再挑戦
俺は、
データの中から、使えそうな画像をいくつかピックアップした。
データはカラーだったが、白黒に調整できることもわかった。
そして案の定、
白黒に調整すると、ジュノへの身体の負担は減った。
俺は、
四枚の画像を選び、
最後に、
「この危機を救えるのは君たち家族だけだ」
とメッセージを入れた。
送る相手も決まった。
後は送信するだけだ。
「いいか?」
俺は尋ねた。
「えぇ。大丈夫」
ジュノは答えた。
「いくよ」
俺は言った。
「うん……、あっ、うっ、あぁ~」
ジュノの顔は紅潮し、身体は仰け反る。
ジュノは苦しんでいるはずなのに、
何か見てはいけないものを見ているようで、
恥ずかしい気持ちになった。
苦しみから目をそらさないでおこう。
だから見るのだと、
自分に言い聞かせたが、
これは多分詭弁なのだろう。
単純に目が離せないのだ。
俺はサディストではない。
意地悪も、人を傷つけるのも嫌いだ。
ただ、
目をそらしてしまうと、
後悔しそうで、
それができなかった。
1分ほどで送信が終わった。
ジュノは息を切らせている。
心なしか、
満足げな表情だった。
「どうだった?」
俺は尋ねた。
「うん……。もう大丈夫。それよりどうなったかな?」
ジュノは言った。
俺は画面を見る。
俺が送信した貴族の領地は、青く染まっていた。
「青くなっている」
俺は言った。
「そう……、じゃあ成功ね。
よかった。
私は少し寝るわ……」
ジュノはそう言い、眠りについた。
俺はクローゼットからハンカチを取り出し、ジュノにかける。
ジュノは疲れた表情をしていたが、
少し満足げな顔をしているように感じた。
その顔を見ると、
少し笑みがこぼれた。
さあ、
スレ民達に報告をしよう。
俺はパソコンに向かう。
でも……。
俺も眠たくなり、
そして体は動かなくなった。
そうか……。
緊張していたんだ。
緊張から解放され、
一気に……、
疲れがきたのか。
……
ツヨポンとジュノが夢を送った国では、
朝から大変な騒ぎになっていた。
(どんどんどんどんどん)
「なんだ。騒がしい」
領主ジルベルトは言った。
「申し訳ございません。
奥様とキャサリンお嬢様が、混乱されていまして」
執事は言った。
「わかった。行ってみよう」
ジルベルトは、執事についていく。
そこには、青ざめた顔をする妻と娘の姿があった。
「どうした。マーガレット、キャサリン」
ジルベルトは言った。
「実は私もキャサリンも、同じ夢を見たのです。恐ろしい夢を」
マーガレットは言った。
恐ろしい夢……。
まさか、
そんな事があるわけはない。
ジルベルトは今朝見た夢の事を思い出していた。
「どんな夢だ?」
ジルベルトは冷静を装い、尋ねる。
「魔物にね……。
この領地が襲われる夢なの。
お父様も……、
お母様も……。」
キャサリンは身体を震わせている。
ジルベルトは、
頭が真っ白になった。
まさか、
自分が見た夢と同じものを、娘が見ていたとは。
「マーガレットはどんな夢だ?」
ジルベルトは口を動かし、顔の緊張を緩め、尋ねた。
「私も同じ夢でした。地図も見ました」
マーガレットは言った。
「私も地図を見たわ。そして”この危機を救えるのは君たち家族だけだ”と」
キャサリンは答えた。
「それは私もです」
マーガレットは言った。
ジルベルトは確信した。
これは天啓に違いない。
しかし、領主たるもの軽率には動けない。
「ちょっとここで待っててくれ」
そう言い、
ジルベルトは、執務室に向かう。
ジルベルトは地図を手に取り、
二人に見せた。
「その地図の場所はここにあるかい?」
ジルベルトは尋ねた。
「ここです」
マーガレットは言った。
「そう、ここ」
キャサリンは答えた。
ジルベルトは、さらに尋ねる。
「地図には、線が入ってなかったかい?」
「ここから、ここに向かう線と、あとここに印が」
マーガレットは指をさす。
「私も同じ」
キャサリンは言った。
「”この危機を救えるのは君たち家族だけだ”と夢のお告げがあったんだよね」
ジルベルトは尋ねた。
二人ともうなづく。
ジルベルトは、二人の真剣な顔を見て、決意を固めた。
「わかったよ。この危機は私が守る。君たちは心配しなくて良い」
ジルベルトは笑った。
「もしかして、あなたも……」
マーガレットは言った。
ジルベルトは、二人をそっと抱き寄せた。
「あぁ。
私も見た。
単なる悪夢だと信じたかった。
でも君たちも同じ夢を見たなら、話は別だ。
私はこの地の領主、
領民たちと、家族を守る義務がある。
じゃあ、行くよ。
神に私の無事を祈っていてくれ」
そうささやいた。
……
ジルベルトは、
騎士団長と副団長を呼び寄せ、
会議を始めた。
「いくつか聞きたい。この場所からこちらに魔物の大群が攻めてきた場合、どうなる?」
ジルベルトは尋ねた。
「大群の規模によりますね」
騎士団長は答えた。
「我々の兵は100名程度。魔物の強さにもよりますが、大群で一気にとなると、持ちません」
副団長は答えた。
ジルベルトは、
夢で見た魔物の数を数えようとしたが、やめた。
推測で言うべきではないと思ったからだ。
「すまないが、この辺りにおかしな動きがないか、偵察を送ってもらえるか?」
ジルベルトは言った。
「わかりました。すぐに」
騎士団長は答えた。
副団長はうなづき、
部屋を出た。
「何か……、あったのですか?」
騎士団長は尋ねた。
「笑わずに聞いてもらえるか?」
ジルベルトは言った。
「えぇ、もちろん」
騎士団長は答えた。
「実は娘、妻、私が同時に同じ夢を見たんだ」
ジルベルトは言った。
「同じ夢ですか……」
騎士団長は答えた。
「そう。同じ夢。この国が魔物たちによって襲われる夢。そして三人ともこの地図に描かれたルートを見た。おそらく侵攻ルートではないかと。
あっ、言いたい事はわかる。
領主が夢なんかに惑わされるなと、
そう言いたいのだろう」
ジルベルトは言った。
「いえいえ。違います。実はきな臭い話を聞いていまして……、
ここだけの話。
魔物の侵攻が活発で、国側は混乱を避けようと、情報統制を行っているらしいのです」
騎士団長は答えた。
「情報統制か……。
あの宰相のやりそうなことだ。
それで君はこの件をどう思う?」
ジルベルトは尋ねた。




