第二十三話 決死の作戦
セリーナは、ロックが召喚した勇者の一人。
“踊り子”の役職を与えられていた。
「あんたが……やったんだよな……!!」
セリーナの目が、逃げ場なくロックを追い詰める。
「違う……」
「何がだよ……」
(ヤバい……何か……いい方法……あっ)
「お、おおお、おと……」
「おと……?」
「囮捜索……ってやつだよ……」
「……囮?」
「ほら、俺“イケメン”だから……」
「……」
セリーナの疑いの目は、まったく晴れない。
「行方不明の捜索クエストをしてたら……セラって神が急に“チラシを配ってるやつを捕まえろ”って言ってきたぞ」
(セラ〜、何余計なことを〜……)
「セラは、あんたが囮だなんて言ってなかったぞ……」
「あぁ……セ、セラには言ってなかったからな……」
「何でだよ」
「あ、あ……ほら、言うだろ。敵を騙すなら……まず味方から……って……」
――沈黙。
セリーナの視線は、なおも鋭いまま。
「それを……信じれ、と?」
そのとき――
ジジジッ……
頭の中に、通信のノイズが響き渡る。
「セリーナ嬢、聞こえるっすか?」
「聞こえてるよ。それより……捕まえたよ」
「おぉ、早いっすね〜。流石っすね」
(ステータスを見たら“暗殺者”もあったっす。頼んで正解っすね)
「おい! セラ!」
「あれ? せんぱいもそこにいるっすか?」
「セラ、こいつだよ。チラシを配ってたやつ……」
「え……?」
「それは……その……囮捜査ってやつだよ……」
「……絶対に嘘っすよね……」
すぐに見抜くセラ。
「で、こいつをどうするんだ?」
「せんぱいのことだから、騙されただけっすね。全く余計なことを……いや……」
セラは何かを閃いた様だった。
「せんぱい、チラシの住所はダミーだったっす。犯人の居場所は分かるっすか?」
「あぁ……」
「そこに女の子はいたっすか?」
「女の子どころか……物がほとんど無かったな……」
「……そこもダミーっすね」
「どうするのよ!」
状況が分からないセリーナは苛立つ。
「じゃあ、せんぱい。もう一回、犯人と会うっす」
「はぁ……」
「顔をよ~く覚えるっすよ……」
「ま、まさか……」
「そうっす。神スキル《千里眼》を使うっす」
「使えるボディじゃねーだろ……」
「囮捜査……だったんすよね……それくらい、やるっす」
セラの声には、逆らえない圧を感じた。
「は、はぃ……」
「じゃ、セリーナ嬢はせんぱいの《千里眼》が発動したら、犯人の住処に潜入っす」
「危険だろ!」
「セリーナ嬢は“暗殺者”っす」
「“踊り子”だろ? 俺専属の……」
「誰がお前専属だよ……」
セリーナが更にロックを締める。
「かなり強いから、安心するっす」
「……で、この男は信用出来るの?」
「せんぱいは、人間の女の子にはそこそこ紳士っすよ。信じていいっすよ」
「こいつが……?」
「ま、困ったらせんぱいを使うといいっすよ」
「……分かったよ」
「じゃ、しっかりクエストやるっすよ〜」
ジジジッ……プツンッ。
セラとの通信が途切れ、セリーナはロックを放す。
「さっさと犯人の所に戻れ!」
「分かったよ、セリーナちゃん」
セリーナはロックと周囲の動きを監視するために、闇へと紛れた。
「はぁ……」
ロックはトボトボと、怪しい男のいる事務所へと向かった。
路地裏にある事務所。
ロックは、その扉をノックする。
「……開いている。入れ」
ガチャ。
「……よぉ」
「あぁ、イケメンお兄さんか……どうした?」
「いや、チラシが無くなってな……」
ロックは手のひらをヒラヒラとさせる。
「お兄さん……人を選んでくれよ。モデルかアイドルなんだから……な」
トンッ、とロックの肩を軽く叩く。
「なんだよ……みんな若くてかわいい女の子だろ?」
「おい……おばちゃんもいたぞ……」
「ん?」
「あー、もういいよ。お兄さん、スカウト向いてなかったね……」
「……クビかよ」
「ここで……死ね」
怪しい男は、その正体を現した。
ペリッ……ペリペリペリッ――
「ふぅ……」
その顔は、魔族そのものだった。
(低級魔族か……その顔……覚えたぜ)
ドンッ――
怪しい男――否、魔族はロックへ魔法を放つ。
「ぐわぁ!」
ロックは倒れた。
魔族は倒れたロックを蹴るが、反応はない。
動かなくなったのを確認し――
魔族は影に消えていった。
しばらく経ってから――
ロックはゆっくりと立ち上がる。
ロックは不死者。
そのボディは作り物。
殺しても死なないし、元々脈もない。
「……くそぉ……いてぇ……」
ガチャ。
扉を開けて、外へと出る。
「セリーナちゃん、いるんだろ?」
スッ――と、闇の中から姿が現れる。
「……本当に死なないんだな……厄介な奴……」
「人形師の工房に行こう」
「……何でだよ?」
「神スキルを使うとバラバラになるんだよ。だから、すぐに直せるように……」
「ふーん」
二人はリベットとココがいる工房へと移動した。
カン、カン……
キィィィン……
カチャ、カチャ……
通りから聞こえる、いつもの作業音。
カランコロン――
「いらっしゃいませ〜。あー、ロック……と誰?」
「私はセリーナ」
「セリーナ、いらっしゃい!」
ココは二人を店内へ案内する。
「ココ、ちょっと場所を使わせて欲しい」
「どうしたの?」
「スキルを使いたいんだけど、多分使ったらボディがバラバラになると思うんだ」
「バラバラ?」
事情を説明し、協力してもらえることになった。
「女の子の行方不明が魔族の仕業とはね……」
「俺もだよ……」
「いいから、さっさとやって頂戴」
セリーナはロックを急かす。
「分かったよ。この端末を持っててよ」
ロックはセリーナに端末を渡す。
次の瞬間――
ロックの身体が光り出し、端末の画面が起動する。
――だが。
ボディがガタガタと震え始めた。
「ぐっ……」
バーンッ――
バラッ……バラッ……
「おぉ~、見事なバラバラっぷり」
頭部だけになったロック。
「まだ……映ってるか……?」
画面を見るセリーナ。
そこには――とある廃屋が映っていた。
「……映っているわ」
「ここは……見覚えがある……」
ロックは画面の場所をよく見てみる。
「あ、俺の解体クエストの近くだ……あの辺、廃墟が多いって……その一つか」
「行ってくるわ……」
「待て!」
「何よ」
「俺も連れて行け。その端末、俺から離れると消えちまう」
「連れて行く……ったって」
頭部だけのロック。
「これ、使う?」
ココが持ってきたのは――
「ショルダーバッグ……」




