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split tears~西暦2055年香港劇場火災事故の真相~  作者: shiori@


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第一話『不穏な依頼』3

「こんなことになったのも、それこそ、香港にアリスが配備された影響じゃないかしら?」


 質問するか迷いつつも、羽佐奈は責任を押し付ける意味でも言い放った。

 反アリス派が牙を剥くきっかけを作ったのはアリスの判断によるものかもしれない。

 その場合、この事件がいかなる結果になったとしても、プロジェクトメンバーは罪悪感を覚えることはないだろう。そんなことも羽佐奈は思った。


「それは我々の知るところではない、アリスの行動原理は我々でも予測困難なものだ。

 君たちはテロリスト集団による劇場爆破を阻止してくれればいい。

 そこに反アリス派が絡んでいるのであれば、君たちの能力が俄然必要不可欠になるだろう」


 アリスとは端的に言えば、大量の電力と水を必要とする量子人工知能によって運用されている。高速化された演算能力によって最適な解を導き出し、人類を誤った方向に向かわせないために、人類の代わりに意思決定をしているのだ。


「はぁ……劇場を爆破させてくるなんて……命懸けの任務は気が重いわね。

 メンバー構成はこちらで決めるわ、よろしいかしら?」


「依頼先から能力者以外の引率者は禁止とある。

 それさえ守ってもらえれば、自由にしてもかまわんよ」


「観光旅行じゃないから能力者以外はお断りってわけ? 勝手に公演チケットを渡しておいて、面倒な人たちね……」


 愚痴を溢し、羽佐奈は安住との通話を終えた。

 幾度となく経験してきた、重く圧し掛かって来る重責。

 最後は自分の意志で決めてしまった以上、危険な任務であることまで家族に報告をしなければならない。

 羽佐奈を筆頭に日本には荒事にも対応可能な超能力者は存在するが、超能力育成機関があるわけではない。

 そのため安住は未だ、羽佐奈を頼ってしまう現状から抜け出せずにいるのだ。

 

 自分と共に、香港まで連れて行くメンバーを頭の中で考え抜いた羽佐奈は静かに書斎を後にし、事務所へと向かった。

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