。

「・・・・・・わたしに生き恥を晒せというのか?」

「例え、恥を晴らそうと生き残らねばなりません。それが総大将の役目です」

「くっ、・・・・・・分かった」

 孫権は歯ぎしりした後、取るものを取らずに天幕をでて魯粛が用意した馬に跨り、魯粛と僅かな護衛の兵と共に本陣をあとにした。


 孫権が本陣を後にしたすぐに、宋謙を退けた張遼が馬の腹を蹴って本陣へと駆け出していた。

 その背後では、八百の決死隊が土煙を上げながら続く。

「孫権の本陣は目前だ! 突き破れええっ!」

「「「おおおおおっ!」」」

 張遼の咆哮に応じ、兵たちはさらに速度を上げた。

 本陣が見え始めると、流石に兵達が待ち構えていた。

 と言っても、殆どの兵達は得物を持っているが、鎧など纏っていなかった。

 まだ寝ている所に、敵襲の報を聞いて慌てて準備したようであった。

「邪魔だっ」

 碌な武装をしていない兵達に得物を振るい薙ぎ払う張遼。

 後続の兵達も孫権軍の兵達に喊声をあげて襲い掛かっていった。

「出てこい。孫権っ。この張文遠と尋常に勝負せよ!」

 張遼がどれだけ叫んでも、孫権が姿を見せる事は無かった。

 それを見て、孫権はいないのだと察する張遼は事前に李典に言われていた策を実行する事にした。

「誰か、牙旗(大将旗のこと)を奪ってこいっ」

 張遼が命じると、兵達が牙旗が立てかけられている所に走った。

 牙旗は大将がいる所を示す旗であった。

 それが奪われるという事は、大将が討たれたという事に等しかった。

 ちなみに、大将旗を牙旗というのは旗ざおの先に象牙で飾られている事から、そう名付けられた。

 少しすると、決死隊の兵達が牙旗を奪ってきた。

「張将軍。牙旗を奪ってきました」

「良しっ。後退するぞっ」

 張遼はそう言って、決死隊の中にいる騎兵の一人に牙旗を渡した。

「駆けている間、この旗を掲げよ。そしてけして奪われるでないぞっ」

「はっ」

 騎兵にそう命じた後、張遼は駆け出して行った。

 張遼の命に従い、騎兵は孫権の牙旗を掲げて、その後に付いていった。


 張遼が来た道を引き返していくのを、孫権軍の兵達は見ていた。

「ち、張遼が引き返していく?」

「それに、あの旗は・・・・・・あれはっ⁉」

 張遼達が引き返していくのを見て、兵達は直ぐに孫権の牙旗を見つけた。

 兵達が驚く中、宋謙と凌統が牙旗を見るなり激怒した。

「おのれっ、我らを侮辱するか⁉」

「者ども、何としても殿の牙旗を奪い返すのだ!」

 宋謙と凌統が声を荒げながら、周りにいる兵達に命じた。

 二人の命に応じて、兵達も声をあげて張遼達の後を追い駆けた。

「このまま、殿の牙旗を奪われたままとなれば、恥辱の限りぞ。絶対に奪い返せ!」

 呂蒙も兵を率いて、張遼達の後を追い駆けた。

 総大将である孫権が張遼の攻撃から逃れる為、陣営から離れた為、全軍に指揮する者がいなかった。

 その為、呂蒙達のように牙旗を奪い返そうと将達が続くのだった。

「牙旗が奪われたという事は、大将が討たれたって事じゃあねえのか?」

「も、もう駄目だ!」

 中には牙旗を奪われたという事は、総大将である孫権が討たれたのだと分かった兵達は悲鳴をあげた。

 このまま、この場に居れば死ぬと思ったのか、逃げようとする者が出てきた。

 その者達の前に一人の男が出た。

 年齢は三十代ぐらいであった。

 切れそうなほどに鋭く引き締まった顔をしており、濃い口髭と短く整えた顎鬚を生やしていた。

「敵を前にして逃げるとは、臆病者めっ」

 男はそう言って逃亡しようとした兵達を切り捨てた。

 兵達が倒れるのを見た男は、血で濡れた剣を掲げた。

「逃げる者は誰であろうと斬る! 持ち場に戻り、将の命に従え!」

 男が大声で命じると、逃げようとした兵達は慌てて持ち場に戻って行った。

 男も自分の持ち場に戻ろうとしたが、其処に魯粛が走ってくるのを見て、足を止めた。

「魯粛殿。ご無事で」

「おお、潘将軍。丁度良いところに」

 魯粛は自分に声を掛ける男を見て、安堵の表情を浮かべた。

 男は潘璋。字を文珪と言い、孫権が十五歳であった時に出会い仕えている信頼が厚い武将であった。

「今すぐ、張遼を追撃している者達を止めてくだされ。でなければ、大変な事になる」

「魯粛殿。どういう事か詳しく教えてほしいが、その前に殿はご無事で?」

「大丈夫だ。本陣から離れて、安全な所におる。わたしは本陣がどうなっているのか確認する為に戻ってきたが、その時に本陣にある牙旗が奪われているのを見て、慌ててこちらに来たのだ」

「成程。殿は無事でしたか」

 潘璋は孫権が無事と聞いて安堵の息をこぼした。

 すぐに顔を引き締めた。

「それで、大変な事とは?」

「張遼が殿の牙旗を奪って後退しているのは、我らを誘引する為だ」

「なんと、では張遼の行動は罠だと?」

「そうだ。陣営を出れば、曹操軍が待ち構えているであろう。陣形など全く整っていない我が軍と万全な状態の曹操軍が戦えば、どうなるか自明であろうっ」

 魯粛がそう言うのを聞いて、潘璋はすぐに呂蒙達を制止させねばと思ったが。時は遅かった。

 陣営の外から、悲鳴と怒号が聞こえてきたからだ。

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― 新着の感想 ―
何が困るって、張遼が大体史実なことですね…
奇襲とは言え瞬時に孫権(総大将)の陣営まで突破されているの脆過ぎでは?苦笑
遼来来にひきよせられて武断派、地元豪族の力削られる→孫権の地盤固まる・・・悪くないところもありそう(黒
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