四十四話『家族ってのはどんな形であれやっぱいてほしいいいもんだよなぁ』
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引っ越しが終わった。増築期間中の仮住まいへの引っ越しだ。
なんだか本当に家族みたいだ。
賃貸だというのに本物の一軒家を買って暮らしているような感覚。
部屋が広いのは嬉しい。
江藤はそんな風に喜びを感じていた。
だが、「ちょ、ちょっと光太郎さん。僕の部屋、エ●漫画多すぎません?」本棚に広がる異様な光景。
いかがわしい本や同人誌が大量に収納されていた。
背表紙だけでなんとなく、嗚呼、これは駄目なやつだとわかる。
「光太郎さん、辞めてくださいよ、いるんですようちには十四歳の幼気な女の子が」
江藤は言うが、光太郎は「るっせーな、有難く読めよ」とそれを強引に押し付ける。
それに、コンニャクに切り込みを入れたようなオブジェが本棚の上に。
あ、これはどうやらまだ中身のないティッシュケースらしい。
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「まったくもう、光太郎さんは変態なんですか」
江藤が呆れたように言うと、光太郎は「男はいつの時代も変態である。変態であるのがデフォルトなんだ。寧ろ変態であれ。変態である男こそが健…」
と頷きながら言うが、
「駄目でしょ、十六歳の男の子の部屋にアダルトグッズ置いちゃ」と江藤にツッコまれる。
「捨てますよ~これ」
江藤はアダルトグッズが大量に入った箱を捨てようとするが、
「待ってくれえええええええ」と光太郎が足早に江藤を追いかける。
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東京都如月市昇合一丁目。
二千百万平方キロメートルの敷地を誇る如月市でも、駅の周辺にある好立地。
喫茶から十分ほどの距離だ。
喫茶があるのは如月市昇合二丁目。
如月市全体で見ても都会寄りな住宅地だろう。
生活にかかるマネーは喫茶の売上金と佐野本部長のマネーでどうにかなっているようだ。
アダルトグッズをリビングのテーブルに置く江藤に、「だから辞めろって」と光太郎は手を伸ばす。
「嗚呼、女の人の顔写真が先端に貼ってありますね」と冷静に分析する江藤に、光太郎は「俺記憶喪失だからわっかんねえや」と耳を穿る。
江藤は「ヒーローをやる傍らで女性ともヤっていたなんて幻滅ですよ光太郎さん」と光太郎に冷めた視線を送る。
「いや知らねぇよ」と目を泳がせる光太郎。
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江藤は、「はいはい、わかりましたから」と適当な返事をして、それらの道具を光太郎に返す。
「態々夜を共にした女性の顔光沢紙に印刷してまでアダルトグッズに貼ります?普通」と溜息を吐く江藤に、「ちげぇ!俺の推しだバカタレ」と光太郎は頭を搔きながら言った。
「いや、やっぱアンタおかしいですよ」と光太郎に言う江藤。
「お前もなぁ、大人になればわかるの。ど~せ経験もねぇ皮被りの坊ちゃんなんだから、人の嗜好!性癖!にいちいち口出ししないの。わかったなら1・2・のポカンで忘れろ。いいなァ~?1・2・のポカンだぞ」
光太郎のふざけた口調に、「はいはいわかりましたよ。でもわざマシンで後から簡単に思い出せますからね」と江藤は答える。
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「うっさいなぁ…」と部屋を片付けていたハツネがその場に現れる。
「うげえええええええええええええ」
ハツネは大量のアダルトグッズを目にした瞬間、ドン引きするような声をあげた。
「江藤、おま、最低や!こんなポップでポップでジップなエブリディを送ってる幼気なキューティーハツネちゃんの視界にこんな下品で下劣で意味不明な大量のガラクタを置くなんて有り得へん!」
絶句するハツネに、光太郎は「最低だよなぁ!わかる、わかるぞ、ほら、江藤。わいせつ物を公開してないで捨てなさい」と全ての罪を江藤に擦り付ける。
「バッ!お前のだろ!そこの黒髪もじゃ頭のだってハツネちゃん!」と江藤は弁明しようとする。
だがハツネは、『はっははっははっは!』と腹を抱えて光太郎と一緒に爆笑する。
「光太郎なんて童貞やで、よく考えてみぃや、光太郎と交尾したい女がどこにおるん?」
ハツネの言葉がグサグサと光太郎に刺さるが、
光太郎は「そうだよ~江藤くん。ちゃんと自分のでしたごめんなさいって謝らなきゃ」と江藤に冤罪で謝罪させようとする。
いじめの現場だ。しかも低レベル。
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「あ~はいはい。わかりましたよ。マナさんのパソコンに写真撮って光太郎さんが隠し持ってましたって送りますからね」
小学生の必殺、伝家の宝刀【先生言う!】を繰り出す江藤。
光太郎は「勘弁してください江藤様」と江藤に縋る。
ハツネも「私も知ってたんです本当は~」と泣き真似をしながら江藤の反対側の腕に縋る。
「あ~もうわかった、わかったから離れて!」と江藤はツッコんだ。
「とりあえず新居に相応しく無いものは見えないところに片付けましょう、んでもって、僕の部屋のいかがわしい本は片付けてください!」と江藤は光太郎を注意した。
ハツネは、「江藤の部屋はいかがわしい本置かれたんや。私の部屋はドラ●もんにゴ●ゴにジョ●ョに漫画放題や、喫茶にあったの全部持ってきてもうた、それにこ●亀、ワンピー●、ヒロ●カ!ええなぁ、幸せやわ~」と嬉しそうに言った。
「それなら僕の部屋も小説だらけがよかったです光太郎さん」
江藤は不満そうな顔で光太郎を見る。
光太郎は、「小説なんて読まねぇし詳しくねぇよ」と溜息を吐いた。
「ほら、あるじゃないですか、コミカライズもされてる人気作、チー牛転生とか。絶対好きでしょアンタ」
【⚠宇宙警察L戦士の世界でのお話です!!】
江藤が言うと、光太郎は「知らね」と適当に流した。
ハツネは、「はいはい戻るで私は。同人誌、【毎日夜神●日和】の途中まで読まなあかんからな。」とハツネは欠伸をしながら自分の部屋へ戻っていった。
光太郎と江藤は顔を合わせる。
「んじゃ、俺も部屋に戻るとすっか」と戻っていく光太郎。
「ちょ…アンタ置き去りですよ」と机。
しかも食卓に置き去りのアダルトグッズを見ながら江藤は言った。
「はぁ」
溜息を吐いた江藤は容赦なくアダルトグッズを缶ごとゴミ箱に入れるのだった。




