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第四十一話 戦場を駆ける

 森の中を探し回る三人。

 幸いにも、ゴーレム自体はすぐに見つかった。

 ・・・

「お前、何でまた丸まって止まってたんだよ!」

 パァァァ……

 ロックから魔力供給を受け、ゴーレムが再び起動する。

「主、命令ヲ」

「……うるせーよ」

 ロックは顔をしかめた。

 また適当に命令して、勝手にどこかへ行かれても困る。

 今度は慎重になっていた。

 ガサガサッ――

「あっ……ロ、ロック様」

 頭に葉っぱを付けたミーナが、茂みから戻ってくる。

「……こ、こっちはなかったです……」

 さらに――

 ガサガサッ。

 スタッ。

「……見つけたわよ」

 木の上から、セリーナが軽やかに飛び降りてきた。

「本当? やったぜ!」

「木の枝に引っかかってたわ……下を探してても見つからないわけよね」

 どうやら、飛ばされた腕は木の上に引っかかっていたらしい。

 上から探索していたセリーナによって、ようやく発見されたのだった。

「さ、流石です。セリーナさん」

「よし、行くぞ! ついて来い、ゴーレム」

「行動開始」

 ・・・

 ・・・

 ・・・

 ガチャガチャ……ガチャンッ。

 ブーン……

 接続された腕にも魔力が流れ込み、再び起動する。

「腕ガ接続サレマシタ」

「よしっ! やっと復活だな」

「……どうするの?」

 セリーナが、これからの行動を尋ねる。

 ロックはニヤリと笑った。

「決まってるよ。領土を奪っていく。まずは――」

 ロックは山の向こうを指差す。

 その先にあるのは、劣勢へと追い込まれている戦場。

「あの戦場に、ゴーレムを投入する!」


 ゴーレムの両肩に三人が乗り込み、その巨体が一気に山を越えていく。

 ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン――

 バキッ! バキッ! バキッ! バキッ!

 木々を薙ぎ倒しながら、ゴーレムは凄まじい速度で突き進んでいた。

「おぉぉぉ……速いじゃないかー!」

 ロックは興奮した声を上げる。

 常にゴーレムへ魔力供給を続けていた。

「……ポンコツじゃなかったわね」

 セリーナは肩の上に立ち、吹き抜ける風を全身で受けながら呟く。

「お、おお、落ちる〜っ!」

 一方のミーナは、肩に必死でしがみついていた。

 振り落とされないよう、涙目で耐えている。

 山を越え、戦場となっている平地へ出ても、ゴーレムは速度を落とさない。

 ・・・

 ・・・

 ・・・

 その頃――勇者軍は限界を迎えつつあった。

「背を向けたら、一気にやられるぞ!!」

「前を向け!!」

「魔法隊、撃てー!!」

 怒号が飛び交う。

 今の勇者軍には、周囲へ意識を向ける余裕などなかった。

 北の山から、巨大なゴーレムが迫っている事にも、まだ誰も気付いていない。

 ……

 一方、優勢に戦いを進める魔王軍。

 その指揮を執る魔王マルコは、不満そうに鼻を鳴らしていた。

(せっかく異世界に来て力を手に入れたんだ。もっと暴れさせろよ!)

 作戦通りとはいえ、あまりにも一方的だった。

 手応えのなさに、退屈しかけていたのである。

 ザッザッザッ――

 一人の魔族兵が、マルコの元へ駆け寄ってくる。

「マルコ様。北の山から、“何か”が向かってくるとの報告がありました」

「“何か”だと? それもベイルの魔獣か?」

「その様な連絡は受けておりません」

「……俺が確認する。ここはお前に任せる」

 マルコは眉をひそめながら、その“何か”を確認するため、隊列を離れて北へ向かった。


 ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン――

 ザッザッザッザッ――

 勇者軍北側に配置されていた騎士や兵士たちが、迫ってくる巨大な影に気付く。

「な、何だっ!?」

「くっ……また魔王軍の……」

「に、逃げろーっ!」

 混乱が広がる中、ゴーレムは勇者軍の手前で停止した。

 そして、その巨体をゆっくりと屈ませる。

 肩に乗っていたセリーナとミーナが飛び降りた。

「セリーナちゃんとミーナちゃんは後方支援をよろしく! 俺はゴーレムで魔王軍を蹴散らしてくるぜ!」

「分かったわ」

「き、気を付けて……」

 ロックはゴーレムへ命令を出し、そのまま魔王軍へ向かって駆け出していった。

 一方、残された二人は勇者軍へ向き直る。

「私たちは勇者です。遅くなりましたが参戦します」

「が、頑張ります……」

 二人の勇者の登場に、疲弊していた勇者軍の空気が一変した。

「苦しいと思うけど、もう少し踏ん張って!」

 セリーナは踊り子として華麗な舞を披露する。

 その動きに合わせるように、兵士たちの身体へ力が満ちていった。

「うおぉぉぉーっ!!」

 北側から上がった雄叫びは、やがて軍全体へと広がっていくのだった。


 ゴーレムに乗るロックは、そのまま一直線に魔王軍へ突っ込んでいった。

「ゴーレム! そのまま行けーっ!!」

「真ッ直グ、行ク」

 ガシャン、ガシャン――

 巨体を揺らしながら、ゴーレムが戦場を突き進む。

 ザッザッ――

「グオォォ……!」

「こ、このやろー!」

「止まれーっ!」

 足元には大型の魔族たちもいた。

 しかし、ゴーレムの巨体と比べれば、小さな障害にしか見えない。

 ドガッ!

 バキッ!

 迫る魔族たちを弾き飛ばしながら、ゴーレムは止まる事なく進み続ける。

「撃てーっ!」

 ボォォォォーッ!

 炎の魔法がゴーレムへ直撃した。

 だが――効かない。

 しかし、

「熱っ! このやろう……!」

 ロックにはしっかり熱が届いていた。

「ゴーレム! あっちの魔法隊を蹴散らせ!」

 ロックが後方を指差す。

 ゴーレムは即座に進路を変更し、魔王軍後衛の魔法隊へ向かって走り出した。

「ガァァ……」

「クソ……詠唱が間に合わない……!」

「に、逃げろーっ!」

 ドガッ……!

 ドガッ……!

 ドガッ……!

「ドワーッ!」

 ゴーレムは魔法隊を次々と吹き飛ばし、そのまま魔王軍後方へ到達する。

 その瞬間――

 勇者軍の士気が一気に高まった。

 前方からは勇者軍。

 後方にはゴーレム。

 魔王軍は、完全に挟撃される形となっていた。

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