四十話『お前が止まろうが進もうが宇宙は回るんだよ。じゃあ好きにすりゃいいじゃねえか。あ、当然自己責任に決まってるけどな』
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買い物に行った日と同日の夜、江藤が光太郎の部屋に行くと、光太郎はインカムを付けて誰かと会話をしていた。
まあ、宇宙警察ステーションだろう。
「そう、小次郎も春華も大佐も、一度に集まったほうがいいだろ?戦士同士、離れててもやりづれぇっつーか」
光太郎の話相手は、マナだ。
マナは光太郎の話を聞きながら、『別に制限は無いし、佐野本部長を通しているのなら構わないわ』
と、光太郎のアイディアを肯定する。
「そーか。んじゃ、そういう事で進める。増築が終わったら喫茶が基地ってことになるな。あとマナさんよ。こっちにも特殊兵器。あんだろ?そろそろあれ使いてぇんだけどよ、準備できてる?」
光太郎が尋ねる。
『一流の技師、平野雁内。彼の手によってもう完成はしているけど。後二人の戦士と合流しないと使えないのよ…』
とインカム越しでも伝わるぐらい、
マナは頭を悩ませている。
光太郎は、「はァ⁉あと二人もいんのかよ」と大声をあげる。
マナは、『戦士の力を持つ人は後二人いるはずなのよ。記録にうっすらそう書いてあるわ…黒塗りされてるけどね』と答える。
光太郎は、「黒塗り??」と首を傾げた。
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『それに、貴方たちが弐式って人の招待で強制休暇に行って、それが終わった直後にね?妨害電波がまた来たの。宇宙船は大荒れ。受け取った信号を読み解くと、オマエラハブガイシャ。』
マナが報告を続けると、「部外者?」と光太郎は首を傾げる。
マナは、『これ以上妨害電波を受けたら宇宙船が墜落してしまう可能性すらあるわ。それに、宇宙のエネルギー数値を計測する機械もなんだか調子が悪いの。妨害電波を受けまくっているせいか何なのかわかんないけど。本来の業務に不要なボタンが沢山。その上、誰もそのボタンの機能を知らなくて。佐野本部長にさえ知らないって言われたときは驚いたわ。まるでレプリカみたいじゃない』
と不思議そうに宇宙船内の不可解な点を語った。
光太郎は、んなことも知らないで司令官やってたのかよ。と心の中で呆れる。
『早くクロウサギの真相、突き止めなさいよ。じゃないと一生如月に戻れないし私だって如月に返れないんだから』
マナに急かされた康太路は、「わぁ~ってるよ。マナさん。」と答えた。
そしてマナが『ちょっと‼』と何かを言いたげに叫ぶが、光太郎は話を聞いたりすることも無くインカムを切った。
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インカムをインカムカードに変換する光太郎。
話を聞いていた江藤は、
「光太郎さん。ごめんなさい。眠れなくて。少し聞いちゃいました。今の話相手、マナさんですよね?なにをお話されていたんですか?」と尋ねる。
「聞き耳を立てるたぁお前も悪い奴になったな。ただ適当に情報共有してただけだよ」と光太郎は頭を掻きながらめんどくさそうに答えた。
「寝れねぇなら荷物移動する準備でもしておけ」
と欠伸をしながら言う光太郎に、江藤は「はい…」と答えた。
「光太郎さん。どうやったら光太郎さんみたいにいろんな人を守れる強い戦士になれますか」
江藤の言葉に、光太郎はベッドの布団を畳んだ状態から敷こうとする手を止める。
光太郎は「守っちゃいねぇよ。何も。大して活躍もできやしねぇ」と弱音を吐く。
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江藤は、「光太郎さんは僕にとって立派な先輩です。まあ下品だし、前掃除中にエロいビデオ見つけちゃったり、大人のオモチャ見つけちゃったりとかはしましたけど。そんなに自分を卑下する必要ないですよ。それに、僕を助けてくれたのも光太郎さんですし」
江藤の言葉に光太郎は、「え?」と硬直する。
「見たの」と信じたくないのか江藤に尋ねる光太郎。
江藤は、「まあ男性ですし普通ですよ。僕は引いたりしません。見たのが僕でよかったですね。ハツネちゃんだったら今頃一生のネタにされてますよ」と言うが、「そう言う問題じゃない!」と光太郎は叫んだ。
「あ~もう!おこちゃまは寝ろ。ここからは大人の時間だ。」と光太郎は江藤を突き放す。
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江藤は、「はいはい、わかりましたよ」と答え「おやすみなさい」と光太郎に手を振り部屋から出て行った。
自分の部屋に着いた江藤は、「部屋の荷物移動する準備でもしとけって光太郎さんには言われたけど、もう眠れそうだし僕も寝ようかな」と江藤は独り言を呟く。
江藤の部屋には、今までの特撮ドラマのグッズが沢山。
どれもこれもヒーローになってから江藤が調達したものだ。
ヒーローとは何か。
学ぶには光太郎の背中を追いかけるのと、ヒーローに関する物語を追うのが一番よかった。
バイト代で購入した音楽プレイヤーにも、
特撮の主題歌がたっぷり保存されている。
江藤は物心付いた頃からヒーローへの憧れはあったが、英雄防衛計画も、ヒーローの存在の有無も。
自分がヒーローとしてその場に立つまで知らなかった。
勉強不足だ。
勉強不足で江藤は思い出す。
高校の問題集を買っていたのだった。
高校に通うことは家庭の事情で実現できなかったが、学びは何歳からはじめても遅くないのだ。
夜勉。眠る前に勉強しよう。
江藤は勉強が苦手だ。
学力が追い付かないわけではないが、人ほど勉強できるわけでもない微妙なライン。
江藤は勉強を続けて一時間。
ようやく眠気が襲ってきたので、江藤は眠ることにした。




