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第十三話 クエストやってみよう

「いいっすか。私も勇者を指揮する責任があるっす。勝つために最善を尽くすっす」

 セラは真剣な表情で言い放つ。

「か……神様の都合で……私はここに……」

 エリシアは納得していない様子で、視線を落とした。

 そんな彼女に、セラはさらに言葉を重ねる。

「エリシアちゃん……君は元の世界で死んでるんすよ」

「……え?」

 静かな教会に、その一言が重く響く。

 召喚される魂は、全て死者。

 それが、この世界の絶対のルールだった。

「生き返るチャンスを与えてるんすよ、天界は」

「……死んでいる?……生き返る?」

 エリシアの瞳が揺れる。

 理解が追いつかないまま、それでも言葉の意味だけが胸に沈んでいく。

「だから頑張るっす」

 その声は、先ほどまでの威圧とは違っていた。

 どこか優しく、どこか導くような響き――

 まるで女神のように。

 猫だけど。

「……分かったわ。このまま、ここにいても何も変わらないなら……」

 エリシアは小さく息を吐き、顔を上げる。

 まだ整理はできていない。

 それでも――進むと決めた。

「エリシアちゃん、俺が守ってやるよ」

 ロックが、にやけた顔で右手を差し出す。

「ロック……さん」

 エリシアは、その手を見る。

 いやらしく、くねくねと動く指先。

「……キモい」

 パシッ――

 バキッ。

 カラン……コロン……

「……え?」

「がっ……」

 ロックの右手が外れ、床を転がった。

「せんぱい、紙装甲なんすから気を付けるっすよ」

「痛えーっ!」

「あ……あ、ちょっと……」

 エリシアは慌てて駆け寄る。

「ご、ごめんなさい……そこまでするつもりは……」

「大丈夫っすよ。せんぱいの身体は作り物のボディっすから」

 それでもエリシアは手をかざす。

 パァァ……

 淡い光が広がる。

 癒しの魔法が発動される。

「……これこれ〜」

 呑気に声を漏らすロック。

「何やってんすか、まったく……」

 セラはため息をついた。

 ――先が思いやられる。

 そんな空気が、教会の中に静かに漂っていた。

 

 ロックの外れた右手を、エリシアが応急処置していた。

 神だった頃のロックは、神のスキルでくっつける事が出来たが、今は出来なくなっていた。

「こうして……ああして……」

 手際よく処置は進み――

「これでよし!」

 ジャーン、と効果音が出そうな勢いで見せつける。

 そこにあったのは――

 テーピングでぐるぐる巻きにされ、

 “くっつけただけ”の右手だった。

「エリシアちゃん……これ、動かないね」

「くっつけただけだもん」

「せんぱい。完璧に治すには人形師に頼むしかないっすよ?」

「エリシアちゃんの愛情がこもってるから、これでいい!」

 ロックは妙な角度の右手を、うっとり眺める。

 ――機能はしていない。

「そんな事より、せんぱい。これからのことっすけど……」

「何だよ……」

「クエストをやるっす」

「クエスト〜?」

「いきなり魔王軍とは戦えないんで、簡単なのからっす」

「報酬次第だな」

「まずはこれっす」

 何もない空間から、一枚の紙がふわりと舞い降りる。

 ロックの前でピタリと止まった。

「なになに……はぁ?」

「何が書いてあるの?」

 エリシアも覗き込む。

「“薬草採取”だと?俺が?」

「せんぱいでも出来るっす」

「しかも報酬が百グラムで“五十セイン”!?」

「加工して一瓶“二百セイン”っすからね〜」

「やってられるか!」

 紙をぐしゃりと丸め、床に叩きつける。

「薬草は教会でも必要なの。やってくれると助かるんだけど……」

「やるぜ!薬草採取!」

 即・手のひら返し。

 ロックは紙を拾い、丁寧に伸ばしてポケットにしまった。

「エリシアちゃん、行こうぜ!」

「分かったわ。教会の裏にいっぱいあるから、行こうよ」

「……教会の裏……?」

 ――一行は、クエストへと向かった。

 初クエストは驚くほど身近に存在していた。

 

 教会の裏口を開ける。

「到着よ」

 ――移動時間、一分。

「クエストってこんな感じなのか?」

「これが一番簡単なクエストっすからね〜。薬草は色んな場所にあるっす」

 そこには――

 一面に広がる、青々とした薬草。

「これ……全部……?」

「うん。薬草だよ」

 バスケットコート三面分はあるであろう、広大な薬草の群生地。 

「根っこは抜かないでね」

 エリシアが鎌を差し出す。

「俺、右利きなんだけど……」

「あ……」

「握れないっすね〜」

 テーピングで鎌を固定。

「これで完璧」

 ジャーン――と効果音が出そうな勢いで見せつける。

「……あぁ……」

 妙な角度の武器完成。

「せんぱい、かっこいいっす」

「うるせぇ」

 エリシアが手本を見せる。

 サクッ

 サクッ

 サクッ

「ほぉ〜、上手いな」

「召喚されて最初はずっと薬草を取ってたから……」

 ロックもやる。

 ザクッ

「あっ」

「上すぎかな」

 ジャリッ

「根っこいったな……」

「下手くそっすね」

「うるさいなぁ!」

 鎌をブンブン振り回す。

「あぶねっす!」

 セラは距離を取る。

「エリシアちゃん、手取り足取り――」

「……キモい」

「……キモいっすね」

 エリシアとセラの冷たい一言が突き刺さる。 

 こうして――

 ロックとエリシアは、薬草採取を始めた。

 ガサ……ガサガサ……

 近くの森から、不規則な音が近づいてくる。

 だが――

 三人は、まだ気付いていなかった。

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