↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
split tears~西暦2055年香港劇場火災事故の真相~  作者: shiori@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/62

第十四話『魂の咆哮』2

「あああぁぁ!! 先生、もうやっちまってもいいよな!!

 相手は本気みたいだからさぁ!!」


 初めて相対する魔女の姿を目の前にしたポルフは目を見開き、恐怖心を紛らわすように感情を爆発させた。


「あたいに任せな! 三人で寄ってたかってやれば、魔女が相手だって仕留めて見せるぜ!」


 先程、樋坂真守のトドメを刺したばかりのレディアンは高揚したまま鋭い視線を羽佐奈に向けた。

 

「強敵が相手です! 油断せず、コンビネーションを崩さず行きましょう!」


 これ以上、先生であるライルに負担は掛けられないと覚悟を声にするリファ。自分達だけで討伐対象である魔女、赤津羽佐奈を相手する。考えただけでも身震いするほどだった。


 魔女狩りを目的に行動している以上、想定はしていても、目の前に対峙すれば襲い来る緊迫感はあまりに違い過ぎる。

 それでも、先生の前で力を尽くそうと三人は意志を一つにして飛び立った。


(さて……どれだけ三人の攻撃が魔女に通用するか……。

 奴の疲労次第だが、上手くやってくれよ、我が子らよ)


 孤児院を経営して我が子のように成長を見届けて来た三人が魔女に対抗しようと向かっていく。

 それぞれが孤児であり悲しみを背負った者同士。自分を受け入れるだけでも簡単ではなかった。

 だが、ライルやレイラは一人一人と真摯に向き合い続け、築き上げてきた絆を大きな力に変えて来た。

 

 今では超能力を開花させ、戦士となって反アリス派の組織で魔女狩りの任務に参加している。

 成長を遂げた少女達の雄姿を後方から見守るライル。

 

 命を懸けた、まさに魂と魂の意地のぶつかり合い。

 壊れゆく劇場の中で、ポルフが先陣を切って二丁拳銃のトリガーを引き、銃弾を浴びせた。


「食らえっ!!」


 グリーントルマリンの宝石の効力で緑色の光彩を放つ羽佐奈はこれまでとは比べ物にならない異次元の速度で銃弾を躱し、間髪入れず片桐茜の聖剣、ファイアブランドを発現させてポルフに迫った。


「遅いっ!!」

「そう簡単にやらせはしねぇよ!!」


 一気に間合いに斬り込んで行く羽佐奈。二丁拳銃を構えたままのポルフの前に立ち、ギリギリのタイミングで庇いに入るレディアン。冷酷な瞳のまま、青白い炎を宿した両手剣で羽佐奈のファイアブランドにぶつかっていった。


「想像以上に速い……でも三人ならっ!!」


 一瞬でも目を逸らせば命はない。羽佐奈の初動からそんな危機感を覚えたリファは照準を定め、ぶつかり合い静止する羽佐奈に向けて星弓(せいきゅう)を放った。


 放物線を描き、間を割って入って来る光の矢。

 リファの放った光の矢を察知した羽佐奈は瞬時に力を込めて斬り払い、さらに上昇して光の矢を避ける。

 三対一の戦闘でも後れを取ることのない羽佐奈の瞬発力。

 見事に三人の連携を躱しながら、火の粉を上げるファイアブランドで押し迫っていく。


「はぁ?! 見た目以上に化け物じゃねぇか!!」


 これまで相手にしてきた敵とは違うことを感じ取り声を上げるレディアン。

 リファとポルフの遠距離からの援護射撃を受け、さらに力を込めて向かっていく。だが、想像以上の速さで縦横無尽に動き回る羽佐奈との力量の差を思い知らされた。


「勢いはあっていいけど、子どもだからって、容赦はしないからね!!」


 羽佐奈はさらに身体から放出する魔力を高め、同時に使い魔を召喚した。

 聖母を守護するように周囲を舞うガラス細工のような鳥達。

 一つ一つが生き物のように飛翔し、獲物を狙って突進する。


 素早く羽ばたいていく使い魔達は簡単に捉えることは出来ない。

 周囲を舞う使い魔に肉薄され動きを封じられるレディアン。

 

 それを見たポルフはさらに銃撃の速度を速め、一気に撃ち放った。


「子ども扱いすんじゃねぇ!! いい加減、その身体ごと燃え尽きちまえよっ!!」


 暴走するように鳴り止まない銃声。何人もの魔法使いやゴーストを貫いてきた銃弾が空を切っていく。自分の想像を超えた相手を前にしたポルフは手を抜かず、必死に狙いを定め、手元にある銃弾を撃ち放つ他なかった。


 だが、それを完全に見切った羽佐奈はポルフに急接近した。


「ダメェェェェェ!!」


 仲間に迫る魔女の姿を見て目の前がスローモーションに感じて見えたリファは甲高い大きな悲鳴を上げた。

 自分達では躱すことの出来ない速度の攻撃。毎日のように一緒に訓練してきたリファには分かった。それがポルフには躱すことの出来ない恐ろしい剣技であることを。


 灼熱の炎を纏ったファイアブランドがポルフの肉体を捕捉し、勢いよく振り抜かれる。

 両手に拳銃を持っている以上、レディアンのように刀で防ぐ手は取れない。

 反射的に回避運動を取ったポルフだが、疾風の如き速さで迫る凶器はそう簡単に見切ることは出来ない。

 

 左目が急速に熱くなり、庇った左手に激痛が走った。


「ああぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁ!!」


 左半身を中心に襲う猛烈な熱さと左手が引き千切られるような痛みに絶叫を上げるポルフ。

 目を伏せたくなるほどに心を痛めるリファ。

 レディアンは信じられない光景を前に声も出ず身体が固まった。


「お(・)願(・)い(・)っ(・)!(・)!(・) ポ(・)ル(・)フ(・)を(・)殺(・)さ(・)な(・)い(・)で(・)っ(・)!(・)!(・)」


 リファは反射的に敵に対して泣き叫んでいた。

 

 大切な仲間だから、無意識に出た言葉だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。