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『宇宙警察L戦士~セルフで異世界構築してラスボスとして君臨してみた~』  作者: ミタラリアット


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三十一話『何やっても違った?何をやるにも金かかる?だーッ!うっせぇな!パスタ食って寝とけ!』


 江藤は閉店後の喫茶キュアミラージュ一階で調理をする。調理を任されるようになってから、喫茶の従業員としての技術面も、少々上達した気がする。


 ハツネはカウンターテーブルで、


「ダメガネまだ?」


 と空腹で耐えられなさそうに江藤に話しかけた。


「もうちょっとだから待ってて」


 そう言うと江藤は、サッとパスタにかける具材を炒める。


 江藤、ハツネ、光太郎。この三人は既に、『家族』のようなコミュニティを形成していた。


 うさぎのマスコットを指で転がして遊ぶハツネ。


 江藤がパスタを盛り付けながら、


「なにこれ」 とマスコットを眺める。


「パピーがくれたんや。滅ぼされた惑星から逃げるときに。私だけを宇宙船に放り投げて。でもこの曖昧な世界。パピーもニセモンやと思うと悲しいわ。家族で過ごした僅かな時間も、力だけを追い求めていたバカアニキも。誰よりも優しかったマミーも…。」


 ハツネの言葉に、江藤は、「辛いこと思い出すのはご飯のあとにしよ!」 と、明るく言ってハツネの気を紛らわす。



「腹が減れば元気も出ない!僕が美味しく作ったから!」



 江藤はそう言うと、ハツネのために意味がわからないほど大盛りのパスタを差し出す。



「うわあああああ!すごい!漫画盛りや!」


 目を輝かせるハツネ。


 江藤は、「こんなに食べられる?」とハツネの胃袋を心配する。


 ハツネは、「当然や!私らの星の住民はなァ?見た目こそ人間によー似とるけど胃袋が桁違いにデカいんや!それだけやない、消化も地球人の数倍デカい!せやからな?まったく太らへんし、かと言って栄養まで排出するわけやないから健康的に骨も成長するんや!すごいやろ⁉」


 元気になるハツネに、「よかった」 と答える江藤。


「せやせや!江藤、明日二人だけでみっちり働いて光太郎を楽させよ!まァ、私は高校生にもなってへん未成年の居候。金なんて払えへんし寧ろ本来は私が払わなあかんぐらいやけどな」


 ハツネはパスタを啜って頬張る。


 江藤は、「ハツネちゃん。パスタはラーメンじゃないから啜ったらダメだよ?」と自分の分を運び、ハツネの隣に座りながら言った。


「そうなん⁉」と驚くハツネ。


「みんな啜って無いでしょ?」 と言う江藤に、ハツネは「ほんまや…思い出してみれば確かにそうやわ」



 と気づき、優雅にパスタを食べはじめる。



 江藤も、「うんうん。光太郎さんに教えてもらった通りに作ったらこんなに美味しくなった。味噌汁とご飯しかたいして作れるものが無かった僕としては上出来だよ」と自画自賛する。



「自分で自分を褒めたい気分ってやつやな」と笑うハツネ。


 ハツネと江藤の二人はその後も他愛の無い雑談を繰リ広げながら話を続けていた。



 場面は変わり、小次郎の家。小次郎の家は光太郎が言及していたような魚屋では無く、酒屋。


「小次郎、帰ったか」


 小太りで頭にタオルを巻いた大将スタイルの父親が、小次郎に話しかける。


 小次郎は、「見ればわかるだろ。帰った。」 とクールに答える。


「小次郎。今日はすごいいいものを持って帰ってきたぞ」


 と笑う父親に、小次郎は、「なんだ。外出でもしていたのか」 と小次郎は尋ねる。



「じゃんッ!萌え萌えシュミレーションゲーム!海賊船長まりりんちゃんを攻略して?の続編だ」


 父親に言われては、今までの冷たい態度とは一変し、「親父‼」と歓喜の声をあげる。




「やはり持つべきは親父だ!」小次郎はそう言うと、「どこにあるんだ」と父親に尋ねた。


 父親は、「お前の部屋のベッド下だ」と答える。


 小次郎は、歓喜から一転。青ざめたような表情を浮かべた。


「のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 小次郎の悲鳴が夜十時頃の住宅街に響き渡る。


 男の部屋のベッド下など、ロクなものが無い。そしてその上、それを実の父に見られたとなれば、無理もなかろう。


  小次郎は放心して目を丸くさせながら座り込んだ。これに相応しい効果音と言えば、チーン。しかないだろう。



 父親は作業を辞め小次郎の身体を支えながら、



「せがれえええええええええええええ!」


 とアニメなら作画がここだけジョジ●風に変わりそうな勢いで叫んだ。


 繰り返し言う。夜の十時だ。夜の十時である。



 小次郎の家の外を通りがかった私服姿で黒いパーカーフードを顔が見えないように深く被ったダークマスターが通り過ぎ、悲鳴を聞いては髪で重たく隠されていないほうの赤い目で、小次郎の家の方を無機質な表情のまま見つめた。


 ポケットに手を入れたダークマスターは、イエスキリストの像がある植物園のような公園へ向かう。


 そこにノコノコと現れる黒猫。


「どうだ?お前が思い描いた理想は。地獄の裁きじゃ満足しないのだろう?」


 感情のこもっていない渋い声でダークマスターに問いかける黒猫。


 ダークマスターは、ポケットから悍ましい色の杖を取り出し、ボタンを押して一瞬で長く伸ばす。



「警戒しないでくれ。お前に悪意は抱いていない。あれは地獄の行政的な段取りだった。お前を更生させないと、転生することを許されない。そうなれば一生地獄の苦しみからは逃れることが出来ない。」


 黒猫は一切怯えるような素振りを見せないまま、静かに事実だけを伝える。



「余計なことをするな。お前は永遠の時をこの偽街で生きるつもりか。地獄の裁きを受け続けるのが転生への最短ルートだったろうに」


 多弁な黒猫に苛立ちを覚えては、ダークマスターは片目の瞳孔を開き、ポケットから取り出した青色の無限銃を黒猫に放つ。


 黒猫は瞬時にそれを避けた。


「無駄に罪を重ねる気か?業は来世に強く影響する。俺はただお前に自分を見つめ直してほしい。更生して欲しい。」


  黒猫の言い分に、ダークマスターは「死神さえいなければ殺しなんてしなかったさ。」と答える。




「俺の不幸のはじまりは全部死神が来た事にある。それとも、俺の大切なものが目の前でどれだけ失われようと耐えろって言うのか?そもそも俺は本来更生する必要すらなかったはずの人間だ。無理矢理殺しをさせられたに過ぎない。たまたま死神が寄ってきたばかりに人生を破壊された挙句拷問までさせられて。誰よりも愛している人からは引き剝がされて。お前らが俺の人生に絡んで来なきゃ罪の一つも無かったと言うのに。嫌われて、蔑まれて、恨まれて。お前たちこそどれだけ俺の人生を邪魔すれば気が済むんだ。俺は俺のやり方で裁きを受ける。お前ら外道に裁かれる気など更々無い。去れ。お前らにこの桃源郷に近寄る権限など、無かったはずだ」


 ダークマスターが黒猫を睨む。


 黒猫は呆れて、「まったく。」 と溜息を吐いた。


「地獄、そして死神の力をナメて貰っちゃ困る。結界もたいして張られていないただの浅い意識の中に侵入する事ぐらい朝飯前だ。俺はお前の動向を監視しに来た。ダーククイーンもそうだ。ダークマスター。お前はこの世界の真相にキャラクターたちが辿り着くヒントを至るところにちりばめているようだが。彼らがお前を裁いてくれるとは限らない。それでもこの世界を繰り返すのか?確実な転生が見込める地獄の刑を拒み、重複した意識の中だけで彷徨い続けるのか?まるで浮遊霊だな。死して尚も死にきれない。神にも悪魔にもなれない無様な人間。嗚呼、もう人間でも無いか」


 黒猫の言葉に、「これ以上俺のことを嗤ってみろ。次は本気でお前をハチの巣にするぞ」 とダークマスターは返す。




 黒猫は、「はぁ。お前こそ自分の意識に気を付けろ?此岸に未練を抱いたまま果てしなく彷徨い続ければその魂はいずれ泡となり消滅する。さすればお前は地獄で裁きを受けることも、天国で魂を磨くことも。此岸で新しい学びを得ることも、すべてが許されない無の領域にお前は消えることとなる。」


 黒猫はそう言うと、「忠告はしたからな」と続けダークマスターがいる公園からさっと姿を消した。



  紫の芍薬が、月に照らされながらゆらゆらと風に靡く。


隣にある教会の十字架と、満月が重なり、どこかで見たことがあるような光景を、創る。


 夜の街並みは、ダークマスターにとって苦手なものだった。自分の過ちの象徴だから。


 月も、夜の空に浮かぶ灰色の雲も。


ダークマスターにととっては自分をただ黙って見下ろすだけの、虚空。



本来ダークマスターが欲しかったのは、肯定。


自分がしたことすべてを許してしまうような都合のいい言葉。


 だが、それも原因のひとつ。都合のいい言葉を吐いた女もいた。


だがここまで腐りきってしまったのはその女に盲目になってしまった自分のせいでもある。


 ダークマスターは如月市を歩く。


ただ、歩く。


心が腐って悪役に成り果ててしまったのなら、


残虐な方法の拷問では無く、己の正義を提唱し真っ直ぐな魂を持つ人間から裁かれるべきだと。


「こんなの…どうしようもない」


  月を仰ぎながら呟くダークマスターの声が、哀しく街に零れた。

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