四十五話『あれもこれもそれも。やりたくてやってるわけじゃないのよ』
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英雄防衛計画の宇宙エネルギー接続実験の段階で無理矢理戦士にさせられた実験台、葛城怜士(かつらぎ れいじ )
実験用に作られ、体液などから加工されたエネルギー、人工エネルギーを利用して変身する特殊な戦士。
秘密保持契約によってその情報は保持され、他者に流れる事は無い。
被験者。
国民のために危険を呑んだ男。
そんな男は実験終了後は役目を終えたも同然。
宮殿のように輝く黄金の髪は誰にも拝まれる事なく病院の枕に密着する。
「また許可なく飛び出したの?ほらちゃんと監視しておかないと。この病院の不祥事になっちゃうわよ」
「でももう身体拘束は出来ないのよ」
病室の前で看護師たちが何かを言っているが、当の 本人は気にしていなかった。
男は「言っとけ言っとけ」と部屋で独り言を呟く。
手元には、携帯ゲーム機。
世界の果てまで行きがちな某アイドルグループの元ピンク色担当を彷彿とさせる美青年。
男は自分がなぜ入院させられているかわからないまま、実験後からこの病院で長い時を過ごしていた。
病名は精神病の一種と診断されているが、自分 では異常性がわからなかった。
窓には鉄格子。
この病院の大方の精神病患者よりも重い処置がとられている。
幽閉となんら変わらない。
唯一の楽しみがゲーム機なのだ。
ゲーム機で遊ぶ事が今出来る事の精一杯。
何かに干渉することが自分は許されないのだろうか?
だとすれば、いろいろ辻褄も合う。
どうやら自身を精神病の措置入院で入院させたのは宇宙警察ステーションではないらしい。
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最近まで身体拘束をされていてゲームすら許されない状況下にあった。
イエローとしての活動もままならず、かなりの制限が施されている。
だがある日突然、この男の親を名乗り出る者が異議を出したことにより身体拘束は解除。
当然、この男に現在、親はいない。
親代わりの人は強いて言えば佐野本部長になるだろうが、佐野本部長は大佐という実の息子がいる。
保護者らしい保護者など、この男にいるはずが無いのだ。
男は不審に思う。
だがこれも精神病の一環の症状だとすれば、確実に自分は病に侵されている側の人間だ。
ただ、身体拘束が緩和されて身動きが取れるようになっただけでも有難いと、男は思っていた。
宇宙警察ステーションが助けに来ない。
インカムで連絡は取れるだろうが、
アーティフィシャルカードリーダーはユニバースカードリーダーのように人前ではただのリストバンド同然…とはいかない。
今自分の腕にあるのは患者証。
院内受診の際や院内で買い物する際も使う大事なものだが、残念なことにかなり窮屈に結ばれる。
腕が紫に変色しまう人も出てくるんじゃなかろうか。
否、それは流石に大裟。
急に病棟を飛び出したせいか、ナースたちがソワソワしている。
入院させれられていると佐野本部長に助けを求めようとしたこともあるが、
それ以前の他愛もない会話は出来たのに、助けを求めようとした瞬間、通信は遮断されてしまった。
何か意図的なものも感じる。
宇宙警察ステーションに助けを求めるのは、クロウサギの連中としては都合が悪いのだろうか?
なんてくだらない思考を広げては、ボーっとしているせいか、コンピューターとの対戦に、負ける。
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「ッチ」
怜士は不満そうに舌打ちした。
自身のキャラが倒れる映像を嫌でも見せつけられる。
ゲームは強いはずなので本来なら倒せた相手だ。
コンティニュー?の問いが画面いっぱいに表示され、イエスのボタンをタッチしようとした時、
「葛城さん?入るわよ」と一人の女性がやってくる。
邪魔された。
「ナーナ看護長」 彼女の名を呼べば、
ナーナと呼ばれた女は、「この間も部屋の鍵が開いた瞬間に飛び出して。閉鎖病棟なのにどうやってここから抜け出してきたの」と怜士に尋ねる。
怜士は、「どうもこうも無いですよ」とふてくされた顔で答えた。
「力……いや、なんでもないです」と目を逸らす。
「強化ガラスが飛び散って扉が強引に開いてたんだけど。それに大きな音が数時間の間に二回も。これ、怒ってるわけじゃなくてね? 凶器なんか持ち込んでも無いのにどうして……」
疑問を持つナーナに、怜士は「……」と言いたくなさげに目を逸らした。
「やっぱり、お薬処方したほうがいいんじゃないかしら……でも、あなたのお医者様がね、葛城さんにはお薬を出すなって圧力をかけられているの。でね、葛城さんは治療どうしたいか聞きに来たの。私には何の権限も無いんだけど、今精神が落ち着かないとか体調が辛いとかある?」
ナーナが尋ねては、怜士は「いいえ」と答えた。
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「多分ね?ほかの重症患者さんほど病状も悪くないし、本来なら葛城さんはここから出られるはずなの。でもあなたの保護者を名乗る宇佐美って方が」と名前を言うと「宇佐美?」と怜士は首を傾げる。
宇佐美……。
何処かで聞いたことがある名前だ。だが、思い出せない。
怪しい。
怜士は宇佐美という名前の男を不審に思うのだった。
怜士が入院する病院を、隣接する高いビルの屋上から作業着を着た男が双眼鏡で覗き込む。
マツだ。
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「やっとダークマスターに諜報員って役職を貰えたんだ。レッド以外でクロウサギの邪魔をさせるものなんて一歩たりともダークマスター様に近寄らせない。それに台詞を長々と喋ることが出来るのも今回も最初だ。ムクロなんて小娘に負けてるような男じゃないさ」
リスの尻尾を揺らしながら病院の窓を覗き込む。
だが鉄格子のせいで拝む事は不可能だ。
「おい」
作業着を着たおじさんがマツに話しかける。
「バイトが来るって聞いたらいきなりサボりかよ。松田さんって言ったっけ? ちゃんとしてくれや」
怒られてしまったマツは、「はい!! 申し訳ございません!!」と持ち場に戻る。
嗚呼、自分はどこに行っても下っ端で上の人間に謝ってばかりで地味で台詞も貰えなくて影も薄いんだな。
とマツは反省する。
チラリ。とビルの下が目に入る。
「あれ」
病院のすぐそばのコンビニから黒いパーカーフードを被った男が出てきた。
「ダークマスター様だ」と呟くが、「余所見すんじゃねえ!!」とおじさんに怒鳴られてしまうマツだった。




