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『宇宙警察L戦士~セルフで異世界構築してラスボスとして君臨してみた~』  作者: ミタラリアット


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三十七話『誰かを愛することに制限なんて必要ねぇんだよ』



 「あ~も~‼遅刻しちゃう‼」



 国立創集院大学附属創集院高等学校では、


長い黒髪ロングヘアの女子高生が、廊下を走っていた。


 「こら!廊下は走るな!」


 教師に怒られる女子高生は、黒いジャケットを赤いネクタイが彩る制服のスカートを揺らす。


ボタンには、Sのアルファベット…



  「ミサおはよ!」



 女子高生は茶髪のショートカットにカチューシャをしている同級生に話しかける。


 「サユリおはよ」



 同級生はどうやらサユリという名前だったようだ。



 「ごめんミサ、昨日掃除当番変わって貰っちゃって」



 と両手を合わせ謝るサユリに、

ミサは「いいのいいの‼」と気楽に答える。



 「それより昨日の名探偵津田島見た?助手のひがしかわとのナイスコンビネーションが…」



  とミサが言いかけたところで、「席につけー」と担任の岸田先生がやってくる。




 それから暫くして、全ての授業が終わった、放課後。



 ミサは「今日駅前のショッピングモール行かない?」とサユリを誘う。



 サユリは、「ごめん!今日はヒロムと予定があって!」と返事をする。


ミサは「もぉ~。本当にアンタたちは仲が良いのね。私も欲しいわ~。だ・ん・な」とサユリを揶揄う。



 ガールズトーク。


  「ちょっとやめてよ!」と嫌がるサユリ。



  二人の会に、青髪の男子高校生が聞き耳を立てる。


 「なに?俺がサユリの旦那だって~?」


 と嬉しそうに言う男子高校生。 お調子者な彼こそがヒロムだ。



 「ちょっとやめてよ!」頬を赤らめながら言うサユリ。


 ヒロムは、「俺はいつでもウェルカムだぜ~。仔猫ちゃん?」


ウィンクするヒロムに、サユリは「バカァ!」と叫ぶ。


  「式場なら用意出来るわ…」


 と少年漫画誌を読みながら言う三つ編みに眼鏡姿のユリカに、


サユリは「んも~。ユリカまで~。」と困り眉の表情を浮かべた。


 【幸】。


こういった普通の日常こそ、【幸】なのだろう。この三人を見ていると、そんな風に感じさせられる。


だが、そこには何かが抜け落ちていた。

それに気づく者はいない。現れない。


なぜなら彼らには物語の軸に干渉する権限が無いからだ。彼らに与えられた役割は、日常の謳歌。


主を満足させること。だが彼らにはこの世界の主を認識することは出来ない。


 ただ造られた日常の中で、生きて、笑って。


本来なら有り得なかったはずの青春を辿っているだけの記憶の残骸。



 「ヒロム、行こ」


 サユリはヒロムを連れて歩く。


自然豊かな如月の街を歩きながら、ヒロムは言った。


 「あのさ」


 ヒロムが口を開くと、

サユリが「なーに?」と首を傾げる。


 ヒロムは少し顎を上にあげ、

空を仰いで手を伸ばす。嫌になるくらいの快晴。



 「俺、ずっとこうやってみんなで青春したかった。高校生活が楽しくて仕方ないよ。みんなで勉強して、お弁当を食べて、遊んで。なんだか霧が晴れたみたいに心が軽くなったような、そんな気がするんだよね。」



  ヒロムは快晴から視線をサユリに移した。


  「つまりとんでもなく楽しいってこと!」


 突然そんなことを言うヒロムに、サユリは「私も楽しいよ!ヒロムと、みんなと学校に通えること!みんなに中学の時に出会えたことも!」と微笑む。


 風が吹く。涼しげな風。

河川敷を歩いていたヒロムとサユリの髪が、靡く。


 アヴェ・マリアのバイオリンの音色が、

どこかから聞こえた。

河川敷の向こうで、誰かが弾いている。


 サユリとヒロムの反対側に、

黒いパーカーフードを深く被った男がいた。


彼こそが奏者だ。

二人にもその姿は確認することが出来た。




 暫くその音色を聞いた後、


サユリは「行こっか」とヒロムに手を差し出した。



  一曲を演奏し終えた黒いパーカーフードを着た男こそ、ダークマスターである。



 「祈りでも捧げているのか」



 ダーククイーンがダークマスターに尋ねる。



 ダークマスターは、「祈りじゃない。」と静かに答えた。



 「祝福だよ。彼女が存在していることへの」


 ダークマスターの台詞に、ダーククイーンは、



「苦しい言い訳だな。お前が一番知っているだろう?あれがラブドールとなんら変わりないことぐらい。未練タラタラで憐れな男だ。」



とバッサリ言い切った。


  バイオリンをケースに片付けるダークマスタ―。


 ダークマスターは、「そんなに悪い事なのか?愛した人間の傍にいたいと願うことぐらい」と


画用紙に張り付けたような切なげな笑顔でダーククイーンに問いかける。



 「碌でもないやつだな。あいつは喩えるならお前が思うようにプログラムしたソフトウェアに過ぎない。お前を認識もしないしお前に服従もしない。彼女らにだけ消滅ルールから離れた保護まで付与して。そこから何が得られると言うんだ?エネルギーも消費する上、彼女らを観測することに時間を割いたって虚しいだけじゃないか」


  ダーククイーンは到底理解できない様子だ。


まぁ、無理もない。ダーククイーンが理解を示さない事ぐらい、ダークマスターはわかり切っている。



 「わかってもらえなくて残念だ」



 ダークマスターはそう言うと、バイオリンケースを背中に背負いながら、河川敷の反対側を歩いていく。



 「余程転生したくないようだな。お前」



 ダーククイーンの言葉に、「俺は俺のやり方で自分を裁くまで転生なんてしない」とダークマスタ―は断言した。



 ダーククイーンは苦笑いを浮かべながら、「地獄あっちで面倒蒙るのは私なんだが」と答えた。



 「それぐらい、俺を巻き込んだ罰として吞んでくれ」



 ダーククイーンがどうなろうと知らない。

と言わんばかりにダークマスターは嗤う。


 ダーククイーンは、「お前はどこまでも自己中心で人の事を考えないな」と呆れて溜息を吐いた後、


ダークマスターの背後を歩いた。


 さらに二人から少し離れた場所を、「にゃーん」と鳴きながら黒猫が歩いて行った。

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