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第四十九話 束の間の休息

 三人は街に戻ってきた。

「エリシアちゃん、久しぶりだね」

「ノエルちゃん、珍しく出かけてたんだね」

 街でもある程度有名だった二人は、久しぶりに姿を見せたことで、あちこちから声を掛けられていた。

「ちょっと……遠くまで行ってたから……」

「……食材の……調達」

 二人は適当に誤魔化しながら街を歩く。

 その度に、ロックの頭部が入った袋を背中側へ回し、見えないようにしていた。

 ・・・

 ・・・

 ・・・

 そして、リベットの工房へと近付いていく。

 カン、カン……

 キィィィン……

 カチャ、カチャ……

 外まで響いてくる、いつもの音色。

「ここは変わらないね……」

 工房の入り口は大きなガラス張りになっており、中の様子がよく見えた。

 カランコロン――

「こんにちは」

「……ん」

「お〜い、ココ。直してくれ〜」

 三人は工房の中へ入っていく。

 すると、ココが先に運ばれていたロックのボディを修理しているところだった。

 ココは三人に気付くと、作業の手を止める。

「あぁ、待ってたよ〜」

 そう言って、ココは三人をある場所へ案内した。

「これを見て」

 ココが指差したのは、大きなクローゼットだった。

「なに?」

「……?」

 エリシアとノエルは、クローゼットを見ても何なのか分からない。

 しかし、一人だけ反応する者がいた。

「あっ! 俺のクローゼット……ほら、ここに“ゴッドマンシール”が貼ってある」

 ロックはよく分からないことを言い出す。

 これは、ロックが勇者として召喚された時、天界から運ばれてきたクローゼットだった。

「俺のイケメンシリーズ……無事だったか」

 ココがクローゼットを開ける。

 すると――

 そこには、同じ顔のボディがズラッと並んでいた。

「うわっ……」

「キモ……」

 エリシアとノエルは、しっかりとドン引きしていた。


「よし、今日はお前に決めた」

 ロックは、クローゼットの中の一体へ魂を移す。

 ファァァ……

 ロックの頭部から光が溢れ出し、一体のボディへと流れ込んでいった。

 その瞬間――

 頭部だけだったロックの顔は、クローゼットに並ぶボディたちと同じ、無表情なものへと変わる。

 ピクリ……

 クローゼットの中の一体の指が動いた。

 グーパー、グーパー……

 手を開閉しながら、少しずつ感覚を確かめるように身体を動かしていく。

 そして――

「よし、完全復活だ!」

 バーンッ!

 ミーナ特製コートを格好良く羽織り、ロックは決めポーズを取った。

「ノーカスタムのボディは脆いから、無理はしないでね」

 すぐさまココが注意する。

 ガチャ――

 部屋の扉が開いた。

「騒がしいと思ったら、来てたのか……」

 リベットが顔を出す。

 そして、クローゼットの中を見るなり、露骨に嫌そうな顔をした。

「こんな物をここに置くことにしやがって……セラって神も余計なことを……」

 このクローゼットは、セラによって運び込まれたものだった。

 ロックのボディに何かあれば、必ずここへ来ることになる。

「嫌なことを思い出す……目障りなボディだ」

 そう言い残し、リベットは工房の奥へと姿を消す。

「あいつ! 何しに来たんだよ!」

「ロックさん……ここ、リベットさんの工房なんだから……」

 エリシアは呆れながらロックを宥めた。

 その間にココは、ロックの頭部を持って作業場へ戻ろうとしていた。

「修理とカスタムはしておくけど、時間がかかるから、ん〜……三日後にまた来てくれないかな?」

 カスタムは五段階に分けられており、段階が上がるほど費用も時間も掛かる。

 ロックは既に一段階目のカスタムを終えていたため、次の二段階目は即日対応とはいかなかった。

「お代はもう受け取ってるから、取りに来るだけでいいよ〜」

 ココはそう言うと、作業場へ向かっていった。

 取り残された三人は、互いに顔を見合わせる。

「じゃあ、私たちもここで一時解散……かな? 教会に行きたいし」

「私も……店に行く」

「俺も一回、家の様子を見てくるか」

 それぞれ、自分の向かう場所へと歩き出していった。


 その頃――

 駐屯地に残ったセリーナとミーナは、それぞれの役割を果たしていた。

 セリーナは、“踊り子”として華麗な舞を披露している。

「おぉ~……」

「綺麗だ」

「ワァオ!」

 その舞は、兵士たちの士気を大きく高めていた。

 うぉぉぉぉーっ!!

 雄叫びのような歓声が、駐屯地中に響き渡る。

 その声を聞きながら、ミーナは天幕の中で黙々と作業を続けていた。

 “裁縫師”として、兵士たちの服に何かを縫い付けていく。

 それは、行軍中に倒した魔物の皮や採取した素材だった。

 特に多かったのは、“火炎トカゲの皮”。

 火炎トカゲの皮には火属性が宿っており、冷属性への耐性を高める効果がある。

 ただし、兵士全員分に使うとなると、一着に使える量はどうしても少なくなる。

 当然、その効果も薄まってしまう。

「…………」

 それでもミーナは、手を止めることなく裁縫を続けていた。

 セリーナの舞による士気向上。

 ミーナの装備強化。

 二人の後方支援は、戦争を大きく有利へと導いていくのだった。

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