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『宇宙警察L戦士~セルフで異世界構築してラスボスとして君臨してみた~』  作者: ミタラリアット


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三十三話『わざわざ知らない奴になろうとしなくたっていいんだよ。お前はお前で良かったんだよ。もう、この言葉も意味ねぇんだろうな』



 赤黒い空に鼠色の雲が飛ぶ地獄の街の廃れた外装が映えるビルの中にある隔離室の外側から、


ビチ…ビチ…。バチ…バチ…。と、電流が走るような不穏な音が数秒に一度の頻度で、聞こえる。


 廊下では死神たちが、「可哀想なこった。死神に目ェつけられたばかりに悪魔呼ばわりだと」


「死神になる事も拒んだらしいぜ。だぁ~人間ってのはわかんねェなァ~。死神になればすべての罪がチャラだったってのに」


 死神二人は部屋を通りがかった後、


『っぎゃははははっはははは!』と奥の部屋に閉じ込められている罪人の人生も、尊厳さえも踏みにじるように笑った。


 「いま地上では何が起きてるんだい」と死神の一人が尋ねては、「戦争寸前らしいぜ。愚かな人間どもがまた歴史を繰り返しているんだってよ。あ~くっだらねぇ。死神は自由で最高だぜ。一度死神になっちまえば生前の罪も業も全部チャラ。一生地獄ではたらかなきゃなんねぇが、好きなタイミングで地上で遊べて犯罪者つくりゃ一人前。なんでこんな自由を拒むんだろうなァ?能力さえ手に入る。不自由は何にもねぇ!死神最高ひゃっほう!」


ともう一人の死神がステップをしながら答え、ビルから出て行った。


 「ちょっと待ってくれよー!」残された死神も彼の背中を追いかけた。




 如月市内。某所。クロウサギアジト。


  光道教と書かれた看板が崩れ、ヒビが割れたまま放置されている森の中のエリア。


そこに行くにはイエス・キリストの像がある植物園のような公園を抜ける必要があり、


この辺りの土地に詳しくない人にはなかなかたどり着けない特殊なエリア。


 一階から五階までのフロアがあり、一階はロビー、二階は指令室と幹部の居室。


三階以上が末端が暮らす質素な宿泊エリアとなっている。


一階にはロビーと食堂があり、


悪い顔をした闇の宇宙人たちが食事を提供する。末端も、幹部も食べられるものは同じだ。


 クロウサギはクロウサギのアジトまでたどり着き、入団を希望する者は拒まない。それがダークマスターのスタンスだ。


 だがクロウサギに入団した者たちはなぜか次々と記憶を失い、ダークマスターへの忠誠だけを心に刻まれる。


虚無だ。思い出も、愛も、優しささえも、彼らには無い。


  だが時に彼らはダークマスターへの反発をする。


なぜなら彼らの中にはダークマスターへの忠誠しか刻まれておらず、彼らの個性は後付けで産まれるものが多い。


彼らは途中から自分は何者なのか、何のために悪事を続けているのか曖昧になっていく。


 そうなればあとは簡単だ。目の前の中世の対象が正しい事を言っているのか?と懸念を抱く。


疑心暗鬼にもなっていく。自分が何者かもわからないまま逃げ出す者もいる。


その者は家族と合流したとて、家族を家族だと認識できない事例もある。


 去る者を追うような面倒な真似はダークマスタ―は好まない。


身内の粛清も、ダークマスターは極力避ける方針だ。


そのような背景から、ダークマスターは優しい。なんて勘違いをする者も現れる。


ダークマスターにとってはそれも都合がいいのだが。



 指令室ではダークマスターがまた今日も少女の監視をする。少女の部屋までだ。


 「女性の部屋まで監視なんて趣味が悪いな。ストーカーとなんら変わりないじゃないか」


とダーククイーンが言っては、ダークマスターは仮面を被りボイスチェンジャーを使いながら、


『私の行動を否定するな』とだけ答える。



 「それと。前々から言いたかったんだが。私の前で仮面とボイスチェンジャーは必要ないだろう。私はお前の正体も素顔も知っている。」


 ダーククイーンの言葉に、ダークマスターは『気分だ』と答える。


ダーククイーンは、「適当な理由だな」と嗤う。


 『形から入るのだって悪い事じゃ無いだろう』


 ダークマスターの口調から、この状況を少し楽しんでいるようにも取れる。


  ダーククイーンは、「なら完全にしろ。お前はたまにラフな格好で出かけている。なぜそんな軽率な行動をとるんだ。」とダークマスターに尋ねた。


 ダークマスターは、『浴びるためだ』と答える。


「浴びる?」ダークマスターの意味不明な言葉に、ダーククイーンは首をかしげた。



 『あの日の温もりを、愛を。私の元に舞い降りた天使が幸せに生きる街の空気を。日の光も、月の光も、風も、鳥の鳴き声も。一片の花も。私は私が愛した人に接触することは私の定めた掟に反する為できないが、あの人がここに生きている。と言う実感を得たいんだ』と答えた。


  ダーククイーンは、「それを世間では何と呼ぶか知っているか?」と問いかける。


 ダークマスターはダーククイーンに視線を向けた。


 「執着」


 ダーククイーンの言葉に、ダークマスターは『…』と黙った。


  ダーククイーンは、「まだまだ転生出来なそうだな。」と目の前の男を冷静に分析し、評価した。「転生ランクで言えば、Ⅾにも満たない。」


  ダーククイーンの言葉に、ダークマスターは『そうか』と頷いた。


 『この世界は私の都合よく回っている。私が転生できないと言うのなら一生の時をここで過ごすのもいいかもな。』と切なげな声色で頷く。


 ダーククイーンは、「そんなことをしたら最期、お前の魂は消える。それだけは確かだ。胸に刻んでおけ」とダークマスターに言った。


 そしてダーククイーンは、ダークマスターの悍ましい色の杖を見つめる。


 「なんだか最近、お前の杖の色がさらに濁った気がするが」


 ダーククイーンの言葉に、ダークマスターは『気のせいだろうな』と仮面の下で笑った。


 「嘘をつけ。その杖がお前やヒーローたちのネガティブな感情を吸収して力にするってことぐらい知っている。」と答える。


 「お前はまだマイナスエネルギーに苛まれているんだな」


 ダーククイーンが言うと、ダークマスターは、『放っておけ』と答えた。



 ダーククイーンは、ぬいぐるみを抱きしめてダークマスターのベッドに転がる。



 「わかったよ。好きにしろ」


 ダーククイーンはそう言うと布団もかけないまま眠りについた。

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