三十九話『人間は常に進化を追求し続ける生き物だ。てめぇはなんも変わってねぇって思ってるかもしれねぇけどてめぇだって日々成長してんだよ』
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喫茶キュアミラージュでは、サチコが新作のシナモンフォッカチオを頬張っていた。
その隣でサチヨは、これまた新作のミラージュコーヒー、所謂、特製ブレンドのコーヒーを飲む。
「うん、美味しいんじゃな~い?」
サチヨは満足そうにグッドサインで示した。
サチコも、「某店もビックリするような美味しい味になってるわよ~ん。」とオッケーサインを手で作り評価した。
「ありがとうございます!」
シナモンフォッカチオを作った春華が頭を下げる。
「お~、これあなたが作ったの⁉なかなかいいじゃない!光太郎が作ったって思っちゃったわ」
サチコの言葉に、春華は「光太郎さんに教えて頂きながら試行錯誤を重ねたので…!」と笑って見せる。
光太郎は、「つまり、俺の手柄ってことだ」と椅子に座りながら笑った。
「いいやちゃうで!集客したわ・た・しの手柄や!」 ハツネも横入りする。
「あぁ⁉もう一遍言ってみろ小娘」
とハツネに顔を近づける光太郎。
ハツネも「上等だコノヤロー」と柄悪く光太郎と睨み合う。
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「まあまあ二人とも落ち着いて!手柄も何も、春華さんが作ったことには変わりないんですから!も~。しっかりしてくださいよ二人とも。お店が上手く回せているのは光太郎さんのおかげ。お店にお客さんが増えたのはハツネちゃんのおかげ。シナモンフォッカチオを提案したのは春華さん、新しくコーヒーを提案したのは僕!」
江藤が場を落ち着かせようとすると、暴れん坊将●によく似た音楽をかけながら、一人の男が現れた。
「なんだなんだ?」光太郎は驚きの声をあげる。
ワイヤレス通信機能付きのラジカセを片手にやってくる小次郎。
「やかましいなお前ら。お前らがうるさいからついつい来てしまったじゃないか」
小次郎の言葉に、一同は唖然とする。
『うっせぇ(うっさい)のはテメェ(アンタ)だ(や)!』と同時にツッコむ光太郎と江藤とハツネ。
「なんで暴れん坊将●なんですか!なんでマツケ●なんですか!」
江藤も更なるツッコミで追い打ちをかける。
春華は「うふふ、面白い方ですね?」と穏やかに笑った。
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「小次郎さん。お噂は兼ねてより光太郎さんからお伺いしていました。とっても愉快な方だと。」
そう言うと春華は小次郎に、「改めてよろしくお願いします」と片手を差し出した。
小次郎もラジカセを置いて握手を返す。
光太郎は「んで、なんで暴れん坊将●チョイスなの」と尋ねる。
小次郎は光太郎に「ほれ」とDVDが入ったパッケージを差し出した。
「なんだこれ」
光太郎が渋々パッケージを受け取ると、そこには『ドラ●もん』と書かれたDVDがあった。
「この流れで暴れん坊将●じゃねぇのかよ!」
と大声でツッコむ光太郎に、「少年心を忘れるな。と言うことだ」とさぞ当然のように小次郎は頷いた。
「おいおい本当にここに来た理由って」と怪訝そうに目を細める光太郎。
「お前にこれを貸すためさ」小次郎はにっこり笑う。
光太郎は、「はいはい、受け取るだけ受け取っておきますよ~」と答えた。
「ほんまにドラ●もんなん??」ハツネは不審そうに小次郎を見つめた。
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サチコが、「んで?光太郎。改装増築リニューアルするんでしょ?」と光太郎に言った。
「嗚呼、だから仮住まいを如月市内に押さえた。増築が終われば今より多くの客が来る上に、サチコ。サチヨ。お前らオカマ軍団、それに、江藤、ハツネ、春華、小次郎、大佐にまで部屋を用意できるようになる。考えただろ?シャイニングロードに泊まった時に思いついたんだ。」
光太郎が言うと、春華は「すごい!私の部屋まで用意してくださるの?」と尋ねた。
光太郎は、「母ちゃんにちゃんと許可取るんだぞ」と春華を指さしながら言う。
春華は、「はーい‼」と素直に答えた。
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小次郎は、「俺の店とのコラボメニューを出してもいいな」と気分良さげに語る。
「コラボメニューって今のテメーの場合酒だろ?むずかしいんじゃねぇの」と頭を掻きながら光太郎は言った。
小次郎は「そこはやる気だ。人間やる気があればなんでもできる。」と答えた。
「時代に適応出来てねぇ根性論だな」 光太郎は小次郎に言った。
小次郎は、「いつから俺が適応できてないと錯覚していた。いつの時代も、時代のほうが人間に適応すべきだ」と息を吐くように名言を残す。
「そうかいそうかい、物は言いようだな」最早めんどくさそうな光太郎。
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「んで?サチコさんとサチヨさんを呼んだのにはどういう意図が。まさか試作品食べてもらうだけでは無いでしょう?」
江藤が言うと、光太郎は、「嗚呼。今から某家具屋に行こうと思ってな。とりあえず多くの人手が欲しかったんんだ。」と説明する。
春華は、「家具屋!いいですね!」と心を弾ませる。
ハツネは、「ええで~。新刊の漫画買ってくれるんなら付き合ったるわ~」とハツネ。
江藤は「じゃあ僕は新しい小説で!」とハツネに便乗して強請る。
春華は「じゃあ私はバッグ!」とここぞとばかりに便乗した。
「じゃあ俺は…」
と小次郎も言いかけるが、「バイトしてる組は給料あげてやるからそれで我慢しろ」と
光太郎にバッサリ言われてしまう。
『は~い』 バイト組はいい子に声を合わせるのだった。
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小次郎に至っては、「バイトしてない俺やオカマ軍団は報酬ななし⁉」と目を見開く。
サチコも、「その坊やの言う通りよ~ん。アタシたちにもなにか」と光太郎に顔を近づけた。
光太郎は、「はいはい…」と適当に聞き流した後、「三千円以内のモン何か買ってやる」と報酬を一応設けた。
「三千円分だけ⁉」と驚くサチコとは裏腹に、
サチヨは「じゃあ電気アイマスクにしようかしら~」と既に何を貰おうか考える。
小次郎も、「手伝ってやろう我が友よ!」と腕を組みながらうんうんと頷いた。
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「仮住まいで三人一緒に住めるなんて家族みたいですね!」と喜ぶ江藤。
ハツネも、「せやな~!」とわくわくが止まらない様子だ。
仮住まいの準備と増築の準備。
喫茶キュアミラージュは、人気の真っ只中であるが、数週間~一ヶ月の休息期間を設けるようだ。
すべては更なる進化のために。
ヒーローとしても、オーナーとしても。
真剣な事には変わりない光太郎だった。




