表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
43/73

第四十三話 限界突破

 ロックの脳裏に、かつての会話が蘇る。

 ――回想。

(……魔王だとか言ってるけど、元は人間だろ? 気合が足りねーんだよ、ロインは……)

(ロインじゃねーよ。レインだって言ってるだろ! あの魔王、かなり強いぞ)

 レインと言い争っていた頃。

(ビビってんじゃねーよ)

(あのなぁ、異世界生活に慣れてくると、すげぇ強くなっていくのが実感してくる。少しは相手の強さも分かるようになってきたけど……あいつは次元が違う)

(俺から見れば、ゼロがイチになった程度だ……雑魚は雑魚だ)

 ロックは、埃でも払うように手を振って答えていた。

(神ならそうだろうけどな。あいつは……躊躇いがなさ過ぎる)

(魔王もお前も条件は同じだ! 気合が足りねーんだよ、やっぱりお前は)

(俺、この間召喚されてきたばかりだ! ベテラン魔王と対等じゃねーよ!)

(いいから行けって!)

 最後には、半ば無理やりレインを戦場へと送り出していた。

 ――そして現在。

 ザッ……ザッ……ザッ……

 マルコがロックを見下ろしていた。

「あばよ」

 振り上げられる拳。

 そして、そのまま叩き落とされる。

(コイツ……躊躇いがない!?)

 ドォーンッ!!

 パリッ……パリパリッ……

「ぐぉっ……」

「ハァハァ……“絶対凍結”」

 間一髪。

 ロックは魔法で氷壁を生成し、直撃を防いでいた。

(チッ……右腕、外れやがった……)

 防御のために無理やり出力を上げた結果、ボディが負荷に耐え切れなかったのだ。

(まだ……悟られる訳にはいかない……)

「てめぇ……ベイルと同じ魔獣使いか、ゴーレム使いとかじゃねーのかよ。魔法なんか使いやがって……」

 グッ――

 ドォーンッ!!

 バーンッ!!

 パラパラパラ……

 マルコの拳が、ロックの魔法――“絶対凍結”の壁を粉々に砕いた。

(嘘だろ……)

(割るにしても、こんなに早く……しかも粉々に……)

 ロックは、最後の頼みであるゴーレムへ視線を向ける。

 だがゴーレムは、吹き飛ばされたまま倒れ込み、魔力供給待ちの状態だった。

(アイツ、ほんっとうに使えねーなっ!)


 召喚者は、ロックを除けば全員が人間の魂だ。

 人間という生き物は、本来ブレーキをかけるように出来ている。

 法律を守らなければならない。

 人を傷つけてはいけない。

 そして、自分自身を守るため、無意識のうちに力加減をしている。

 心にも。

 身体にも。

 人は常にブレーキをかけながら生きている。

 しかし――

「お前は……イカれてるな……」

 ロックはマルコを睨みながら言った。

「まさか、“限界突破”してるとは……な」

 心と身体を守るため、人間が本能的に備えている無意識のブレーキ。

 そのタガが外れ、アクセルを踏み抜ける人間。

 その存在は異世界でも極めて稀であり、時には“真の勇者”あるいは“真の魔王”として伝説に語り継がれる。

 それこそが――“限界突破”した人間。

 マルコの攻撃は、自分自身すら破壊しかねない威力に達していた。

 本来なら、その肉体はとっくに壊れているはず。

 だがマルコは、スキルによる肉体強化でそれをねじ伏せ、平然と暴力を振るっている。

「限界……? 知らねーよ」

 マルコは、全身から立ち昇る闘志のようなものを拳へ集中させる。

(あれほどの威力でも耐えられる程の肉体強化……相当魔力を消費してるはずだ)

 ロックは、外れかけた右腕を押さえながら距離を取る。

 ジリッ……ジリッ……

(魔力は、そろそろ切れる……はずだ)

「逃げ切れると思ってんのか?」

 追い詰められながらも、ロックは密かに魔力を溜め続けていた。

「させるかよっ!!」

 ドガァッ!!

 マルコの蹴りが、ロックの右腕を吹き飛ばす。

「ぐわっ……!」

 カランッ……コロンッ……

 転がった腕は、倒れているゴーレムの傍まで飛んでいく。

 腕を失ったロックへ、マルコがゆっくりと迫っていた。


「おっと……強く蹴りすぎて、腕が千切れたか」

 蹴りの衝撃で、ロックの身体は大きく吹き飛ばされていた。

 ザッ……ザッ……ザッ……

 マルコがゆっくりと近づいてくる。

(直接触れて……今分かった……コイツ……)

 マルコが拳を握り締める。

 そこへ魔力が集中していく。

(オードンから魔力を貰ってやがる……!!)

(魔力切れは……ない!)

 ――天界。

 セラは対策を考えながら、向かいに座るオードンへ視線を向けた。

「オードンせんぱい……直接戦場に関わるなんて珍しいっすね……」

「アイツが戦場に居続けても目障りだからな」

 オードンは淡々と答える。

 その手は、下界のマルコへ向けられていた。

 魔力が天界から下界へと流れ込んでいく。

 マルコは、その力を受け取っていた。

「今回は準備不足だからな……」

「そっちの魔王……本当に人間っすか?」

 セラは下界のロックを拡大表示で見つめる。

 その視界には、ロックへ迫るマルコの姿も映っていた。

「アイツは魔王歴が長いからな……もうすっかり魔王の顔だ」

「元同僚の情けとかは……ないっすか?」

 セラはダメ元で尋ねる。

 しかし――

「ロックを叩き潰す……社長も了承済みだ」

 オードンがセラへ視線を向けた。

「……鬼っすね」

 セラはそう言いながらオードンを見る。

 だが、オードンの目は言葉とは裏腹に、どこか穏やかだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ