賢弟とはこういう子を言うのだろうな
孫権が送って来た使者は先触れで、曹操に貢物を持ってきた事を伝えた。
珍しい物を用意した事を述べていた。
曹操は表向き楽しそうに笑っていたが、内心では何を探りに来たのか気になっていた。
その為か、曹操は髭を撫でながら使者に訊ねた。
「二喬を許昌に送るという話はどうなっているのだ?」
「あ、それは・・・・・・ただいま大喬様を送る準備をしております」
使者の返事を聞いて、曹操は送るのを遅れた事の詫びを兼ねて貢物を送ってきたのかもしれないなと思っていた。
(まぁ、そう断定するのは早いかも知れんな)
ご機嫌取りに貢物を送って来ただけかもしれないと思った曹操は使者にどんな貢物を持ってきたのか尋ねた。
使者の話を聞いた曹操は家臣達を連れて、貢物がある所へ向かった。
家臣達の他に、息子の曹昂、曹丕、曹彰、曹植、曹彪、曹沖を連れて来た。
そして、貢物が置かれている所に着くと、様々な者が置かれていた。
金銀財宝や揚州の特産品などが置かれていたが、一番目立ったのは檻の中に居た。
厚くてしわが多い皮膚に杉の様に太く蹄を持った四肢に、団扇の様に大きな耳を持っていた。
長い鼻を持ち、口から白い牙を二本ほど生やしていた。
「・・・・・・ほぅ、これが象か」
檻の中にいる動物を見た曹操は興味深そうに呟いた。
共に付いてきた者達も関心な声をあげていた。
「大きいな」
「でけえ・・・・・・」
「これが象ですか・・・」
曹丕、曹彰、曹植は初めて象を見て目を丸くしていた。
曹彪と曹沖の二人は目を輝かせながら、象を見ていた。
(う~ん。孫権は何のつもりで、象を送って来たのだろうか?)
曹昂は象を見つつ、何の目的で送って来たのか気になっていた。
そんな思いが顔に出ていたのか、曹昂が話しかけられた。
「どうした? 象を見ながらそんな物憂げな顔をして」
そう声を掛けて来たのは、夏侯惇であった。
「・・・・・・いえ、孫権が我が国では珍しい動物を送るのは、何の意図があるのか気になりまして」
「貢物は貢物であろう。あまり、深く考えても仕方がないと思うがな」
「・・・そうかもしれませんね」
夏侯惇の言葉を聞いて、曹昂も考え過ぎかと思い気にしない事にした。
「しかし、象など初めて見るが。これはかなり大きいな。どのくらいの重さなのであろうな」
曹操がそう呟くと、頷きだした。
「良し。誰でも良い。この象の重さが分かる者はおるか?」
曹操にそう聞かれても、家臣達は答える事が出来なかった。
彼らも象などそういう動物がいるという事は知っていても、どんな動物なのか知らなかった。
だから、どれだけ重いのか全く分からなかった。
家臣達が頭を悩ませている中、曹沖が口を開いた。
「父上。僕なら重さを調べる事が出来ます」
「ほぅ、沖よ。それはどんな方法だ?」
曹操は曹沖に近づいて、どんな事をするのか尋ねた。
「まず、池に船を浮かべるのです。その船に象を乗せます。象が船に乗れば、その重みで船は沈みます。その水位に印をつけて、象を下ろして重しを乗せて、印がある所まで沈めればどれだけ重いか分かります」
「おお、それならばどれだけ重いか分かるな。流石だ」
話を聞き終えた曹操は曹沖を褒めて、その頭を撫でた。
「流石は我が息子だ。聡明で嬉しいぞ。これは我が子達の中で一番頭が良いかもしれんな」
曹操が大げさに褒めるを、家臣達も声をあげて感心していた。
「ええ、その通りです。わたしもこのような聡明な弟を持って嬉しく思います」
曹操の言葉に続く様に、曹昂もそう述べて曹沖の頭を撫でた。
二人に撫でられて嬉しいのか、曹沖は顔を綻ばせていた。




