第6話 まさかのカミングアウト
「ワザと……ラッキースケベをした……?」
「そうよ。ご名答」
わ、訳が分からない……!
ドスケベは女子が忌み嫌うもの。
でも名月さんは自らドスケベを……。
ダメだダメだ、意味が分からない。
それに、ずっとドスケベを封印していた身体が、最高純度のドスケベを味わったことにより、オーバーヒートしている。
例えるなら、ずっと陸上にいた魚が、突然水を与えられたような感覚。
顔は火照り、身体が痙攣をお越し、俺のエクスカリバーの解放度が上限突破している。
「凄い反応……本当に平谷君ってドスケベなのね♡」
名月さんはまるで生き別れた双子の妹を見つけた時みたく、嬉々とした表情で目を輝かせている。
もう、いい。ここまで来たら、嘘なんて無意味。
正直に言うしかない。
元々、クラスでは好感度最底辺なんだ。
今更、失うものなんてない。
「そうだよ! クラスの連中が言っている通り、俺はドスケベなんだ! どうだ? 幻滅したか?」
捨て身、というかほぼほぼ自滅。
学校生活を、いや人生そのものをドブに捨てたような最低最悪な発言だ。
「やっぱり……良かったわ」
名月さんは、恍惚とした表情でそう呟いた。
良かった……?
何が良かったんだよ……。
「とりあえず、作業終わったことだし、ここを出ましょうか。話はそれから」
「そうしよう」
準備室にいる司書の先生に挨拶して、俺たちは図書室を出た。
学校の昇降口までたどり着くと、上履きから靴に履き替え、校舎を出る。
俺と名月さんは生徒がほとんどいない、校庭の隅っこにあるベンチに横並びで腰掛けた。
ドスケベを封印していたせいで、女子と横並びで座るだけで体が熱くなる。
どうやら俺の身体はとっくに壊れていたらしい。
「そういえば、話の続きね」
「うん」
今はそれが最優先。
この子の目的は一体、何なんだ。
彼女のことを信じたい気持ちが強いが、数々の奇行を目の当たりにした今、若干の恐怖を抱いているのも確かだ。
僅かな沈黙の後、彼女は打ち明ける。
「私もあなたと同じなのよ」
「同じ……?」
「私も平谷君と同じ、ドスケベなのよ」
「は……え?」
今、彼女はなんて……?
彼女の信じられないカミングアウトに、俺の頭はフリーズした。
あのクールで真面目な優等生の名月さんが、俺と同じでドスケベ……?
あ、ありえない……。
そもそも名月さんは女子だぞ。
ドスケベは女子が最も忌み嫌うものの一つだ。
現に俺は自分のドスケベを制御できなくて、クラスの女子に嫌われてしまったし。
……待てよ。冷静に考えろ。
こんなクールで真面目な優等生がドスケベであるはずがない。
そんなものは男の妄想にすぎない。
これは確実に罠だ。
甘い言葉で釣って、俺を今度こそどん底にまで突き落とすきだ。
そうだよな。普通に考えて、面識のない名月さんが俺を委員会に推薦するはずがない。
これはクラスぐるみで仕組まれた大規模な罠。主犯格はやはり槇原あたりだろう。
そう、易々と罠にハマってたまるか……!
「俺はもう騙されないぞ……」
「どうしたのかしら?」
「名月さん、嘘はもういいよ」
「嘘……?」
「どうせ、結局あんたも槇原マキの差し金で、俺をハメようとしているんだろ? 『自分もドスケベ』と味方アピールして、俺を油断させて、後で槇原マキに報告するんだろ? 俺が悪かったのは分かっている。女子たちに関わらないようにするからさ、もうやめてくれよ。お願いだからさ……」
必死の訴えは果たして、彼女に届いたのだろうか。
「信じてほしいわ。私は決して嘘なんかついていない」
名月さんも一歩も引かず、至って真剣な表情で俺を見つめてくる。
嘘は……言っていないように見える。
でもやはり、あの一件以降、人間を信用できなくなっている。
確証が欲しい。何か彼女の言葉を裏付けるものが……。
「証拠は? きみがドスケベだという証拠が欲しい」
俺は名月さんを追い詰められた容疑者ばりに詰め寄る。
疑心暗鬼になって申し訳ない。
でも、これくらいしてもわないと、俺のトラウマはなかなか払しょくされない。
「……仕方ないわね」
名月さんは観念したように、自分のカバンをガサゴソと漁りだした。
取り出したそれは、いつも彼女が教室で読んでいる本。
名月さんはその本に付いているカバーを外した。
その本は……!




