↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
split tears~西暦2055年香港劇場火災事故の真相~  作者: shiori@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/63

第十三話『神速乱舞』3

「そうですか……出し惜しみは出来ない様子ですね。

 仕方ないわね。こ(・)の(・)化(・)け(・)物(・)を(・)確(・)実(・)に(・)こ(・)こ(・)で(・)仕(・)留(・)め(・)る(・)た(・)め(・)に(・)マ(・)ギ(・)カ(・)ド(・)ラ(・)イ(・)ブ(・)を(・)開(・)放(・)し(・)ま(・)す(・)。

 ママ、後をよろしくお願いね!」


 後方で屍人達と戦う羽佐奈に向けて呼びかける八千羽。

 

 豊胸な胸元に手を当て、ネックレスの先にある宝石をギュッと強く握る。

 祈りを力に変えて、宝石に込められた魔力を解放すると、眩いばかりの虹色の輝きが溢れ始めた。


「そう……使う覚悟を決めてくれたの……。

 美しいわね……本当に全てを忘れさせてくれるくらい……」


 久々に目にする八千羽の持つホワイトオパールの宝石から放出される神々しい輝きを目にした羽佐奈は感嘆の想いで言葉を零した。


 石の中に一雫(ひとしずく)の水が溜まっているかのような美しさから、「クリスタルオパール」という別名がつけられているホワイトオパール。

 

 「女性の幸せ」を象徴する石とされているこの宝石には恋愛運や仕事運、金運に纏わるものまで全体的な運気を上げてくれるため「女性の守護石」とも呼ばれている。

 

「さぁ……覚悟してよね!! ここまであたしを本気にさせたんだから!!」


 巻き起こる風圧によって揺れるクレージュカラーのカーディガン。

 女性らしさを引き立たせるカジュアルな格好に身を包んだ八千羽の長い赤茶色の髪も激しく揺れ、これ以上ない本気を見せた。


「ハハハハハハッ!! 何と神々しいまでの輝き!!

 よりこの手で壊したくなったぞ!! 両手剣使いの魔法使いっ!!」


 互いに一歩も譲らず、持ちうる最大限の能力を発揮した両者。

 吸血鬼は今にも獲物に喰らいつくように鋭い牙を見せ、威嚇する。

 八千羽は両手剣を構え睨み付け、マギカドライブによる膨大な魔力を両手剣に集中させ七色に輝かせた。



「ははははあぁぁぁ!! 全力解放っ!! 神速乱舞(しんそくらんぶ)っ!!」



 全身全霊を込めて、魔力を解放した八千羽は空気を切り裂くようにその場から姿を消し、次の瞬間には七色に輝く刃で歪に誇大化した巨体を引き裂いていた。


 引き裂かれた腹部から血飛沫が迸る。

 咆哮を上げ、ブラッドソードを振り回す吸血鬼。

 八千羽は一度でも掠ればただでは済まない状況の中、攻撃の手を緩めることなく舞い踊り、吸血鬼の身体に傷をつけていく。

 

 完全に攻撃を見切りながら繰り出される連続攻撃。

 全身に力を込めて、まるで分身しているかのように四方八方から襲い掛かる剣技に吸血鬼の動体視力は付いていけず、圧倒していった。


「どこからそんな力が湧き出るというのだ!! 人類の分際でぇ!!」


 目に留まらぬ速さで繰り出していく剣技によって吸血鬼の身体を次々に容赦なく引き裂き、ついに八千羽は膝を付かせた。


「最後の一撃をっっ!! 人殺しじゃない!! 大切な日常を取り戻すための戦いなら、あたしは遠慮なく全力を尽くせます!!」


 攻撃の手が止まり、怯んだ吸血鬼に対して、千載一遇のチャンスを逃すまいと死角に入る八千羽。

 

 そして、一秒でも早く戦いを終わらせるため、この機を逃すまいと上空から頸動脈を狙って一閃を繰り出した。


 確実に仕留めたという感触と共に地上に降り立つ八千羽。

 見る者を魅了し、呼吸さえも忘れる華麗な剣術。

 これまでの人生で最も理想的な動きで強敵を圧倒することが出来たという実感が八千羽にはあった。


「まだ……生きているの……」羽佐奈が舞台上を凝視したまま呟く。


 信じられないことに、無数の傷を負い、そこら中から血を流し、惨たらしい姿に成り果てた吸血鬼は瘴気に包まれ、立ち尽くしたまま静止していた。


「アリスの眷属とは……なんとここまで出来ようとは、感激です。


 この身は吸血鬼である以上、簡単には死ねない身体。


 また、別の機会にお会いしましょう。


 この劇場から抜け出し、あなた方が生き残ることが出来ればですが……」


 不吉な言葉を残して、次の瞬間、爆発していく屍人達。

 爆風が大ホールを包み、地面が激しく揺れる。

 壁にも穴が開き、屍人がいた周囲の座席は吹き飛び瓦礫と成り果てていく。

 四散していく肉片を避け、それぞれの無事を助け合っている間に、吸血鬼はその場から姿を消していた。


 惜しくもトドメを刺すことが出来ず、取り逃がしてしまった結果だが、今の二人にとっては強敵との戦いが終結した安堵感の方が大きかった。

 

「一度、急所を刺したくらいでは死なないみたいね、ママ。

 でも、マギカドライブを使わずにはいられない状況だった」


「八千羽がいてくれて長期戦にならずに済んで助かったわ。

 私達は早くここから抜け出さないといけないんだから」


 大ホールが崩落するまでには至っていないが、出入口扉までの足場が不安定になるほどに劇場へのダメージが進んでいる。


 ここに長居できる状況ではない。

 後はここから脱出するだけだと考え、二人は次の行動に移ろうとしていた。

 だが、現実は残酷で、そう簡単に二人を日本に帰してくれそうもなかった。


「残念だったな、お前達をここから出すわけにはいかない」


 大ホールの扉を開き、先程聞いたばかりの男の声が耳に届いた。


「こ(・)こ(・)に(・)来(・)て(・)、懲(・)り(・)も(・)せ(・)ず(・)連(・)戦(・)っ(・)て(・)わ(・)け(・)……」


 しつこいとばかりに不機嫌さを露わにする羽佐奈。

 

 上位種のゴーストが逃げ去ったタイミングを見計らって、今度こそはと三人を引き連れてやって来たライル。


 再び相まみえることになった両者。

 ライルはここで羽佐奈と八千羽の息の根を奪おうと取り囲み退路を断った。

 対する八千羽はマギカドライブで魔力を大幅に消費した後で誤魔化しようのない疲労感が身体を襲っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。