表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/72

第二十六話 ロックの戦略

 ロックは――神のスキルを使うことが出来る。

 その方法は、大きく分けて二つ。

 一つは、自身の肉体を媒体として使う方法。

 だが――

 この方法は、すでに神ではなくなったロックには負荷が大きすぎた。

 今のボディでは耐えきれず、使用と同時に崩壊する。

 ――“千里眼”でバラバラになったのは、その代償である。

 そして、もう一つ。

 それは――

 “課金”。

 神が持つカタログの中から、対象を選び、対価を支払って具現化する力。

(あまり金はねーけど……迷ってられないな)

 ロックは覚悟を決める。

「おい! テメーら! こっちを見やがれ!」

 怒号が響く。

 敵の意識を――セリーナから、自分へと強引に引き剥がす。

「どこだ!」

「す、姿が……見えない?」

 オーガと細身の男は、声の主を探すが見つけられない。

「どこを探してやがる! こっちだ!」

(よし……課金は出来た。あとは、間に合うか……)

「どこにいる! 隠れてないで出てこい!」

 ――その瞬間。

 ロックのすぐ近くに、魔法陣が浮かび上がる。

 ズズズッ……

 地面を這うように広がる光。

「な、何だ……?」

「リーダー……何だ、これ?」

 魔法陣が脈動し――

 ズズズッ……

 “それ”が、姿を現す。

 人の上半身。

 そして――巨大な蜘蛛の下半身。

 異形の存在。

 ――アラクネ。


 突如現れたアラクネに、オーガが吠える。

「このやろう!!」

 ブオンッ――

 振り上げた右拳が、一直線に振り下ろされる。

 ――その瞬間。

 ヒュンッ

 ベターッ――

「な……?」

 拳に、何かが絡みついていた。

「い、糸……?」

 蜘蛛の糸。

 それが、拳から腕へと絡みつき、動きを封じていた。

「くそっ!」

 オーガはすぐさま左拳を振り上げる。

 だが――

 ヒュンッ

「あ……?」

 同じく糸に絡め取られる。

「リーダー!」

 細身の男が駆け寄ろうとする。

 ヒュンッ――

 バチッ!

「俺には効かねーよ」

 男の周囲に結界が展開され、糸は弾かれて消える。

 だが――

 ヒュンヒュンヒュン……

 グルグルグルグル……

「効かねーよ……って……え?」

 グルグルグルグル……

「お、おい……」

 アラクネは、結界の“外側”を狙っていた。

 糸が何重にも巻き付き、結界ごと包み込む。

 グルグルグルグル……

 層が重なるほどに、強度は増していく。

「く、くそーっ…………」

 気づいた時には遅かった。

 細身の男は、繭のように拘束され、完全に動きを封じられる。

 ブチブチブチッ――

 オーガは強引に糸を引きちぎる。

「ぶん殴ってやる……!」

 ヒュンヒュン――

 ブンッ!!

 ドカッ!!

 拳が、アラクネを直撃する。

 その巨体が宙を舞い――

 吹き飛ばされる。

 アラクネの身体は、揺らぎながら魔法陣へと引き戻されようとしていた。


「あ、アラクネ……!」

 ロックの声に応えるように――

 アラクネは、最後の力を振り絞る。

 ヒュンッ……ヒュンッ――

「な……」

 放たれた糸が、オーガの足へと絡みつく。

 ガシッ――

 その動きを、一瞬だけ止めた。

 そして――

 アラクネの身体は、淡く揺らぎながら消えていく。

 完全に、その場から姿を消した。

(……金が少ないから……これが限界……か)

 課金額が足りない。

 ゆえに、召喚できる力も、持続時間も――すべてが中途半端だった。

(あとは……このまま……)

 ブチブチブチッ――

 オーガは、足に絡みついた糸を力任せに引きちぎる。

 右足。

 そして――

 ブチブチブチッ――

 左足も、容易く解放された。

「どこかに召喚者がいるのか……?」

 周囲を見渡すオーガ。

 だが――人の気配は感じられない。

「くそっ!……こうなったら、女だけでもヤルか……」

 狙いを変えた。

 ゆっくりと、セリーナの元へと歩み寄る。

「おい! こっちだ!」

 ロックは必死に叫ぶ。

 注意を引こうとする。

 だが――

「臆病者め……姿を現す気がないなら、こうだぞ」

 オーガは無視した。

 セリーナの頭上で、足を高く振り上げる。

 まるで――踏み潰すために。

「や、やめろ! ここだ!!」

 ロックの叫びが響く。

 ゴロゴロッ――

 頭部が必死に転がり、存在を主張する。

「…………?」

 その異様な光景に、オーガがわずかに首を傾げる。

 だが――

「まぁ、どちらにせよ、この女は消しとく」

 冷酷な判断。

 振り上げた足が――

 一気に振り下ろされる。

「セリーナ!!」


 踏みつけた瞬間――

 ドンッ!!

 凄まじい衝撃とともに、砂煙が舞い上がる。

「あぁ……セリーナちゃん……」

 ロックは、ただ呆然と呟いた。

 自分の無力さが、胸を締めつける。

 ヒュ〜……

 風が吹き抜け、砂煙を少しずつ散らしていく。

「ガハハハッ」

 やがて、視界が晴れる。

 そこにあったのは――

 大きく抉れた地面だけ。

 跡形もなく、消え去っていた。

「セリーナ……」

「消し飛んだわ!」

 あまりにも綺麗に。

 何一つ残さず――。

 ――その瞬間。

 シャシャシャシャッ!!

 無数の光の筋が、オーガの身体を切り裂いた。

「グワァッ!!」

 オーガが膝をつく。

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 その背後に――

 セリーナが立っていた。

「セリーナちゃん!」

「ふぅ……ようやく一対一ね……」

 結界によるダメージを自力で治し、隙を窺っていた。

 ロックの時間稼ぎが間に合っていた。

 短剣を構え、静かにオーガを見下ろす。

「小娘が!! 攻撃が軽いわ!」

 オーガは怒号とともに立ち上がろうとする。

 ――だが。

 シャッ

 膝へ、一閃。

「グオォォ!!」

 その巨体が、再び崩れる。

 立ち上がれない。

 セリーナは間髪入れず、追撃に移る。

 シャシャシャシャッ!!

「ギィィィーッ!!」

 関節を正確に狙った斬撃。

 その一撃一撃が、確実に動きを奪っていく。

「くそぉ!!」

「終わりね……」

 とどめを刺そうとした――その時。

 ザッ……ザッ……ザッ……

 足音。

 規則正しく、乱れのないリズム。

 それが一つではない。

 複数。

 大きく、そして確実に――近付いてくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ