第8話 契約成立!
ドスケベフレンド?
まるで聞きなじみのないワードが出てきたんですけど……。
「存じ上げない言葉なのですか、何ですか、それ?」
「私と平谷君の間ではドスケベし放題、そんな関係性を結ぶのよ。ドスケベなことをしていいし、ドスケベな発言もしていい。それならば、私たちのたまりにたまった性欲を満たすことが出来る。双方にとってWINWINな関係性ではないかしら?」
「セックスフレンドみたいなこと?」
「一応先に言っておくと、セックスは禁止。だからセフレとは違うわ。『こいつ、さっきあんなこと言って、今更何言っているんだ』と思われるかもしれないけれど、セックスとなると流石に話が別よ」
「そ、そりゃあ、勿論そうだとも。セックスは恋人同士がするものだからな、普通。ははは」
「なに、その反応? もしかして、期待させちゃったかしら?」
「……すみません。ちょっと期待しちゃいました」
「本当にドスケベなのね、平谷君は。まあ、とにかく、セックスは禁止。お互いのために初めては好きな人とする方がいいだろうし」
俺は見逃さなかった。
このセリフの違和感に。
「うん? 今、お互いって。つまり、名月さんは処女?」
「今の言葉だけで、それを見抜けるとは、やはりドスケベね、平谷君」
ふーん。
こんなドスケベな名月さんは、実は処女と。
良いことを聞いた気がする。
「というか、セックス“は”禁止ってことは、逆にそれ以外は良いの?」
「それはシチュエーションにもよるわね。そうね……ざっくり言うと、『てんさず』でやれる範囲なら」
「なるほど……」
『天からの授かりもの』を読んでいたのはわりと前だから、年齢制限はなかったはず。
だから、直接的な表現は避けていた記憶はあるけれど……。
でも、結構、過激なことやっていたぞ、あの作品。
PTAに目を付けられたなんて話も……。
セックスは禁止とはいえ、割とやれる範囲は広いぞ……。
そんなドスケベを好きなだけしていいって、いくらなんでも神すぎるだろ……。
あんなことやら、こんなことやら、自由自在……。
じゅるり……。
なんだか興奮して、身体が火照ってきた。
「とはいえ、ただ学校でドスケベなことをしていては、風紀的によろしくない。槇原さんたちに目を付けられる可能性があるし、何ならPTAにも目を付けられるかも……」
「それは……そうだよね」
「だからこそ、『ラッキースケベ』を使うのよ」
「ラッキースケべを……?」
名月さんはラッキースケベを熱心に語り始めた。
「そう。ラッキースケベ。ラッキースケベとは、日本特有の恥じらいの文化と、それでもドスケベなことをしたいという日本人のドスケベ魂が交錯して生まれた、古の時代より紡がれた、日本が産みだした最大の発明なのよ。そんなラッキースケベに昔から憧れがあってね」
「ラッキースケベに対する情熱がありすぎる……」
「ラッキースケベならば偶然で片付けられるから大して問題にならない」
「そのラッキースケベをワザと仕掛けるということか。さっきみたいに」
「そうよ。さすれば、あくまで自然な流れでお互いの性欲を満たすことが出来る」
「なんという悪魔的な発想……!」
「どう? 勿論、同意が得られなかったら辞めるけど。ほら、そういうのって、同意が大事じゃない?」
そんなの……。
嫌なわけがないだろ!
女子と代償無しで、ドスケベなことが出来る、だなんて、昇天するほど嬉しい。しかもラッキースケベという、ドスケベな創作物でしか見られない夢のようなイベントを堪能できるなんて。
しかも、こちとらドスケベを封印されて、性欲の限界を迎えている。
返事は決まっている。
「やるよ。きみのドスケベを受け止められるのは、俺しかいないだろ? このドスケベ平谷しか、ね」
「カッコいいセリフを言っているようだけど、言葉が言葉だけに、締まらないわね」
「仕方ないだろ、それは」
「契約成立ってことかしら?」
「うん、よろしく」
「勿論、他の人たちには内緒で」
「当たり前だよ」
こうして俺は名月さんと『ドスケベフレンド』になった。
ドスケベなことしか取り柄が無いモブの俺に、こんな人生が待っているなんて。
だから、人生は面白いのかもしれない。




