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第二十九話 カスタマイズ

 ロックは、ココの工房でボディの修理を受けていた。

「こうも簡単にバラバラになってちゃ、修理費もバカにならないよなぁ……」

「私は儲かるから、どんどんバラバラになってもいいんだよ」

「バカか……」

 二人が軽口を叩きながら作業を続けていると――

 工房の奥から、リベットが姿を現した。

「カスタムすれば丈夫になるぞ」

「何だよ、リベット……いたのかよ」

「俺の工房だ。いるに決まってるだろ」

 リベットは工具を手にしたまま、ロックの外れた腕をコンコンと軽く叩く。

「俺の作品がポロポロ壊れてたんじゃ、俺の名に傷が付く……」

「……タダならやるが……金がねーんだよ」

「……五段階に分けてやる。最初は十万でいいぞ」

 そう言い残し、リベットは工房の奥へと向かっていく。

「ココの練習台としての特別価格だ……」

「父さん……」

 ココは、その背中をじっと見送った。

 コンッコンッ――

 キュッキュッ――

「よし、とりあえずボディはくっついたよ」

 ロックは手をグーパーと動かし、屈伸して足の動きを確認する。

「よし、完璧だ」

「で、どうする、ロック?」

「何がだ?」

「カスタムだよ、カスタム」

「金がねーって言っただろ!」

「セリーナから受け取った報酬……まだあるよね……」

「あ、あれは……その……」

(ギャンブルに使う金だ!……何とか誤魔化さなければ……)

「あー、あれは、家を直す資金だ。そうだ、そういう事だ……」

「嘘だね。ロックの思考はもう分かってるよ」

 一瞬で嘘がバレるロックだった。


 ココが報酬袋の中身を確認する。

「おぉ、全然足りるよ。余るくらいだよ」

 ニコニコと笑いながら、ロックを見るココ。

「くっ……」

 ロックは思わず躊躇する。

「ね?」

 ズイッ――と距離を詰めてくるココ。

「い……」

 圧に押され、たじろぐロック。

「やろうよ、ロック」

 目をギラつかせ、手を怪しく動かすココ。

「だぁ~、分かった、分かったから!」

「やったー!ありがとう、ロック!」

 ピョンピョンと飛び跳ねて喜ぶココ。

「初めてのカスタム、やるぞ〜」

 再びギラリと光る目。怪しく動く手。

(こ、こえぇ〜……大丈夫か……?)

 ココはカスタムの準備を始める。

 ガラガラガラガラ……

 運ばれてきたのは、ストレッチャーのような移動式ベッド。

 そこには――生々しい拘束ベルトが備え付けられていた。

「ロック、寝て」

「……ヤダ」

「優しくするから」

「お前……初めてなんだろ……?」

「大丈夫、勉強してるから」

 ガシッ――

 ココはロックを掴み、そのまま持ち上げる。

 ドワーフ特有の力で軽々と持ち上げられ、ベッドに寝かされるロック。

「わぁ~!」

「ジッとしてて……」

 カチャ……カチャ……カチャ……カチャ……

 あっという間に、ロックはベッドへと拘束された。

 ガチャッ、ガチャッ――

 ココは工具を取り出す。

「さぁ、始めようか……」

 ベッドに横たわるロックを見下ろすココ。

 その姿は、小柄な体とは思えないほど――大きく、威圧的に見えた。

(こ、怖すぎるだろ……これ)


 使い方の分からない工具を手に、ココが怪しい笑みを浮かべる。

「お、おい! それは何だ! 何をする気だ!」

「まぁまぁ、ジッとしてて。私も初めてなんだから……」

 怪しげな工具が、ロックの首に巻き付く。

「おい! 本当に大丈夫なんだろうな!」

「何度もバラバラになってるんでしょ? 今さらビビらなくたって……」

 ギュイィィィーン――

「ヒ、ヒィ……」

 ロックは思わず怯える。

 ギュルルルル……

「おぉぉぉ……」

 カチャカチャカチャ……

「…………」

 キュッ……キュッ……

「あれ……?」

「おいっ! “あれ……?”とか言うなよ!」

「ゴメンゴメン。逆に着けちゃった……てへ」

「てへ……じゃねーよ」

「やり直すね」

 ギュイィィィーン――

「えー!! そこから!! ……あーーーーっ!!」

 ――

 ――

 ――

「ハァハァハァハァ……」

「ふぅ」

 ロックの首は、心なしか一回り太くなった気がした。

「次は……肩かなぁ」

「ま、まだ続くの!?」

「そりゃ〜、外れやすい関節部分は、ほとんど耐久性ゼロだからね〜」

 怪しげな工具を手に、不気味な笑みを浮かべるココ。

「続きを……やりますよ〜」

 その表情は――ロックには魔王のように見えた。

「うわぁぁぁーっ!!」


 カン、カン……

 キィィィン……

 カチャ、カチャ……

「……曲がっちゃった?」

「おい!」

 カン、カン……

 キィィィン……

 カチャ、カチャ……

「ま、大丈夫っしょ……」

「真面目にやれ!」

 カン、カン……

 キィィィン……

 カチャ、カチャ……

「ふぅ……」

「……お、終わった……か?」

「仕上げに……これ」

 キュッキュッキュッ

 フキフキ

「よし! 完了!」

「はぁ~……生きた心地がしなかったぜ……」

 そのとき――工房の奥からリベットが姿を現した。

「随分と騒がしかったが、終わったか?」

「父さん! 見てください」

 ベッドに拘束されたままのロック。

 細かった各関節部分は、一段階強化され、一回り太くなっていた。

「初めてにしては、よく出来てる……」

「おい! この拘束、早く外してくれよ!」

「え? 魂を入れたままカスタムしたのか?」

「え?」

「ん?」

 ロックとココは、一瞬理解が追いつかなかった。

「仮のボディに魂を移してからカスタムしなかったのか?」

「仮の……ボディ?」

「麻酔なしで手術するようなもんだからな。よく耐えられたな……」

「そうなんだ、父さん。次からはそうするよ」

 ココはさらりとノートを取り出し、メモを書き込む。

 ――そして。

 ロックの身体が、ワナワナと震えた。

「そういう大事なことは……」

 一拍。

「先に教えてから任せろよぉぉぉ!!」

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