此処からは
この話で、今年の投稿は終わりとします。
皆さま、良いお年を。
夷陵県に辿り着いた劉備達は集まると話し合っていた。
「今後の事を考えると、陸路で行きますと曹操軍に追い付かれると考えられます」
馬順が話し合いが始まるなり、意見を述べた。
それを聞いて、劉備達も反対する事は無かった。
「では、船で進むという事になるな」
「そうなりますと、今の我らでは用意するのは無理があります」
馬順の話を聞いた孫乾が困った顔をしながら述べた。
「曹操軍の追撃により、兵も民も減ったとは言え千人以上はおります。それだけの人数を乗る船を用意するとなると、金が掛かります。今の我らにはありません」
孫乾がそう言うと、劉備達は駄目かと悔しがっていたが、其処に馬順が胸を叩いた。
「其処はご安心を。わたしは家は襄陽にあります。襄陽は曹操の支配下に入ったとはいえ、船代の請求をしても問題はないでしょう」
「おおっ」
「そうか。お主の家は襄陽の名家であったな」
「はい。ですので、金の方は問題ないかと。問題は船を何時まで用意できるかです」
「そうだな。かなりの人数だからな。それなりの数が必要だな」
馬順がそう言うのを聞いて、張飛も唸っていた。
「兎も角、馬順。直ぐに声を掛けてくれ」
「お任せを。この地に居る知人に声を掛けてみます」
馬順はそう言いその場を離れて行った。
劉備は曹操軍が来る前に船が用意できる様に祈っていた。
劉備が祈っている頃。
曹仁は兵の報告を聞いていた。
だが、どれも良い報告では無かった。
「劉備は未だに見つからんか・・・」
どの兵も劉備を見つける事が出来なかったと報告するだけであった。
これでは夜を徹して探した意味が無いと思っていると、司馬懿がやって来た。
「将軍。未だに劉備を見つける事が出来ないと聞きました」
「ああ、そうだ。何処に行ったのか全く分からん」
曹仁はお手上げとばかりに肩を竦めるのであった。
「兵は今日まで寝る間も惜しんで探しておりますので、そろそろ疲れてくる頃です。一部を残して、他の兵は休ませるべきだと思います」
「ぬぅ、そうだな。肝心の劉備を見つけても兵が疲れて戦う事が出来ぬという事になれば、笑い物にしかならんな」
曹仁は司馬懿の献言を聞いて、その通りだと思い一部の兵以外は休むように命じる事にした。
其処に兵が参り、曹純が来た事を報告した。
曹仁は兵に曹純を連れて来るように命じ、司馬懿には下がる様に命じた。
司馬懿も現状では劉備を見つけねば、何の献策も出ないので話す事は無いと思い一礼しその場を後にした。
少しすると、兵が曹純を連れて来た。
「将軍。参りました」
「ああ、ご苦労。下がれ」
「はっ」
曹純と挨拶を交わした曹仁は兵に下がる様に命じた。
兵は一礼し離れて行った。
「将軍。それで、状況は」
曹純が尋ねると、曹仁は手を振った。
「子和。此処ではわたしとお前しかいない。そんな堅苦しい話をするな」
「はぁ、そう言われましても、此処は戦場ですし、位も将軍の方が高いのですから」
「真面目な奴だな。この場には俺とお前しかいないのだから、もっと楽に話せよ」
「・・・・・・兄上。これで良いですか?」
曹仁がもっと楽に話せと言うので、曹純は何時ものように話す事にした。
「ああ、聞いているかも知れんが。劉備をまた取り逃がしたぞ」
「聞いております。流石は劉備という所ですね。丞相が一目置くだけはありますね」
「俺からすれば忌々しいがな。これで取り逃がしたら、孟徳の兄者に何と言われるか分からんっ」
曹純が称賛を聞いて、曹仁は舌打ちをしていた。
「ははは、では捜索にわたしの部隊も加わりますね。これで捜索の範囲が広がるでしょう」
「頼む。それと」
曹仁は手招きした。
曹純は誰にも聞かれたくない話をするのかと思い近づいたが、曹仁はもつと近づけとばかりに手招きした。
これは、余程聞かれたくない話なのだなと思いながら近づいた。
そうして、曹仁から三歩ぐらいの距離にまで来ると、曹仁が口をにんまりとしだした。
「お前、劉備の娘達を捕虜にしたそうだな」
「ええ、そうですが」
「そうか。お前も色を覚える様になったか」
曹仁がニヤニヤしながら述べた。
それを聞いて曹純は最初何を言っているのか分からなかったが、少しして言葉の意味が分かった。
「い、いえ、違います。わたしは劉備の娘だから捕虜にしただけで、けして自分の物にするつもりではっ」
「隠すな隠すな。ははは、未だに嫁を迎えないお前の事を孟徳の兄者も夏侯惇も心配していたからな。これでちゃんと報告出来るな」
曹純は顔を赤くしながら否定するが、曹仁は照れ隠しととり笑っていた。
「いえ、わたしは別にそんなつもりは」
「照れる事はないだろう。孟徳の兄者なんか、未亡人とか人妻を娶るという事はしているのだぞ。息子の曹昂なんて、董卓の孫娘を気に入って略奪して妻に迎えたし、今は亡き袁煕の妻を奪って妻にしたのだから、お前も劉備の娘を捕まえて妻にしても、誰も非難せんぞ」
「いや、あの、わたしはそんな事は考えておりませんっ」
「はははははは」
「兄上っ⁉」
その後、曹純がどれだけ言っても曹仁は笑うだけであった。




