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78. 魔物のたまり場

『城』の一室――


「トーマ! 魔物ポイントにして良いっ!?」


 ユイさんやジュナンとの話が一段楽したところで、イェタがワクワクしている様子で聞いてきた。


 今日、魔動タンクの集まる場所に行く途中などに狩った魔物のことだろう。兵たちと一緒に移動したときに倒したものだ。


 魔物の出現率が高い場所を通過したため、行きと帰りで、それなりに魔物と出くわしていた。


「今あるポイントは百以下だったよね……?」


「うん! 八十ポイントだよ! 村を『城下町』にするのに百ポイント必要だったけど足りなかった!」


 領内の村は、まだ『城下町』にできていない。


「今日、倒した魔物は……」

「トカゲの魔物が五体だよー! あと、ゴブリンが二体に、イノシシの魔物が一体!」


 トカゲの魔物は、こちらの数が多くても恐れず立ち向かってくる。

 そのため多く倒していた。


「ポイントにして良いっ!?」

「もちろん」


 うなずいて、「やったー!」と喜んだイェタと一緒に廊下に出た。


「出すよー!」


 空中に現れた魔物達が、まだ空中にあるうちに光となり、ポイントとなった。


早業(はやわざ)だな……」


 どんどんと手馴れていってる気がする。


「百二十五ポイントになったよーっ!」


 嬉しそうだ。


「前まであった八十ポイントに、今の魔物の百二十五ポイントを足すと二百五ポイント――。これで領内の村は『城下町』に指定できそうだな……」


 それをすると、残るポイントは百五で、百ポイントの『薬草園』も作れたりしそうなのだが。


「百ポイント以上あるから、『魔動投石機』も作れるね!」


 イェタさんが、兵器の作成に、めっちゃ期待しておられる……


「『城』の住人になれた兵士にも『職業』だっけ? あれをあげた方が良い気もするんだけど」


 そんなジュナンの意見ももっともだ。


 獣人のヨシュア君などに与えた、『弓兵』とかの職業。兵士達が『パワー・ショット』などを使えるようになれば、こちらの攻撃力が増すはずだ。


「全体的にポイントが足りないんだよな……」


「……魔物に関してはトーマ様が数日がんばってくだされば、どうにかなるかもしれませんが」


「そうなんですか?」


 ユイさんに聞き返す。


「ええ。領内にはいくつかの魔物のたまり場があるようです。そこで狩りをすれば良いかと」


 たまり場……何が魅力なのか、周囲から、魔物がひきつけられてくるような場所のことか。

 そういう場所は、すごく強い魔物がいたりすることがあるんだが。


「敵の強さは大丈夫なのですか?」


「ええ。町の近くの二つか三つのたまり場ならば、最大の敵は暴れ大岩グマになるようです。なので、トーマ様がいれば問題ないと考えます」


 なるほど。廃鉱山で戦ったことがある、岩をまとったクマの魔物だな。


『戦の角笛』という、城の住人の戦闘力を強化する能力を使えば、あの魔物の攻撃はほとんど効かなくなる。

 その能力を使える俺が一緒に行けば、安全だろう。


「一番強い魔物さえ倒してしまえば、しばらくは弱い魔物ばかりになるそうですから、その間にたくさんの魔物を倒せると思いますよ。……たまり場での戦闘は魔物が多いので危険ではありますが」


「装備を強化すれば大丈夫だろ! 魔法の剣に魔法の鎧! 魔法装備を兵士全員に配備してやるぜ!」


 豪華だな……。あっ、いや、俺や獣人たちの装備は、もうすでにそうなっているんだったか。ダークエルフたちのところにいたときに作ったものだ。


 外見が普通なので忘れていたが。


「……ジュナンが、そう言うなら大丈夫かな」


 様子を見て、危なそうなら、俺も毎回一緒に行って『戦の角笛』を使うことにしようか。


「んじゃ、さっそく暴れ大岩グマ用の武器でもつくろう!」


 そこから手をつけていくのか。


「あの魔物を簡単に倒せる武器があるのか?」


「ああっ! 『地下鉱石採取所』で使うツルハシを参考に、なんか矢でも作るつもりだ! あのツルハシは岩を砕く能力が高くなるように魔力を付与してあるからな!」


 岩への攻撃力が高くなる矢か。本当に暴れ大岩グマ用の武器だな。


「ヨシュア君が『パワー・ショット』を撃つときに、その矢を使えば、ある程度ダメージはあるだろう」


 普通の矢で『パワー・ショット』を使ったときは、あんま効果がなかったからな……


 ただ、前に戦った暴れ大岩グマは、希少な鉱石を食べて防御力が高くなった個体だった。普通の暴れ大岩グマなら『パワー・ショット』だけでも問題ないかもしれない。


 あれも普通の岩ならつらぬけるぐらいの威力がある。


「他にも、足止めするための、体を凍らせる霊薬も作るつもりだ! そんなわけで材料欲しいから、『薬草園』作ってくれよ! 甘い草もいっぱい作れるからイェタちゃんも喜ぶぜ!」


 甘い草……カーマ草のことだな。


 女性には体力回復の効果しか無いのだが、男性の精力剤となる薬草だ。


「甘い草……っ!」


 カーマ草を作るという一言は、イェタのハートをわしづかみにした様子。


 ダークエルフのところにある『城』では、他の薬草を多めに作っていて、あまりカーマ草が採れていない。イェタの好きなカーマ草は品薄気味だ。


「……じゃあ、『薬草園』を作ろうか」


 あの草はレディーファーストということで、食事時は女性にしか配っていない。もっと採れても問題ない。


「『薬草園』、つくるー!」


 こうして、イェタと一緒に中庭へ移動し、『薬草園』を設置した。


 そしてジュナンが暴れ大岩グマ用のアイテムの作成を始め、なんと、その夜のうちに作品を完成させてしまう……


「トーマさん、暴れ大岩グマ用の武器ができたぜ!」


「早いな……」


 イェタと一緒の部屋。眠る準備をしていた俺は、驚きながらジュナンの持ってきた矢や霊薬を見る。


「こっちは敵を凍らせる霊薬だ! 足元を狙って投げて、敵の動きを止めたりする!」


「……いつも俺達が使っている霊薬だよな?」


 小さなカミナリを落とす矢などを使うとき、枯れ木や枯れ草に火がつくのを恐れて、消火のために用意していた。


「あれより効果が高い! 三倍から四倍ぐらい強い霊薬だ!」


 すごい……!


「材料は十倍以上消費するけどな!」


 ああっ、薬草の消費量が多すぎるのか。


「強敵用のアイテムってとこだな」


「そんな感じだ! 魔力抵抗が強すぎて、あの霊薬が効かなかった敵用に作ったものだな!」


 暴れ大岩グマは、そんな敵だった。


「他に雑魚用の、広範囲を凍らせるものもある! こっちは、もっと薬草を使っちゃうんだけど……」


「広範囲を凍らせ足止めできるのも、魔物のたまり場での狩りに良さそうだな。作ってくれ」


「わかった! 魔法抵抗がそんな高くない相手なら、ダメージも期待できるはずだ!」


 それは便利だ。


「それで、こっちが岩への攻撃力を高めた矢だ。例の、暴れ大岩グマ用に作った矢だな!」


 ほほう……


「威力は、どのぐらいなんだ?」


「私が弓で放ってみたところ、さくっと岩に刺さってたぞ!」


 ……普通は岩に刺さらず跳ね返るものだが。


「……『パワー・ショット』と一緒に使ったとき、どのぐらいの威力になるか知りたいんだけど」


「まだ試してないな! 今から、ヨシュア君に頼みに行こう!」


「……起きてるかな?」


「獣人達は、この時間なら起きてるはずだぜ! 『パワー・ショット』とか『パワー・スラッシュ』が使えるよう、みなで練習しているはずだから!」


 そうなのか。


「じゃあ、彼らのところへ行こうか」


「私も行くー!」

「きゅっ!」


「……じゃあ、みんなで行こうか」


「いいね! ここに来る途中、ユイちゃんもなんか資料読んでるのみかけたから、ついでに誘おうぜ!」


 うなずいたジュナン。


 そんなわけでユイさんも加え、イェタ達も連れ、ヨシュア君のもとへと向かうことになった。

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