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第四十話 木じゃなくても隠すなら森の中へ

 立場の違いに打ちのめされているロックを、セラはあっさり突き放した。

「じゃ、頑張るっす」

「あっ! ちょっと待て! 待ってって……」

 ジジジッ――

 プツンッ。

「あ……アイツ、切りやがったな……」

 ロックは拳を震わせる。

 セラとの通信を終えたロックは、これから起こり得る展開を想像していた。

(俺が金を持ってたら……)

「そこら辺に召喚獣を撒き散らして、速攻で領土を奪う……」

 いかにもロックらしい、金で解決しようとする発想だった。

(召喚者を殺しても……新しい召喚者が出るだけ。でも……)

「ベテランの召喚者を殺せば……新米になる……か。ベテランよりかはマシか」

 さらに思考は加速していく。

(いや……それよりも)

「自軍の召喚者を一旦殺して、超強い魂を召喚して、超強い役職を与える……もアリだな」

 発想がどんどんゲスになっていた。

「何物騒な事を言ってるのよ!」

「え? あぁ……」

 セリーナにツッコまれ、ロックは我に返る。

「さっき、セラが言っていたオードンって神は、アンタみたいなクズなの?」

「お、俺はクズじゃないぞ! 女性に優しい紳士だ」

 何故か背筋を伸ばすロック。

「でも……魔王側の神が本気になるってことでしょ? アンタ、何とか出来るの?」

「そこは……セラの役割だ……」

「アンタが原因でしょ? ……ったく」

 セリーナは呆れたように肩をすくめる。

 だが、すぐに表情を引き締めた。

 空を見る。

 まるで天界を睨みつけるように。


「ロ、ロック様。こちらは、どうしますか?」

 ミーナが指差した先を見る。

 そこには、腕を失い、魔力切れで動かなくなったゴーレムが立っていた。

「コイツ……飛ばした腕を戻す機能ないのかよ! しかも、どんだけ燃費が悪いんだよ!」

 コンコンッ。

 ブー……

「やっぱ、安物のゴーレムはダメだな……」

「ロ、ロック様の魔力は、どれくらい残ってますか?」

「俺の魔力? う〜ん……千年分くらいは溜めてるからなぁ〜。分かんない」

 神は厳密には“魔力”ではなく“神力”を扱う。

 だがロックは、下界の者たちに合わせて“魔力”という表現を使っていた。

 神力は人間の魔力と違い、上限という概念がない。

 時間と共に神の魂へ蓄積されていき、使い切れば“死亡扱い”となる。

 そして再び神力が一定量まで回復すれば、復活する事が出来る。

 なお、ロックの場合は“ゴッドスレイヤー”による特殊な死因であるため、少し事情が異なるのだが――それはまた別の話である。

「俺の場合は、魔力量よりも出力を上げられない事が問題かなぁ……ボディが保たないから」

 ロックは、自身が羽織っているコートを指差す。

「このコートのおかげで、出力を上げられるのは助かってるぜ」

「よ、良かったです」

 ミーナはホッとしたように胸を撫で下ろした。

「それなら、さっさとゴーレムを再起動させて、このあとどうするか決めないと……」

 そうして三人は、腕を失ったゴーレムへ魔力を供給し、再起動を始めるのだった。


「主、命令ヲ」

 再起動したゴーレムは、直立したまま命令を待っていた。

 失った腕のない側を、ブンブンと振っている。

「……その腕、戻らないの?」

「自動再生機能ナシ。旧式ノタメ、全拡張パーツ規格外。元ノ腕ヲ探シテキテ下サイ」

 まさかの“召喚主へのお願い”だった。

「……いや、お前が探して来いよ」

「目標……未確認……命令不達成」

 ゴーレムはその場から動かない。

「いや、お前、動けよ!」

 ロックのツッコミが森に響いた。

 ・・・

 ・・・

 ・・・

 その後。

 三人とゴーレム一体は、森の中を探索していた。

「あった?」

「こ、こっちは……ないです」

「……俺の方もないな」

 三人は定期的に声を掛け合いながら探し続ける。

 だが、飛ばされたゴーレムの腕は見つからなかった。

「おーい! ゴーレム! お前の方はどうだ?」

 ロックは少し離れた場所にいるはずのゴーレムへ声を掛ける。

「アリマセン。座標二四八ノ五七一ヘ向カイマス」

「どこだよ、その座標は……ったく」

 バキッ、バキッ、バキッ――

 ゴーレムは木々を薙ぎ倒しながら、目標地点へ向かって進んでいく。

「はぁ〜……もう、今日はずっと森の中を探し回ってるな〜」

「愚痴は言わない」

 セリーナは呆れながらも周囲を警戒していた。

「こんなんでも、ゴーレムは戦力になるんだから、万全にしないと」

「お、おかしいですよね。あんなに大きい腕なのに……」

 ミーナも不思議そうに辺りを見渡す。

 しかし、金属の物体は見つけられないでいた。

 再び、森の中を探し回る三人とゴーレム一体。

 ・・・

 ・・・

「ないな〜」

「ないわね」

「な、ないです……」

 ロックは最後に、ゴーレムへ視線を向けた。

「ゴーレム……お前は?」

 ……

 返事がない。

「ゴーレム……?」

 ロックは森の中を見渡した。

 巨大なゴーレムの姿が、どこにも見当たらない。

「ど、どこかで見なかった?」

「私は見てないわね」

「わ、私も……」

「……ま、まさか……?」

 ロックは、森の奥に広がる闇を見つめる。

「またゴーレムを……探せってか〜!」

 こうして三人は、さらに探し物を増やす事になったのだった。

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