↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
split tears~西暦2055年香港劇場火災事故の真相~  作者: shiori@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/62

第十三話『神速乱舞』2

(……一晩にして島の住民を根絶やしにした吸血鬼。そう簡単に倒せる相手じゃないか)


 互いの剣技を披露しながら気付いていく、申し分ない情報通りの相手の実力。

 八千羽はこれまで培ってきた能力を駆使して、一切手を抜いていなかったが、あらゆる剣技を防いでくる相手から隙を見出すことは容易ではなかった。


 屍人によって荒らされ、劇場火災が広がる中、立ち塞がる吸血鬼。

 その恐ろしさは一つの逸話からも認識できる。

 

 ある自然豊かな島、そこでは人々が自然と共に共生し平和な日常を送っていた。

 しかし、激しい雷雨が降り続く不安定な天候のある日、おぞましい惨劇は引き起こされた。

 

 一体いつから島の中に潜んでいたのか、吸血鬼は突然姿を現し、人を襲い屍人化させた。屍人となった人間は仲間の人間を襲い、動物も見境なく襲った。

 地獄の連鎖は一度始まってしまえば、際限なく続けられる。

 激しい雷雨で海は荒れ、人々は逃げ場のない島の中で次々と死んでいった。

 絶え間なく響き渡る断末魔、泣き叫び助けを乞うても喰い来られるだけの食材へと変わった人間達。

 吸血鬼にまともに立ち向かえる勇気ある者は島にはおらず、ただ蹂躙され続けるだけの残酷な時間が長く続いた。

 

 そして、たった一晩の内に島の住民は全滅し、徘徊する自我を持たない変わり果てた屍人達だけが残り、吸血鬼の姿はいなくなった。

 島を訪れていた一部の旅人だけが悪天の中、必死に船を漕ぎ、島を抜け出して生き残り、島であった惨劇を言葉にして遺した。

 

 後に訪れた人は平和なはずの島の変わり果てた姿に衝撃を受けた。

 見かけた動物の全ての血がいずれも例外なく抜き取られ死に絶え、住民達の争った後が無残に残され、至る所に死体の山が出来上がっていた。

 

 謎の吸血鬼による恐ろしい悲劇。 

 八千羽は過去のゴーストデータベースからこの惨劇を知っていた。

 だからこそ、信じたくはなかった。

 これほどに恐ろしい化け物がこの世界のどこに未だ潜んでいることを。


 決定打を与えられないまま、時間と体力が失われていく。

 額から伝っていく汗。手汗を掻きながら、懸命に剣を振るう八千羽だが吸血鬼の動きはまるで鈍る様子がなかった。


「その粘り強さに免じて、本気を出すとしましょうか」


 余裕に満ちた嘲笑を浮かべ、跳ね飛ばされて距離を作られた八千羽。

 魔力を駆使しても超えられない、力の差。

 単純な力のぶつかり合いでは体格差もあり競り勝つことは出来ない。

 次第に焦りが募っていく。


 一体、何をしようというのか、恐れを抱いた八千羽に対して、吸血鬼は紫色の謎のカプセル薬品を口に含んだ。

 

 次の瞬間、吸血鬼の全身を包むように異様などす黒い瘴気が巻き起こる。

 それが服用した薬品による効果だと察した八千羽はさらに警戒心を強めた。


「グッォォォォォォォッォォ!!」


 黒(・)い(・)羽(・)根(・)を(・)生(・)や(・)し(・)、さ(・)ら(・)に(・)禍(・)々(・)し(・)い(・)オ(・)ー(・)ラ(・)を(・)纏(・)い(・)姿(・)を(・)現(・)す(・)吸(・)血(・)鬼(・)。

 悪しき進化を遂げたゴーストは劇場に響き渡るほどの大きな咆哮を上げた。


「さぁ! その身体を差し出し、断末魔を聞かせてもらおうか!」


 唸り声を上げるように、鈍く低い声で言い放つ変わり果てた姿をした吸血鬼。

 筋肉質に誇大化した肉体のせいでさらに吸血鬼を見上げる姿勢になった八千羽はこれまでの戦い方を続けても勝機がないことを察した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。