報酬
副団長は、騎士団長のもとに向かう。
騎士団長はいつものように、
リラックスした雰囲気だった。
「体調は良くなったのか?」
騎士団長は尋ねた。
「はい……。お伝えしたいことがあります」
副団長は言った。
騎士団長は、手を突き出し、言葉を制止させる。
「俺から言わせろ」
騎士団長は言った。
「はい」
副団長は答えた。
「実はな。俺らより先に、魔物達を殲滅した奴がいる。そいつを探してほしい」
騎士団長は言った。
「それでどうされるんですか?」
副団長は答えた。
「奴らは卑怯な手で魔物を殲滅した。
それは名誉を重んじる騎士としては納得できない。
でもな、そのお陰で我々は一人の犠牲者も出さずに済んだ。名誉を重んじる我らとしては、彼らに報いないといけない。
しかし、我らは直接彼らを称えることができない。
だからお前に、彼らにこの金を渡して欲しいんだ。
そしてこう言って欲しい。
表立っては言えないが、感謝している。
君らこそ、本当の勇者かもしれないと」
騎士団長は言った。
副団長は、胸がつまりそうになった。
「わかりました。必ず伝えます」
副団長は頭を下げた。
「あとこれはお前の奥さんにだ」
騎士団長は、小さなブローチを手渡した。
「これは……?」
副団長は尋ねた。
「それは俺から言おう」
ジルベルトがやってきた。
「これは領主様」
副団長は頭を下げる。
「それはうちの妻と娘からだ。
詳しいことは知らんが、
君の奥さんが英雄だというのでな」
ジルベルトが言った。
皆知っていたのだと、
副団長は気が付いた。
副団長は深々と頭を下げ、
その場を立ち去った。
そして、この国に危機があった時、
裏部隊として自分が動こうと決意したのであった。
……
ダンちゃんは、考えていた。
この男を掃除して良いものかと……。
ダンゴムシのダンちゃんは、
300回転生し、ダンゴムシの職務をまっとうしたことにより、
神獣クラスの変化を遂げた。
そして今ジュノの友として、生きている。
ダンゴムシはその生涯を、落ち葉や枯草、木のくずなどを食べて生活する。
そしてダンゴムシの糞を微生物が分解し、最終的に植物達が育つ土壌へと返すのだ。
ダンゴムシはカビたもの、細菌がついたものも躊躇せず食べつくす。
つまり、
彼らは一流の掃除屋だ。
300回ダンゴムシとして生活するのは、簡単なことではない。
ダンゴムシは3年ほど生きる。
つまり300回の転生とは、
900年に渡って、
落ち葉や枯草などを食べて過ごした結果なのだ。
その彼が直感した。
こいつは今のうちに処理しておかないと、
ヤバイと……。
ダンちゃんは、意を決して、男の足先に食らいついた。
……
ふと気が付くと、俺は雲の上にいた。
ふわふわと、
身体が浮いている。
俺は腰布を巻いただけの姿になっていた。
身体に力は入らない。
どうした?
たしか……。
俺はクエストをクリアして……。
その後のことが思い出せない。
足のほうが少しくすぐったい。
かろうじて動く首を動かし、
目を足の方に向ける。
すると、
何かが足元で動いている。
小さな身体にピンク色の髪の毛。
ジュノなのか……。
声を出そうにも、言葉を発することができない。
ジュノが足元で何かをしている。
何をしている?
俺は不安と共に、
少しの爽快感を感じた。
なんだ。
この感覚は。
浄化……。
そうか。
浄化に近い感覚だ。
俺の意識はスーッと消えていく。
「大丈夫だよ。もう苦しみからは解放してあげる」
耳元で、そう囁く声が聞こえた。
苦しみからの解放……。
俺に苦しみなんかあったっけ。
……
(ぱちん)
おでこに大きな衝撃が加わる。
なんだ。
なんだ。
なんだ。
俺は起き上がる。
そこには腰に手を置いたジュノがいた。
「もういつまで寝てる気。朝ごはんが届いてるわよ」
ジュノは言った。
テーブルを見ると、朝ごはんがあった。
納豆に卵とご飯。味噌汁とベーコンエッグだ。
「あぁごめん。お腹空いたんだね」
俺は尋ねた。
「別に、お腹とか空いてないけど、冷めると美味しくないでしょ。
だから起こしてあげたの」
ジュノは言った。
「俺は冷めたご飯でもいいんだ。もう少し寝かせておいてくれ」
俺は言った。
「ちょっと待って。
もう……私がお腹空いたから、もう食べて」
ジュノは耳を引っ張る。
「わかったよ。
だから耳を引っ張らないで」
俺は言った。
俺は、食事をはじめる。
ジュノには、
納豆の豆とご飯、それと味噌汁の豆腐を渡した。
初めての納豆に苦戦しているようだ。
あれ……。
醤油がない。
「醤油とか知らないよな」
俺は尋ねた。
「知らないわよ。別で調味料が用意されているなら、それは転送されないと思う」
ジュノは言った。
まじか……。
ベーコンエッグを醤油なしで食べるとは。
俺は少し落ち込んでいた。
「どうしたの?」
ジュノは言った。
「いや。ベーコンエッグには牡蠣醤油をかけるのが好きだったんだ」
俺は答えた。
「なにそれ?」
ジュノは言った。
「牡蠣という貝のエキスが入った醤油で、出汁醤油に近いのかな。
普通の醤油より、うま味とコクが強いんだ」
俺は答えた。
「そうなんだ。私の魔力を使えば、出せるわよ」
ジュノは言った。
「えっそうなの?魔法を使えるの」
俺は尋ねた。
「そうね。今回クエストをクリアしたから、多少の魔法は使えるわ。
ただクエストをクリアしないと使えないから、選ばないとマズいわね」
ジュノは言った。
「牡蠣醤油を出す以外にも、どんな魔法があるの?」
俺は尋ねた。
「そうね。私の衣装を変えたりとかできるわ」
ジュノは言った。
「メニューを一品増やしたりは?」
俺は尋ねた。
「できないわ」
ジュノは言った。
「ちょっと待て。君の衣装を変えられるの?」
俺は尋ねた。
「そうよ。あの人形と同じような衣装とかにもできるわ。髪型も寄せられるわよ」
ジュノは言った。
「まじか……。
なんだその神設定!」
俺は叫んだ。




