第十五話『End of the line』1
「大丈夫なの? 稗田さん……」
力尽きたライルの遺体には目もくれず、救援にやって来た黒江の下に駆け付ける羽佐奈と八千羽。アメジストの宝石は輝きを失い、無残に砕け散っていた。
「問題ないわ……これで厄災の時に助けてくれた借りは返せたかしらね」
「今更そんな事、気にしなくていいでしょうに」
苦笑いを浮かべながら、安堵する黒江に羽佐奈は寄り添い、無事を喜んだ。
「今のは半分冗談、二人を迎えに来たのよ。もうこのドームは限界だわ。現場を放棄して脱出を最優先にして行動しましょう」
「もちろん、私達もそのつもり。一緒に行きましょう」
生死を賭けたライルとの一戦を制した後、羽佐奈に支えられ、再び立ち上がる黒江。
それぞれが満身創痍となるほどの激戦が繰り広げられたこの戦い。
そこから思い出されるのはやはり、同レベルで何度も死地を潜り抜けることになった舞原市での厄災に他ならなかった。
お守りとして預かった宝石の力によって本来、起きるはずだった悲惨な結末は回避された。その代わり、宝石は身代わりとなって砕け散ってしまったのだった。
娘の凛音が宝石に込めて無事に帰って来て欲しいという切なる願い。
凛音の願い通り、奇跡は起きた。
しかし、黒江は身体の内側から微かな異変を感じていた。
それが、ライルの放った魔女殺しの銃弾の影響であることに気付き、我が身が蝕まれていくのを感じながら、黒江はこの場では隠し通すことに決めた。
燃え広がる火災によって、業炎に包まれていく劇場から脱出するため、友梨と合流を果たし、脱出を急ぐ黒江達。
激戦を繰り広げた魔法使い達は死力を尽くしながらも無事に立ち上がり、エントランスホールまでやって来た。
地上の出入り口はどこも屍人対策で封鎖されている影響のため、後は地下駐車場まで中ホールから近い階段を下り、迎えに来ているマイクロバスに乗り込むのみだった。
赤津羽佐奈、赤津八千羽、三浦友梨、稗田黒江らが集まり共に無事であることに安堵しながら、生き残ったスタッフを連れて階段まで誘導をしていく。
黒江は地下駐車場で待つプリミエールへの連絡を終えて、後は危険な劇場から引き上げるのみの状況だった。
魔女狩り達の姿もない。
安全を確認した黒江は自分もエントランスホールを後にして、一緒に階段を降りようと背を向けようとした、そんな時だった。
長い黒髪を下ろした、血塗れになった大人の女性を必死の形相で引きずって運ぶ少年の姿が目の前に現れたのは。




