↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/37

第5話 ワザとラッキースケベを仕掛けてきた?

「な……なんのことかなぁ……。俺、よく分からないや……」


 必死に白を切るが、それで誤魔化せるほど甘くないのは分かっている。

 おまけに、冷や汗ダラダラで目が泳ぎまくっている。

 これでは嘘がバレバレである。


「知っているわよね? 女性の胸を見る時の男の視線ほど分かりやすいものってないのよ」

「う……ぐ」


 完全に終わった。


 自身のドスケベにより、また同じ過ちを繰り返すなんて。

 現状も終わってはいるのだが、今度ばかりは本当に終わりだ……。

 下手すると、警察のお世話になるかもしれない。

 冷や汗ダラダラ、心臓バクバク、身体がブルブル。

 もう、人間としての尊厳が破壊されそうだ。


「大変申し訳ございませんでした! もう二度と見ないので、どうか、槇原マキにだけは言わないでほしい……!」


 プライドも何もかもかなぐり捨て、俺は一縷の望みをかけ土下座で懇願する。

 名月さんは頭を地べたに擦り付ける俺に対して、ゆっくりと近づいてきた。

 気分はさながら断頭台に向かう処刑人のようである。


「顔を上げてほしいわ」


 言われた通り、顔を上げる。

 怒りに満ち溢れていると思っていた名月さんの顔は、こちらの警戒を解くようなにこやかな笑みを浮かべていた。


 助かった……のか?


「許してくれるのですか……?」

「ええ、別に誰にも言わないから安心してほしいわ。それに槇原さんと話したこと無いし、知っていると思うけど、私、ぼっちだし」

「そ、そうか……」


 名月さんは口元を俺の耳に近づけてきた。

 彼女の吐息が、俺の鼓膜に伝わってくる。


「もっと、私のおっぱい見せてあげよっか?♡」

「~~~~~~~ッッッッ⁉⁉」


 い、今、な、な、な、なにを言ったんだ、この人……⁉


 囁くように呟かれたその文言は、鼓膜を通して俺の至るところの細胞を活性化させる。

 だが、ダメだ。そっちに行ってしまったら、後戻りできなくなる。

 ドスケベは罪。

 あの事件で、俺は思い知ったではないか。 

 トラウマが蘇ることで、熱情する身体が沈下する。


「そういうの、もういいから。俺はもう懲りたんだ」

「でも……身体は正直みたいよ」

「はぬん!」


 名月さんの視線の先には、理性による拘束を解き放ち、隆起した股間が……。

 彼女はまた俺の耳に囁くように、


「平谷君。本当はしたいんでしょ……ドスケベ」

「うぐっ!」


 なんという悪魔の囁き……!

 その通りだ!

 本当は、叶うならば、正々堂々とドスケベがしたいんだ……!

 でも、彼女はどういうつもりで言っているんだ?

 全く以て分からない。


 やっぱり、クラスが送り込んだ刺客なのか……?

 いや、本人がそれを否定しているし、俺は彼女から嫌なことをされたことはない。

 その実績は信じたい。

 でも、だったら、どうしてそんなことを俺に言うんだ?

 それに、そもそも彼女が俺を図書委員に指名した理由も分からない。

 あー、もう! 考えれば考えるほど、頭が混乱してきた!


「知っているわよ? 私のわがままおっぱいを好きなだけ揉みしごいで蹂躙して、挙句の果てに、その未使用のエクスカリバーを抜刀して、欲望のまま背後から一突きしたいのでしょう? あー、ほんとっ、ドスケベね♡」


 本当に何なの、この人……!

 こんな清楚な見た目をして、平気で下ネタぶっこんでくるのだが!

 ……というか、何で俺が童貞だって知っているんだよ!


「う……いや……あの、その……」

「……その反応、やっぱり童貞」


 こいつ、カマかけやがったのか!


「なあ、名月さん。仕事まだ残っているんだし、そっちをまず片付けようぜ」

「そういえば、ここ、ちょっと暑いわね」


 名月さんはワザとらしく、パタパタと自分のワイシャツの襟元を仰ぎ始める。

 第二ボタンまで開帳されているせいで、そのダイナミックな胸元がよりくっきり見える。

 悲しいかな、俺の視線はその胸元に釘付けにされる。


 くそっ!

 ドスケベは封印したのに……!

 どれだけ意志が弱いんだ、俺は……!

 気持ちを切り替えるべく、


「と、とにかく作業の続きをやらないか?」

「それもそうね。それでは作業に戻りましょう」


 うわあ! いきなり落ち着くな!

 この人の情緒、どうなっているんだ?


 ともかく、残った本を片付ける。


「これが最後の一冊だな。どこにしまえばいいんだ?」

「教えてあげてもいいけれど、せっかくなので自分の力でやってみてほしいわね」

「そうだな。えーと、これは小説だから……ここか!」

「正解よ。お疲れ様」

「おう。それじゃあ、また」

「ちょっと……待って」


 俺の腕がまあまあ強い力で、グイっと引っ張られる。

 振り返ると、なぜか名月さんは、態勢を崩している。

 そのまま名月さんは、デン! と、尻もちをついてしまった。

 そんな名月さんに腕を引っ張られているものだから、俺も体勢を崩してしまう。

 前から倒れ込み、そのまま彼女にダイブする形になる。

 すると、尻もちをついている名月さんが、倒れ行く俺の頭を引き込んでく。

 そのまま、俺の頭は名月さんの大きなおっぱいへと埋もれた。

 幸いにも、名月さんのおっぱいがクッションになり、ノーダメージで済んだ。


 ……が、そんなことはどうでもいい。

 名月さんのおっぱいが……!

 俺の頭に……!

 初めて女子のおっぱいが俺の身体の一部に触れた。

 なんて柔らかくて、ふわふわして、もちもちとした物体なのだろうか。

 まさに完璧で究極な物体。

 これこそ人体の神秘である。


 というか、このシチュエーションって……。

 俺が夢にまで見たドスケベの最高峰、ラッキースケベじゃないか?

 偶然の事象が起因して巻き起こるドスケベ。

 あくまで“偶然起こってしまった事象”のゆえ、罪に問われない。

 俺の、いや全男子の夢であり、希望。

 漫画やアニメの中だけの幻想だと思っていたのに、現実に起こりえるなんて。


 ……だが、俺は僅かな違和感を見逃さない。

名月さんは、ワザとらしく腕を引っ張り、何もないところで体勢を崩し、挙句の果てに強引に俺の頭を引き寄せた……。


 ま、まさか……。


「ほんと、ドスケベね、平谷君♡」


 “ワザとラッキースケベを仕掛けてきた”?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。