二十五話『諦めなんよ。希望ってモンは後から顔を出すって母ちゃんが言ってた』
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「いやああああ!」
喫茶の外では行きかう人々が皆悲鳴を上げて泣き崩れるように倒れていく。
「私の推しがコンプライアンス違反で退社のお知らせ…!」
ギャルの女の子がスマホを投げ飛ばして両手で顔を覆い隠しながら泣き叫ぶ。
金髪のユニフォーム姿の男子高校生が「部活で試合に出たことないのは俺だけ!ついたあだ名は万年球拾い!スタジアムの声援王子様!」と顔を上げながら不満を吐く。
幼稚園児の女の子さえ、「ママが毎日パパを変えるから誰がパパかわからないよー!」と大号泣した。
その母親も、「男選びは真剣勝負なのにどいつもこいつも女に対して偏見を持ってるやつばかりッ!年収一億のイケメンかインフルエンサーじゃないといやああああああ!」と絶叫した。
人々からマイナスエネルギーを回収していくダークフレイム。
そのマイナスエネルギーから怪物が渦をまいて生成されていく。
「グオオオオオオオ!」怪物、ラビット・フレーバーが一体、二体、三体、四体。
「ッチ!江藤お前もうクロウサギに捕まったまま帰ってくんなよ!お前のせいでこうなってるんだから!」
と唐突の失言をする光太郎に、江藤は「仲間を売る気ですか⁉」と驚く。
大佐は、「くッ…」と歯を食いしばりながら、自分がどんな行動が出来るかを考える。
「春華ちゃん!俺たちはとりあえず安全な場所…」と言いかけるが、春華は「そんなの駄目!」と叫ぶ。
「せっかくスーパーレッドに会えたのに、せっかくヒーローたちの役に立てるチャンスが巡ってきたのに!ここで逃げる私じゃないわ!」
戦闘態勢を構える春華に、大佐は「でも!」と焦る。
焦る大佐に、怪物が砂をかける。「うわああああ!」吹き飛ばされる大佐。春華も頭に砂を被る。
光太郎は、「へいへい今日は地面タイプってか」と好戦的に笑うが、怪物に落とし穴を作られまんまと落ちてしまう。
「うわああああああ⁉」
突然の出来事に状況を理解できない光太郎。
「暗い!狭い!」と騒ぐ光太郎を覗き込みながら、
ハツネが「江藤に悪いこと言うからそうなるんやで!」と笑った。
「早く変身したほうがいい」江藤も先ほどの失言に多少の怒りがあったのか、光太郎のことは助けようともしない。
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腕を捲りユニバースカードリーダーを出現させる江藤とハツネ。
光太郎はしがみついて落とし穴から必死に出ようとする。
「待て!俺の!見せ場!」
光太郎が叫ぶ中、「バーニングフェニックス!」「フレッシュピーチサンシャイン!」と声を揃えて変身する江藤とハツネ。
赤い光とピンクの光が江藤とハツネの二人を纏い、刹那にして変身を終わらせる。
二人は落とし穴を避けながら怪物に近づいた。
光太郎は、「ユニバースランスロット!」と変身しようとするが、どうやら穴の中では宇宙への通信は通じないらしい。
「ちくしょう…!」と悔しがる光太郎。
大佐が、「光太郎くん!」と大声で光太郎の名を呼びながら助けようと飛び出すが、「バカッ!来るな!」と光太郎に叫ばれる。
地属性の怪物が、大佐がいる地面にも穴を開けた。
ピンクとレッドが、「ちょッ⁉」「お兄さん⁉」とそれぞれ声を合わせる。
「こうなりゃ屋根戦法だ!」とレッドは屋根に登る。
ピンクも、「よいしょ…」と民間の建物にしがみついて屋根に登った。
ピンクは「私がこいつの動きを止める…!」と言うが、
桜色の眠たそうな夢属性の怪物が、「ふわぁ…」とあくびをしてピンクに眠気を誘う。
「ピンク!」
意識を失い屋根から落下するピンク。 ピンクの変身は解除される。
レッドは「そんな…!」と目を見開く。
「僕が…最初に光太郎さんを助けていれば」と自分の非情を反省する。
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ダークフレイムは、「ふははははは!ふははははははははは!」と気持ちよさそうに高笑いをする。
いま戦えるたった一人の戦士は、「ダークフレイム…」と目の前の敵に憎悪を顕にした。
変身を解除されたハツネが眠っている地面に怪物が穴を開けハツネを落下させる。
ダークフレイムは、「いいのか?俺は本気だぞ。お前を殺して上でふんぞり返るうるせー奴を満足させれば、うるせー奴も隙を見せ殺す事だって出来るかもしれねぇんだ。そうなれば訳もわからねぇ奴に仕える必要も無くなる。美味い話だろ。てめぇ一人殺せば俺はすべての呪縛から解き放たれ自由の身になれるんだよ。あんな偉そうな得体も知れねぇやつに仕える気なんてさらさらねぇっての。なぁ、レッド。ヒーローごっこはやめないか。お前だって上がめんどくせぇやつなんだろ?さっき見捨てたのを俺は見たぞ。それに俺に対する憎しみ。お前にだってあるじゃないか。立派な悪意が。」
レッドの弱みに付け込みながら、言葉巧みにレッドを煽るソード扮するダークフレイム。
レッドは、「僕は…」と声を震わせる。
確かに、光太郎をあの場で助けられていたら、被害は今より少なかった。とダークフレイムに言われたことを気にするレッド。
迷いで動きが止まるレッドに、春華が「レッドー!レッド!頑張って!負けたらダメ!」と声援を送る。
「レッド!お願い!」
祈りのポーズをする春華を見たダークフレイムが、
「野郎共!」と怒号を上げ指を真っ直ぐ前に掲げながら怪物に指示を出す。
草属性の怪物が、春華の身体を棘のついた草で縛り付ける。「ぐぅぅぅぅぅ!」
春華の服は裂け、白い下着に血が滲む。ダークフレイムは「愚かだな。こんな何もできないヒーローもどきに声援を送るなんて。」と春華を見下ろしながら馬鹿にする。
地面に埋もれている大佐は、「くそッ!くそッ!」と悔しそうに陥没した道路を必死によじ登ろうとするが、当然地上にたどり着くことはできない。
ダークフレイムに馬鹿にされた春華は、全身からポタポタと血を流しながら、
「私も…変身したい!」と目を瞑って痛みに苦しむように叫んだ。
「私も、レッドと共にありたい!私に、そんな力があるなら…!どうか、どうか神様、私をヒーローに!」
痛みに大量の血を流しながら願う春華に共鳴して、春華の胸から青い光が現れた。ユニバースカードと、ユニバースカードリーダーが具現化する。
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ダークフレイムが春華の様子を見ている間に、「火車斬撃!」と炎を纏った剣を構えながら、
レッドはダークフレイムのほうへ飛び出していく。
春華は草の棘に刺されながら、ユニバースカードリーダーにユニバースカードを差し込んだ。
ダークフレイムは暗い赤色の剣に炎を纏いながら、レッドの剣に対抗する。
「無駄だレッド!弱いお前には何もできない!」
ダークフレイムの罵倒に、何者かに斬られ美しく舞い散る草や花の中から、
「いいえ!」と断言する人影が。
「人に対して弱いと罵るあなたなんかより!自分の正義を掲げ真っ直ぐな信念を持ち!それを一貫して抱き続ける。レッドさんのように強い人は他にいませんわ!そんな人に弱いなんて言うあなたのほうが、よっぽっど弱い人です!」
はっきりと言い切ったその人影は、草や花が地面を飾りつける頃に、ようやく姿を現す。
真っ青のヒーロースーツに、水色の剣を構える凛々しい立ち姿。
「美しき王者の高貴なる姿!スーパーブルー!荒波の力の元に!」ポーズを決めるブルー。
ブルーを見てレッドは「僕のファンが頑張ろうとしてくれているのに、うじうじしていられないよ」と火車斬撃の力を強くした。
ダークフレイムも、「お前になんて負けない!」と暗い赤色の剣に炎を渦巻きながら対抗する。
ブルーは残る怪物たちに苦戦していた。
草の怪物はこちらに鋭利な棘のある草を飛ばしてくるが、
ブルーは水色の剣を酷使し自分が縛られないように耐える。
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光太郎は「なんで…なんで俺はこんなに…!」と瞳を涙で潤ませる。
途端、脳裏にパラパラ漫画のようにいくつもの映像がフラッシュバックする。
『失望した。お前では何も成せない。お前は何者にもなれない。お前は私の目的ではない。お前と戦おうと、何も生まれない。時間の無駄だ』
ダークマスターに冷めた口調で否定された瞬間。
目の前で小次郎がダークマスターに敗れた瞬間。
自身も痛みを与えられ苦しみに対しなんの報酬も生まれなかった瞬間。
光太郎は落とされるた地面の中で「うぐッ…」と喉から吐しゃ物が出そうになる不快感に、片手で口を覆いながら対処する。
同時に、脳震盪を起こしたかのようにグラグラと視界が揺れた。
「オグァァァッァ…」光太郎はすでに消化されて吐くものさえないような胃液だけの内容物を吐き出して、白い顔で気を失った。
一方、ブルーは怪物との戦いに苦戦を強いられていたが、持ち前の俊敏さで見事戦況を優勢にする。草属性の怪物を切り裂き、一体撃破。
だが地属性の怪物がドリルを腹から出現させながら、こちらへ迫ってくる。
抵抗すれば、即落とし穴。
悩んだブルーは、飛び跳ねた。
それは軽やかに、龍が舞うように。
喩えるなら、青龍。
ブルーは宙を舞いながら、水色の剣で地属性の怪物を頭部から突き刺す。
そしてトランポリンのように反発して再び宙へ浮かんでは、
「悪者には天罰を与えます!」と言いながら地属性の怪物を真っ直ぐ、水色の剣で貫いた。撃破。
既に二体の怪物を撃破したブルー。ダークフレイムは、「チッ」と舌打ちする。
残るは夢属性の怪物と、その頭上にちょこん。と可愛らしく座る一回りほど小さな夢属性の子怪物。
ブルーは水色の剣を構えながら、その怪物にどう立ち向かうか、思考を巡らせた。




