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第十五話 初報酬をその両手で

 街までやってくる。

 ギルドは繁華街の中心にあり――

 様々なトラブルの抑止力としても機能していた。

「あら? ロックさんとエリシアちゃんじゃない」

「美男美女が並んで歩くと、様になるね〜」

「だろ? お似合いなんだよ〜」

 ロックは、一気に上機嫌になる。

「そんなのじゃないよ」

 エリシアは、きっぱりと否定した。

「でも……ロックさん……手が変な方に向いてるけど……」

「……気にするな……」

 ロックはそそくさと、その場を離れる。

 どんどん賑やかになってくる。

 武装をした人が増えてくる。

 騎士や兵士とは違い、統一性のないその姿。

「冒険者……だな」

 向かう方向は一緒の様だった。

 ――その先で。

「きゃ〜! ロックさん! いつ来てたんですか〜」

「もう! 来てるなら顔を見せに来てよ〜」

「会いたかったんですよ〜」

 一瞬で――ロックは街娘たちに囲まれていた。

「いや〜、今回は急だったからさぁ〜」

 満更でもない顔で応えるロック。

「ちょっと、ロックさん……?」

 その光景を見て、エリシアは少し驚く。

「人気……あるんだ」

「顔だけはイケメンっすからね〜。でも、見てるっす」

「えっ?」

 セラに言われ、ロックたちの様子をよく見る。

「でも……今日はちょっとお金ないから〜……」

「え〜? ないの〜?」

「な〜んだ」

「じゃ、またお金がある時にね〜」

 ――サーッ。

 街娘たちは、一斉に散っていった。

「……」

 その場に取り残されるロック。

 ただ一人――立ち尽くしていた。


「せんぱい! ぼーっとしてないで行くっすよ!」

 茫然と立ち尽くしていたロックを――

 セラの声が現実へと引き戻す。

「すぐそこだから」

 エリシアは、どこか憐れむような目でロックを見つめた。

 ――だが。

(エリシアちゃんが見つめてくれてる……!)

 ロックの中では、都合よく変換される。

「よし! 行こう」

 一瞬で立ち直ったロックは、前を向いた。

 一行は、再び歩き出す。

「せんぱいは単純っす」

「まぁ……ずっと落ち込んでいられるよりは……」

 エリシアは、小さく苦笑した。

 ロックはズンズンと先を進んでいく。

「ロックさん、そこの大きい建物だよ」

「うん?」

「ギルドはそこっすよ」

 目の前には、大きな建物がそびえ立ち――

 多くの人々が出入りしていた。

 カランコロン――

 扉を開け、中へ入る。

 すぐ正面にはカウンターがあり、受付の女性が三人並んでいた。

「こちらへどうぞ〜」

「おっ、綺麗なおねーさんじゃん」

 ロックは一瞬でデレデレになる。

「ロックさん……早く依頼書を……」

 エリシアはロックの手を見る。

 ――両手とも、まともに使えない。

「取れない。エリシアちゃん、ポケットから取ってよ〜」

 甘えた声。

 ゾワッ――

「……わ、分かったよ……」

 嫌そうにしながらも、エリシアはポケットを探る。

「エリシアちゃんの……エッチ……ポッ」

「キモい声、やめてよ?」

「せんぱい、ゲスいっすね……」

 冷たい視線が突き刺さる中――

 依頼書と薬草を提出する。

「はい、確かにお預かりしました。報酬の五千セインですね。お確かめ下さい」

 受付の女性が、袋を差し出す。

 エリシアがそれを受け取った。

「クエスト、達成だね」

「よっしゃー! 遊びに行けるぜ」

「行けないっすよ……」

 セラの冷静なツッコミが、即座に突き刺さった。


 手が不自由なロックに代わり――エリシアが報酬を持つ。

 しかし、その扱いに困っていた。

「ロックさん、この報酬……」

「俺は今こんなんだから、エリシアちゃんが持っててよ」

 ロックは、動かない両手を見せる。

「それに、半分はエリシアちゃんのだ」

「ダメだよ! これはロックさんの報酬だよ」

「せんぱい……いい格好したいなら、全額あげてもいいんじゃないっすか?」

 セラがニヤニヤと口を挟む。

「俺だって金は欲しい! でも、借りるならともかく――働いた対価は受け取るべきだ」

「……カッコつけてなんか言ったっすけど、そもそも借金するなっす」

「いいんだよ! ……エリシアちゃん、受け取ってくれ。残りは……後で貰うから」

 エリシアは少し迷い――やがて観念したように頷いた。

「……分かったよ。その代わり……」

「ん?」

「手を治そう。費用は私が出すから……」

 そう言って、報酬の袋を差し出す。

「手……治せるの?」

「人形師なら治せるって言ってたよね?」

「そうっす」

「あぁ、忘れてたわ。人形師のこと……」

「この街にいるから、行ってみようよ」

「エリシアちゃんも人形師を知ってるの?」

「教会にくる子どものおもちゃの修理で、たまにお願いしてるからね……」

「へぇ……」

「ちなみに、ここにいる人形師は、天界にもたくさんボディを作ってくれる名工っすよ。私のこの猫ボディも、その人の作品っす」

「おもちゃとか猫とかしか作れないんじゃ、俺のイケメンボディは治せないだろ」

 ロックは、疑いの目でセラを見る。

「そもそも俺のイケメンボディだって、かなりクレームつけたからな! 何度も何度も返品したんだぜ……」

 ロックは自分のボディをポンポンッと叩く。

「ボディの外見に金使いすぎっす」

「あの人形師の名前……何つったかな……」

 ロックは思い出そうとするが、すぐに止める。

「まぁ……行ってみるか。その人形師が腕利きならいいがな……」

 ――こうして一行は、人形師の工房へと向かった。

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