とうとう知られる
曹昂達が陳留へ向かっている頃。
夏侯淵が一足先に曹操に報告に来ていた。
「そうか。宋建は討たれたか」
「はい。丞相が道案内として貸して頂いた馬岱は見事な働きをいたしました」
「ほぅ、それはどんな活躍だ?」
「驚いたことに、あの馬超を退けたそうです」
「ほほう、あやつは其処まで出来るとは思わなかったぞ」
丞相府にある一室で曹操が報告を聞いていた。
共に報告を聞いているの荀攸も満足そうに頷いていた。
「宋建の一族郎党は全て処刑。丞相以下の官吏らもまた同じように処刑いたしました。既に許昌には、戦利品を携えた一団と文を持たせて向っております」
「よくやった。これで涼州方面も静かになるであろうな」
曹操は憂いが晴れたという顔をしていると、夏侯淵が難しい顔をしていた。
「丞相。もう一つ報告する事ができました」
「報告だと? 他に何かあるのか?」
首を傾げる曹操に、夏侯淵は懐から一枚の文を取り出した。
その文を近くにいる荀攸に渡すと、荀攸は直ぐに曹操に渡した。
「・・・・・・これはっ、韓遂が宋建に当てた文ではないかっ!」
渡された文を一読して、何が書かれているか分かった曹操は目を剥いていた。
「はい。どうやら、宋建と韓遂は繋がっていたようです。調べた所、頻繁に文のやり取りをしていたようです」
「あやつ、まさか宋建と繋がっていたとな」
曹操は驚いているが、荀攸は特に驚いた様子を見せなかった。
「丞相。これで宋建が送られてくる朝廷からの討伐軍を撃退できた理由が分かりましたな」
「どういう事だ?」
「その文のやり取りから、恐らく韓遂が宋建に討伐軍の情報を流していたのでしょう。だから、宋建は今まで討伐軍を撃退で来たのです」
「成程な。丁度いいな。この件を使い、韓遂を処罰しよう」
曹操は悪い笑みを浮かべるのを見て荀攸が尋ねて来た。
「それが宜しいかと思います。韓遂は涼州内で強い影響力を持っています。此処で韓遂が宋建と繋がっていたという証拠で処罰すれば、涼州で我らに逆らう者は居なくなるでしょう」
荀攸が賛同してくれたので、曹操は直ぐに韓遂に対して処罰を与える様に朝廷に文を送る事にした。
曹操はその後も荀攸と話しているのを見た夏侯淵は報告すべきことは終えたので、一礼し部屋を後にした。
部屋を後にすると、待っていたのか曹洪が居た。
「夏侯将軍。宋建討伐、お見事でございましたな」
「うむ。まぁ、馬超が討つ事が出来なかったのは残念だがな」
夏侯淵が残念そうに述べると、曹洪がニヤニヤしながら近づいてきた。
「まぁ、思う所はあるだろうが。今日はお主の為に面白い宴を催したぞ」
「ほぅ、それはどんなのだ?」
夏侯淵の問いに、曹洪は笑みを浮かべるだけで何も言わなかった。
三日後。
夏侯淵は長安に帰還する前に、丁薔の元に訪れていた。
妻の姉という事で、義理の姉なので、挨拶にいかないと後で何を言われるか分からないからだ。
「義姉上。お変わりない様子で、妻も安心しております」
「貴方も元気そうね」
「はい。身体が資本の役職に就いておりますので」
その後、二人は世間話に興じていた。
すると、夏侯淵が思い出したかのように話し出した。
「そう言えば、二日ほど前に子廉がとんでもない宴を開きましてね」
「とんでもない宴?」
丁薔も初耳なのか、目をぱちくりさせていた。
「はい。自分の所にいる妓女の服を脱がせて踊らせるという、前代未聞の舞楽を行っておりました」
「何ですって⁉」
そのような事をしていると知り、丁薔は眉間に皺を寄せているが、夏侯淵は気にせず話し出した。
「皆、珍しく楽しんでおりましたが、連れて来た配下の者の一人がその踊りを見て『大勢の者が居る席上で女性の肉体を剥き出しにした踊りするのは不道徳だ』と叫んで、部屋を出て行ってしまいましてな。子廉も流石に不味いと思ったのか、踊りを止めさせて、その者を呼び戻させて宴を始めました。お陰で厳粛な雰囲気となりましたな」
「全く、子廉殿も女色を好み過ぎます。そろそろ落ち着いても良いでしょうに。・・・むっ?」
丁薔が呆れていると、何か思い出したような顔をした。
「どうかしましたか?」
「・・・・・・・その妓女が服を脱ぐ踊りは旦那様は見た事があるのでしょうか?」
「さ、さぁ、わたしには分かりません」
丁薔の呟きに、夏侯淵は分からないので、そう答えるしかなかった。
「これは、一つ調べる必要があるわね。妙才殿。少々手伝いをして下さい」
「わ、わたしも? しかし、わたしは長安に帰還しなければなりませんので」
夏侯淵は巻き込まれたくないので逃げようとしたが、丁薔は笑みを浮かべた。
「お願いできますか?」
「で、ですが」
「貴方と妹の仲を取り持ったのは、誰だったかしら?」
「・・・・・・」
「妹に贈り物をしたいけど、何を送るか分からないと言うので相談に乗ったのは、何処の誰だったかしら?」
「・・・・・・」
丁薔の言葉に夏侯淵は黙る事しか出来なかった。
「長安に帰る前まででいいので、少々手伝ってくれますね?」
「・・・・・・はい。義姉上に従います」
丁薔の圧に負けた夏侯淵は頷いた。
心の中で、曹操と曹洪に謝っていた。




