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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第二十一章

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どうするべきか

 郭嘉は荀彧の説得とは別に、董昭達には曹操が九錫を授かる様に動く様に伝えた。

 伝えられた董昭達は密かに動き出していった。

 暫くすると、朝廷内に噂が流れだした。

 曰く、天下は最早定まったも同然。

 曰く、だが、今の天子では泰平の世を創る事が出来るのか不安。

 曰く、此処は徳がある人物に天下を預けるべきではないか。

 という、今の天子である献帝に対して無礼な噂が流れていた。

 その噂を聞いた荀彧は直ぐに、誰がこのような策動を行ったか分かった。

 同時に、自分の主である曹操が何を考えているのかも。

(丞相は九錫を授かり、そのまま禅譲を迫るのだろうな)

 でなければ、この時にそんな噂が流れる訳が無かったからだ。

 それが分かっている荀彧だが、今はまだ噂が流れているだけで、曹操が九錫を授かる動きは無かった。

 これで、動きがあるのであれば反対を表明するつもりであった。

(だが、そうなれば丞相との仲は最悪になるであろうな)

 荀彧はそれでも良いと思っていた。

 儒学者として有名な荀子の子孫である自分が漢王朝の正統性を重んじなければ、誰が重んじると言えたからだ。

 そうと決めたると、自分に親しい者達で曹操の九錫を授かるのを反対する様に動く様にする事にした。


 数日後。


 荀彧は郭嘉を自分の屋敷に呼び出した。

「郭嘉殿。率直に聞きたい事がある」

「何でしょうか。文若殿」

 荀彧の問いに郭嘉は笑顔で答えた。

「丞相は国公になりたいのか?」

「その通りです」

 荀彧の問いに、郭嘉ははっきりと答えた。

 その答えを聞いた瞬間、荀彧は顔を顰めてしまった。

「・・・・・・私は漢王朝の再興の為に丞相に力をお貸しした。丞相を逆賊にする為ではないぞ」

「お気持ちは分かります。まぁ、話を聞いて下され」

 荀彧は激昂していたが、郭嘉は平静であった。

 そんな郭嘉を見て、荀彧も少しずつだが気持ちを静めて行った。

「・・・・・・話と言うが。私は漢王朝を守る立場を変えるつもりはないぞ」

「文若殿がそう思うのも無理ないでしょう。であれば、丞相に今まで与えられた恩義を忘れた訳ではないでしょう?」

 郭嘉にそう言われ、荀彧は言葉を詰まらせた。

 曹操の為に多くの有能な人物を推薦したが、その分厚遇を受けていた。

 今の地位に居るのも、己の才もあるが曹操の引き立てもあったからだ。

「確かにそうだ。だが、丞相に国公にさせるなど、到底容認できん」

「ですが、丞相の立場もお考え下さい」

「丞相の立場?」

 言葉の意味が分からないのか、荀彧は怪訝な顔をしていた。

「既に丞相は天下の九割を手にしております。残りの一割もいずれ手に入るでしょう。そうなれば、残るは国を建てるだけにございます」

「そうなるであろうな」

 郭嘉の予想を聞いて、荀彧のそうなるだろうなと直ぐに分かった。

「其処までして、国を建てねばどうなると思います?」

「ふむ。・・・・・・・忠臣と言われるのではないか?」

 荀彧はそう述べると、郭嘉は首を横に振った。

「いえ、いずれ逆臣として三族処刑になるでしょう」

「なに⁉」

 郭嘉がそう言うのを聞いた荀彧は何故そうなるのか分からないという顔をしていた。

 そんな荀彧に分かる様に、郭嘉が語りだした。

「天子と同等の力を持った権臣が何時までもそのままではいられません。梁冀(りょうき)などが良い例でしょう」

梁冀(りょうき)か。確かにあの者も九錫の一部を恩典として授けられた。だが、あの者は桓帝と単超ら宦官によって討たれたであろう」

「丞相も同じ様にならないといえますか?」

 郭嘉の言葉に、荀彧は何も言えなかった。

「もし、そうなれば丞相の一族だけではなく、今朝廷に仕えている大臣や高官達は数百人は処刑又は追放されるでしょう。そうなれば、朝廷は政務を行えなくなります。そうなりますと、また戦乱の時代に逆戻りになるかもしれません」

「ぬう・・・・・」

 郭嘉の例を聞いて、荀彧もあり得ないと言い切れず何も言い返せなかった。

「それどころか、文若殿の家族又は一族も連座して処刑されるかもしれませんぞ」

「・・・・・・確かにそうだな」

 荀彧の長男は曹操の娘である曹安が嫁いでいた。

 もし、曹操の一族が処刑されるのであれば連座で、処刑される可能性もあった。

「荀子の子孫として、漢王朝に忠義を持つお気持ちは分かります。ですが、それは一族を犠牲にしてまで尽くす事ですか?」

「・・・・・・」

 郭嘉の指摘に、荀彧は唸るだけで何も言えなかった。

「よくお考えを。漢王朝の為に一族を犠牲にするか否かを」

 郭嘉は其処まで言うと、一礼し部屋を後にした。

 荀彧は見送りもせず、考えに耽るのであった。

(逆臣。三族皆殺し。戦乱の再来か。確かに、そうなってもおかしくないか)

 漢王朝の再興を考えていたが、そういう事も起こりえる事を頭から抜け落ちている事に気付いた荀彧。

「だが、このまま漢王朝の命脈は尽きるの見捨てる事など・・・・・・」

 しかし、それで自分の一族も犠牲になるかもと思うと、荀彧はどうするべきか考えさせられた。

 どうするべきか、考えを巡らせていると。

「ニャア」

 何処からか、猫の鳴き声が聞こえた。

 声がした方に顔を向けると、愛猫の雪炭が居た。

「どうした? 腹でも減ったか?」

 荀彧の問いに、雪炭は答えずその膝に乗った。

「ふふ、お前は自由だな。何も背負わずに生きていけて……」

 荀彧は雪炭の背を撫でながら呟いた。

「・・・・・・なぁ、雪炭よ。私はどうすれば良いと思う?」

 荀彧は自分で考えても答えが出ないからか、丁度傍にいる雪炭に相談してみる事にした。

 如何に可愛がっていたとしても、猫なので大した答えは期待していなかった。

 荀彧としても単に話しを聞いて貰いたいだけで訊ねただけであった。

 だが、雪炭は立ち上がり、飛び上がると荀彧の口に前足を押し付けた。

 まるで、黙っていろと言わんばかりに。

「・・・・・・そうか。成程な」

 雪炭の行動を見て、荀彧は笑みを零した。

 その後、目を瞑り膝の上で丸くなっている雪炭の背を撫で続けるのであった。 

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― 新着の感想 ―
皇帝殺しの梁冀を例えに出して、荀彧が怒らないのが不思議
曹昂が献帝と身内でもあるし、突然の病死(棒)事故(棒)という事もほぼないやろな。そういう暗部の仕事も曹昂やしw 説得役に郭嘉が生存というところでだいぶ運命変わったか?荀彧先生早期退職で猫愛でる生活に?…
荀彧は禅譲後の献帝の身の安全を保障することが(漢王朝の忠臣としての)最後の奉公になるんじゃないかな。 個人と一族を天秤にかければ、これが最も現実的ではないかと。
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