第十話『鮮血に染まる光の渦は』2
魔女狩りと魔女との聖戦が開戦したその後ろで、周りのスタッフが巻き込まれないためにファイアウォールを展開する友梨。
そして、八千羽にはライルの右腕として行動を共にするアリシアが対峙していた。露出の少ない男性的な服装に身に纏った褐色肌のアリシア。
八千羽は飄々として思考が読めないアリシアの力量が見えて来ず、警戒心を強めた。
「どうしてこう、神を信仰する人は皆揃って頭が固いのかしら。
あたしは貴方と戦いたくない。でも、自由になれない貴方にはそれは選択できないのでしょうね」
「我は自分の意志でここにいます。ファザーとシスターの理想は我の理想でもある。敵の言い分など、我の耳には届かぬ」
「それが頭が固いって言うのよ。人間の持つ理想なんてそう大差はないのに。世の中が変わっていく事を受け入れられなければ争いは何時まで経ってもなくならないのよ」
「小手先の論理で惑わそうとしても無駄です。こちらに分かり合う気はありません。我らが神が道標となって我を導いてくれますから」
「あらそう……なら、子どもとはいえ、分からず屋は遠慮なく切り刻んであげますね」
「我は子どもではない。世界をあるべき形に戻すために戦う戦士だ」
「その物言いが強情な分からず屋だって言ってるのよっ!」
両手に握った剣の片方をアリシアに向け、鋭い瞳を輝かせる八千羽。
子どもを産み育てていると身としてアリシアのような若い女性を手にかけるのは心が痛むが、逆らえる状況ではなかった。
容易に首を刈り取れる鋭い刃を持った大鎌を手にしたアリシアは真っ赤な瞳で八千羽を捉え、襲い掛かった。
真っすぐ力の入った迷いない一閃を両手をクロスさせて防ぎ、軽く弾いて今度は反撃をお見舞いした。
八千羽の長年鍛えられた剣技を防ぎ、簡単には捉えられないと察すると、さらに勢いを増して力を込めた。
激しく近距離で繰り広げられる剣戟。
互いに譲ることのない一騎打ちは休む間もなく続いていく。
「流石、自分達から牙を剥いて来るだけはあるわね。
本当に、私じゃなくて美留来が来るのが適任だったのに」
経験の差で確実にアリシア斬撃を防ぐつつも決め手を欠き、短期決戦に持ち込めない八千羽は愚痴を吐いた。
赤津探偵事務所の能力者の中では八千羽は普段からゴースト討伐を行うような役回りではない。長女であるため、若い頃から覚醒を果たしていたが、結婚して子どもを産み、ごく一般的な幸せを望んで一度はゴースト絡みとの関わりを断った過去がある。
そのため、十分な能力は備わっていても、次女の美留来よりは実力が劣っていることは事実で、本人も自覚していることだった。
(無駄のない動き……まだ余裕があるのか、表情に余裕が見える。
闇雲に余計な魔力を使わず、加減して向かって来る辺り、やはり優秀な能力者か。簡単に倒せる相手ではない。しかし、我も負けるわけにはいかない)
大鎌を何度振り抜いても防がれてしまう現実に焦りを覚えるアリシア。
単純な攻撃では通用しない。それが分かり、より強く向かっていかなければならないことを感じ始めた。




