79. 岩グマ対策の矢
獣人たちは『城』の門の外、魔法のランプのけっこう明るい光の中、『パワー・ショット』などの練習をしているようだった。
「トーマ殿! 何かあったのですか?」
ルマールさんが俺達に気がついた。それに答えたのはジュナンだ。
「今日、ルマールさんにも話した、暴れ大岩グマ用の魔法の矢ができたんだよ! ヨシュア君にこいつを使って、どっかの岩に『パワー・ショット』を放ってもらいたいんだけど」
「おおっ、わかり申した! 何発でも放ちますぞ!」
ジュナンの矢を受け取りながら、ルマールさんが気軽にうなずいている。実際に『パワー・ショット』を使うのはヨシュア君なんだが……
「あっ、僕の出番ですか?」
俺たちの会話を聞きつけた彼が嬉しそうにしているな。問題ないのだろう。
そうして、みんなで実験の用意を整えた――
「じゃあ、矢を使いますよーっ!」
魔法のランプに照らされる、人間の大きさの岩を狙い、弓を引きしぼるヨシュア君。
「パワー・ショット!」
彼が放った矢は、岩に当たる。――そして岩が爆発した。
「おうっ!?」
「矢で、岩が粉砕されましたな」
「思ったより威力がある……」
「すごいーっ!」「きゅっ!」
作り手のジュナンが一番驚いていて、他のみんなもざわめいている。
「これなら、あの岩のクマも簡単に倒せそうですな!」
ルマールさんの言葉。
「僕のほかにも、何人か『パワー・ショット』を使えるようになっている獣人がいますから、彼女達のぶんもほしいですね……」
「よっしゃ、明日の朝までに、大量に作っとくぜ!」
ジュナンが、そんな宣言をしていたんだ。
個人的には、そんな急がなくてもいいとは思ったんだが――
「わーい、ポイントがいっぱい入るーっ!」
「きゅーっ!」
「ジュナンががんばるなら、我々獣人も負けていられません! 明日の魔物のたまり場での狩りのため、用意をいたしますぞ!」
「「はい!」」
「……早朝に、魔物狩りに行く予定の兵達がいますね。いっしょに行かせましょう」
なんか、彼女の勢いに呑まれたのか、みんながすごくやる気になってしまったんだよ……
――そして宣言どおり、大量の矢や霊薬を朝までに作ったジュナン。
彼女のやる気に比例するように、アイテムは、その日の魔物狩りで猛威を振るった。
ヨシュア君の『パワー・ショット』と一緒に使えば、ジュナンの矢は、二発か三発で暴れ大岩グマを倒す。
暴れ大岩グマは複数いたが、強力に足元を凍らせる、新しい霊薬を使ったため、全員、最後まで動くことができず倒されていた。
他の雑魚の魔物も、広範囲を凍らせる霊薬で足止めをされ、ついでに凍ったことによるダメージを受ける。
とどめに、いつものカミナリを落とす矢を使われて、一掃されていた。
誰も攻撃を受けなかったから、防御力を上げる俺の『戦の角笛』の必要が無かった……
こうして俺たちは何の問題も無く、魔物のたまり場での狩りを終え、そろそろ暗くなるというころに『城』へと帰還した。
「うわーっ、あの岩の魔物がいっぱいいる!」
イェタが見ているのは、暴れ大岩グマだ。あいつらは、ちっちゃな小屋ぐらいあるため、イェタじゃないと『倉庫』に入れられない。
そのため皆で台車に乗せ、かなりの距離をエッチラオッチラと引っ張ってきた。
「すごいですね……。結局、どのぐらいの魔物を倒せたんでしょう?」
城の外、広場に積まれたクマの魔物をなでながらユイさんが聞いてくる。
「百ポイントの暴れ大岩グマは四体、二十ポイントのトカゲの魔物も二十体以上いて全部を倒していますね」
前に戦った暴れ大岩グマは、トカゲの魔物が近くにいるのを嫌がっていたが、今回のやつらはうまく共生していたため、それだけの数を倒せている。
「他の魔物もいたので千ポイントか、それ以上のポイントがとれるはずです」
「……兵たちにも『弓兵』などの職業を与えられそうですね」
そうだな。
「その魔物のたまり場で狩りをしていたというころの、この町の記録があるのですが……。そのころに狩れていたトカゲの数も二十から三十ぐらいでしたね。大体、今日の成果と同じです」
へー。
「そうなんですか?」
俺の言葉に「ええ」と、うなずくユイさん。
「暴れ大岩グマは、あそこのたまり場にいるのが珍しいそうなのですが……。ですが、四、五日ほどの期間を置けば、他の魔物は常にそのぐらいの数が手に入ったと記録にあります」
なるほど。
「ただ、たまり場での狩りを積極的にしていたのは、『秘術使い』様がご存命のころ……かなり大昔の話なので、本当にそうなるかはわかりませんが」
『秘術使い』というのは、この領地の初代領主。この国の建国の英雄の一人だから、大昔に違いない。
「……暴れ大岩グマが四体もいたのは、日照りやら魔動タンクが近場をウロウロしていたので、魔物の生息場所がちょっと変になっていたせいですかね」
ジュナンの作った武器が良く効いたし、ポイントも大きいしで、あの魔物は狙い目なんだが。
それを伝えたところ、ユイさんから情報が来る。
「……泊り込みになりますが、奥地のたまり場に行けば、暴れ大岩グマがたくさんいる場所もありますが――」
「おおっ! 良いですな! 是非、狩りましょう!」
ルマールさんが反応した。
強い敵を倒せば、そのぶん力などがちょっとずつ強化されていくと言われている。皆の強化のためにも、狙うのはいいかもしれない。
「……この調子でポイントを得られれば、兵士達に『弓兵』などの職業を与えるのも、すぐに終わりそうですね」
「『パワー・スラッシュ』などの練習のしかたもコツがつかめてきましたからな! あれを使える兵がたくさんいれば、魔物狩りもずいぶん楽になりますぞ!」
……『パワー・ショット』や『パワー・スラッシュ』は、それだけでもけっこう強力だから。
「ポイントがいっぱいあれば、魔動投石器とかもいっぱい作れるねーっ!」
「きゅーっ!」
……イェタも嬉しそうなんだが、彼女の勢いだと『城』が兵器で埋め尽くされそうなんだよな。
ダークエルフの集落近くにある『城』では、魔物が強すぎて死骸がうまく手に入らないためポイントを節約していたのだが、ここでは魔物は簡単に手に入る。
「……あんまり兵器ばっかり作っても問題だから、ある程度設置したら、少し抑えようか。一日一個ぐらいで」
「わかったー!」
聞き分けの良いイェタの言葉。良い子だ。まあ、一日一個ペースで作っても、一年後ぐらいには、すごいことになっている気はするのだが。
兵器は、『城下町』であるカルアスの町や領内の村にも置けるから、いざとなればそっちに置けば良いだろうか。
そのうち『城レベルアップ』で、新しい施設が作れるようになるかもしれないし。
ダークエルフの集落の『城』では『城レベルアップ』はできるようにならなかった。だが、こちらの『城』では『城下町』などが栄えることで高くなる『繁栄値』が見れるようになっている。
その上昇などで、『城レベルアップ』ができるようになる可能性があった。
「とりあえず、しばらくは魔物狩りですね」
その言葉に皆が、うなずく。
「……魔物を多く倒すことで、魔物が生まれない場所、魔物が侵入を避けたいと思う場所が増えます」
ユイさんが言う。
「鉱山の近くにも、そうなりそうな場所があるので、あそこに村ができそうなぐらいには魔物を倒したいですね。かなり時間がかかると思いますが……」
狩りすぎとかに注意しなくて良いので楽である。
「まあ、何はともあれ、がんばりましょうか」
「「はい!」」「了解ですぞーっ!」
「がんばるっ!」「きゅーっ!」
俺の声かけに皆が答えを返し、こうして魔物を倒す日々が始まったんだ。
ジュナンが作ってくれたアイテムのおかげで狩りの効率も良く、『城』の住人である兵達に『職業』が行き渡るのもすぐだった。




