天下が定まって来たからか
諸葛亮達と合流出来た曹昂は陳留への帰還の準備をしていると、曹純達も報告を終えたので鄴に帰還すると言うので、陳留まで行動を共にする事にした。
準備に数日かかったが、曹昂達は許昌を後にした。
同じ頃。
冀州魏郡鄴。
城内にある丞相府にある一室。
室内には曹操の元にある人物が訪れていた。
「丞相。お願いがあり参りました」
曹操にそう述べるのは、司馬徽であった。
「これは水鏡先生。今日はどうされた?」
曹操は人物鑑定家として名を博した眼力を大いに用いて、重用していた。
司馬徽もその重用に応えるように、才ある人物を見つけては登用させていった。
「本日は少々行きたい所ができまして、鄴から離れる事を伝えに参りました」
司馬徽が鄴から離れる用事が出来たと伝えると、曹操は顎を撫でた。
「先生。何処かに行きたいと言うのであれば、儂は何も言いません。ただ、何処に行くかだけは教えて頂きたい」
何処かに行ったと分かれば、人を遣わせる事も出来るので、曹操が尋ねると司馬徽はすんなり答えた。
「陳留へ。そろそろ、弟子の顔を見に行こうと思いまして」
「そうか。そう言えば、子脩に仕えている龐統と諸葛亮は先生の弟子であったな。よろしい、行かれるがよい」
「好好」
司馬徽が口癖を述べたが、曹操は気にする事無く話を続けた。
「一人で行かせるのは、少々心配だ。誰か護衛を着けるとしよう。許緒か典韋のどちらかと後は儂の親衛隊を五百騎ほどつけるとしよう」
曹操がそう述べるのを聞いて司馬徽は手を振った。
「丞相の御厚情には感謝いたします。ですが、弟子に会うだけですので、丞相の親衛隊と隊長のどちらかを連れて行くのは大げさすぎます」
「そうか? しかし、先生にはそれだけ助けられているのだがな。まぁ、先生がそう言うのであれば、誰か適当な者と兵を数十人ほどつけるとしようか」
「丞相の温情に感謝を」
司馬徽は深く頭を下げた後、部屋を後にした。
数刻後。
政務を一区切りした曹操は休憩を取っていると、程昱と郭嘉の二人が訪ねてきた。
「お休みの所、失礼いたします」
「構わぬ。二人がわざわざ訪ねて来たのだ、それだけ重要な事なのだろう。何用か?」
頭を下げる程昱達に曹操は尋ねた。
二人は互いの目を見て頷いた後、程昱が口を開いた。
「本日、わたしと郭祭酒は、天下の事について話したい事があり参りました」
程昱が真面目な顔で告げるのを聞いて、曹操は目を細くした。
「天下についてとな。既に儂は天下の八割を治めている。残っている者達もその内、降伏するであろう。しない者は討伐すれば天下は儂の手に収まるだけであろう」
「その通りです。つまり、天下はほぼ殿の物になったも同然です。そして、その後の事も重要です」
郭嘉が此処からが大事だと言うと、程昱も頷いた。
「そうです。堯が舜に禅譲し、舜が禹に禅譲した様に、そろそろ天子に禅譲を迫るのも良いかと思います」
郭嘉が禅譲を勧めるのを聞いて、程昱も同意と頷いていた。
曹操は直ぐに答えず、髭を撫でていた。
何処か満更ではないと顔をしていた。
「荀彧殿は許昌に居るので、どう思っているのか分かりませんが、荀攸、田豊、沮授の三人はそれとなく話した所、反対もしませんでした。ですので、問題はないと思います」
「賈詡殿は何も言いませんでしたが、反応は悪くなさそうでした」
賈詡はどう思っているのか分からなかったが、荀攸達は反対もしていないと聞いて曹操の野心が疼き始めた。
「・・・・・・他の文官達はどう思っている?」
「全員とは言いませんが、何人か話した所、文句どころか賛成しておりました」
「そうか。だが、何事も段階を置くべきであろうな」
「と言いますと?」
程昱が訊ねると、曹操はニヤリと笑った。
「いきなり禅譲と言っても、国中の者達が反対するであろう。まずは公となり、その後王になり、そして禅譲を求めるべきであろう」
曹操がそう言うのを聞いた程昱達は直ぐに言葉の意味を察した。
「では、文官達に爵制が改革する様に上奏に伝えてまいります」
郭嘉が頭を下げると、曹操は満足そうに頷いた。
漢の時代には二十等爵制が敷かれており、「公」の爵位は存在しなかった。
なので、公の爵位に着く為には、法を改める必要があったので、其処は文官達に爵制が改革する様に上奏させるのであった。
これは早速、他の者達に伝えねばならないと思い、程昱達は部屋を後にしようとしたが、曹操が呼び止めた。
「公の爵位を着くという事は、封国を与えられるな。儂は冀州州牧で、今いる鄴は魏郡にあるから、魏公と名乗るのだろうな」
「そうなりますな」
「魏公になるという事は後を継ぐ公子も必要だな。誰が良いと思う?」
曹操がそう問うのを聞いて、程昱達は顔を見合わせた。
「この場合ですと、長子が公子になるのが道理です。ですので、此処は曹陳留侯が公子になるでしょうな」
「だろうな」
郭嘉がそう言うのを聞いて、曹操は笑みを浮かべるのであった。
程昱達は何で分かり切っている事を聞いたのか分からず、内心首を傾げていた。




