第九話『魔女狩りと魔法使いの開戦』4
「何だ、劇団員ってことは本命じゃねぇのか。まぁいいさ、良い肩慣らしになりそうだな」
長い時間、ワゴン車の中に閉じ込められ、待ちくたびれたとばかりにポルフが呟く。無邪気さの中にある残酷さ、それが緊張しつつも歪んだ表情から滲み出ていた。
「そんな顔芸しながら言われたって、説得力ないわよ。
あたいが始末してあげるから、あんたは大人しくしてなさいよ」
赤いサングラスを持ち上げ、血走った真っ赤な瞳を露わにするレディアン。
まだポルフをおちょくる余裕があるほどには冷静に立ち振舞っている。
チェック柄の赤いスカートにプリントTシャツを着て、年相応なカジュアルで可憐な衣装を下に着ているアンバランスさ。
年齢は三人とも変わらないが、最も冷酷なイメージを感じる形相をした彼女は威圧するように、既に両手に刃物を手にして今にも襲い掛かりそうな格好をしている。
「連携を崩さないよう行きましょう。敵は実質二人、無茶な戦法を取ることもないはずです」
同年齢の二人を心配しながら、自分を落ち着かせるための言葉を吐き、修道服の上にお揃いの黒のジャケットを身に付けたリファ。
十四歳の少女ながら、腰まで伸びたゴールドヘアーは可憐さの象徴で、ふんわりとしたお淑やかなイメージそのままに異性を惹き付ける美しさを持っている。
精神的な弱さはあるものの、それは慎重な性格であるがゆえ。
普段は二人よりもしっかり者でシスターと一緒に小さな子ども達のお世話をしているお姉さん役をしている。
三人一組での連携を繰り返し訓練してきた聖少女のリファは落ち着いて戦えば負けるはずはないと刷り込まれていた。
四人の魔女狩りに遭遇し、退路を断たれた唯花達。
唯花は異質な雰囲気を纏った異国人を前に足がすくんで動けなくなった。
何とか唯花だけでも救い出そうと考えていた樋坂夫婦は相手の戦力を見極めようと努める。
だが、魔女狩りのターゲットにされている以上、この状況において戦闘を避けるすべはない。
真理も真守も友人の子どもである唯花を守るために、戦う覚悟を決めなければならなかった。
「怯えた子どもを相手にする必要ないわ。私が女の相手をするから、男の相手を三人でね。近距離で攻撃する際は気を付けて、相手の炎で焼かれないように」
怯えた様子の唯花には目線を送ることなく、標的となる魔法使いに対象を絞って指示を送るレイラ。
自らは同じ性別で同世代の真理と戦う決意を決めると、その場で杖を頭上に掲げファイアウォールを展開して、邪魔者が入らない戦場を作り出した。
「唯花ちゃんはそこから動かないで。こいつらは俺たちが何とかして見せる」
「ごめんなさいね……私達のせいで物騒な人たちに巻き込まれて。でも、安心して。私達の持つ超能力はこんなテロリスト達に負けたりはしないわ!」
唯花の方に振り向き、戦いに身を投じる覚悟を決め、声を掛ける真理と真守。
避けることの出来ない聖戦を前に、弱音は必要ない。
一歩、二歩、敵に向かって進んでいく二人を見開いた瞳で見つめる唯花。
あまりに現実感のない信じられない光景が目の前に広がっている。
身体の奥底に秘めた力が悲鳴を上げる。
健康な唯花の身体の中にある、魔力が僅かに反応を始め、真理と真守から発せられる魔力の強大さが感じられるようになり始めていた。




