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『宇宙警察L戦士~セルフで異世界構築してラスボスとして君臨してみた~』  作者: ミタラリアット


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二十七話『暗闇だって無ければ光が輝く理由が無くなるってもんだ。たとえどんなやつでも存在する理由はあるんだよ。』


 コンコン。指令室のドアを誰かがノックする。



『入れ』



 ダークマスターは指人形たちを片付け、ノックした何者かを部屋へと招き入れた。



「失礼します」



 入ってきたのは、ムクロ。ムクロは俯きながら、小さな声で呟き中に入った。



『用はなんだ』



 とダークマスターが言うと、ムクロは、



「ダークマスター様。なぜ戦士たちがこれほどいる中で私に称号を与えるのですか」と疑問を呈する。


 ダークマスターは、『私はお前に任せたい。それだけの理由ではダメか』とムクロに尋ねた。


 ムクロは光の無い死んだ魚の目をダークマスターに向ける。


「私には才能が無い。他人ひとと比較して長所も、自信も、経験も無い。ただ出来ることなら断りたかった。それだけ」と述べた。



 ダークマスターは、、ふッと顔全体を覆い隠す仮面の下で笑みを浮かべる。



『お前にはソードに匹敵する素質がある。お前は自分の長所が無い。と思っているようだが、お前には闇がある。誰にも負けない闇。それこそ私が見込んだだけの素質。お前の闇は、お前が望むならいずれ世界を覆う事だって出来る。本来のお前は、強い。それだけは確実に言える。私は幾度となくお前たちの暗躍を見てきた。知っている。お前が只者ではない事ぐらい。ムクロ。どれだけこの小さな組織の中で敵が増えようと、私はお前の味方だ。光は人々を照らす希望。闇はなかなか理解されるものじゃないが、裏返せば人々に休息を与え、その人物の【意味】や【使命】を深く彩っていく。光に照らされてばかりで闇の無い人間は幼い。故に大きな間違いを犯す。かつての私のように。』



 ダークマスターの言葉を、ムクロは静かに聞いた。



「闇もまた、意味あるもの…」



 ムクロがダークマスターの言葉を繰り返すと、ダークマスターは頷く。


『お前は私に仕えなさい。それですべてが救われる。』


 ダークマスターが優しい口調でムクロに言うと、ムクロは、「…頑張ってみます」と頭を下げ、部屋から出て行った。




 ダーククイーンは、頃合いを見て、ダークマスタ―に、「随分と優しいんだな」と口元だけで微笑む。


『まさか。関心が無いだけだ』


 ダークマスターの返事が気に入らなかったのか、ダーククイーンは、「ふうん?」と返事を聞き流した。


 ダーククイーンの耽美な琥珀色の瞳が、こちらへ向かう。


それはそれは心情を探るような視線だった。ダーククイーンの長い緑髪が揺れる。



「ダークマスター様。」



 ダーククイーンが目の前の男の名を呼んだ。



『なんだ』と問うダークマスター。


 ダーククイーンは、「終末が迫っている。お前は満足しなければまた繰り返すのだろう?無意味な連鎖を。平行世界に意識を取り残してまで、何重にも重なった夢を見続けるのだろう?干渉する側の事も少しは考えてくれ。私はお前のヒーローごっこに付き合っているんだ。第三の戦士、第四の戦士と現れては、お前が敗北する確率だってあがる。やはり二桁の頃ぐらいのように、ブラックとホワイトを先回りで倒すほうが理にかなっていたんじゃないか」と語った。


ダーククイーンの言葉に、『そいつは違うな』とダークマスターは否定する。


『確かに私も最初はレッドの存在をはじめから消す気でいた。今でもまだ、すべてのはじまりはレッドのせいだと思う節もあるが、私の一番の望みはレッドが数多の苦難を乗り越えながら私のもとへたどり端き、私の過ちを正面から裁くこと。でなければまた永遠の時間に私は取り残されてしまう。最愛の女神にももう、会うことは叶わない。ならば、ならばせめて美しく最期を迎えたい。あんな野蛮な拷問は苦痛でしかない。それが私の美学。何よりも大切なものを私は失った。命のすべてを捧げた人を。私の領域から見失ってしまった。』


  ボイスチェンジャー越しの声に、次第に涙ぐんでいるような、そんな吐息が混じっていく。


 自分が壊した男の言葉を、ただ静かに聞くダーククイーン。



 ダーククイーンは少し後悔さえ覚えた。


  だがダーククイーンは使命と男の人生を天秤にかけた時、使命のほうへ軍配が上がるような非情さを持った女だった。


 運命を書き換える地獄の使者と、運命に呑まれた悲劇の死者。


本来の世界の因果から外れた、二つの魂。亡者。


 仮面の下に隠された男の知られざる素顔は、何に想いを馳せるのか。


  恐らく、答えはこの男が自分の生命の在り処よりも執着し、異常なまでに愛した一人の女。女神。


  純粋無垢の夢のような人。華麗。


この世の全ての【美】を語るには、彼にとってはたった一人で充分だった。



 黒髪。ロングヘア。当時は自分より背丈が高く、強さ、逞しさ、女性としての威厳を持ち合わせ、


尚且つ狂気を纏い、自分と同じ【殺し】の罪の十字架に身体を張り付けられた一人の少女。


 それはダークマスターにとっての存在理由で、命で。希望で。唯一無二の華。


 喩えるなら初夏の風に揺れる一輪の百合。逢えない時間さえも、その華の凛とした残り香が強く漂う。


 ダークマスターは、『私はどうするのが正しかったんだ』と切なく呟いた。


 ダークマスターの嘆きに、ダーククイーンは哀れみの目を向けた。

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