第29話 図書室で今までの振り返り
当番日は放課後も業務があるらしく、俺と名月さんは授業が終わってから、もう一度、図書室に戻った。
その日返却された本を、元の場所に戻す業務だ。
これは初日に名月さが教えてくれた業務でもある。
そのおかげで、初めてながらわりとスムーズに行うことが出来た。
「平谷君、初めてなのに、サクサク仕事できて凄いわね」
「名月さんがちゃんと教えてくれたおかげだよ」
「別に大して教えてないわよ。まあ、褒め言葉は素直に受け取っておくわ」
最後の一冊を本棚に戻す。
「これで終わりかな?」
「そうね、お疲れ様、平谷君」
「うん、お疲れ様、名月さん」
俺と名月さんは誰もいない図書室の長机に、向かい合わせで座る。
「そういえば、私たちの物語は、ここから始まったのよね」
「なんで、そんな壮大な言い方するんだよ……、まあ、そうなんだけどね。あの時はびっくりしたよ。おっぱい見ていたのがバレていたなんて。心臓が止まるかと思ったよ」
「どうして、あなたが被害者面しているのかしら」
「うぐっ……。誠に申し訳ございません」
「冗談よ。それより、私たち、前代未聞の友達関係になってから、結構経ったけれど、どう?」
「どう? って、唐突に聞かれても……」
「楽しい? それとも、嫌?」
「嫌なわけないだろ! 毎日、幸せに決まっているだろ」
「そう。それなら良かったわ。私がドスケベにうんざりされているのかと思って、ひやひやしていたの」
「そんなわけないだろ。ドスケベ平谷の異名を甘く見るな」
「そういう言い方をすると、急にカッコいいニックネームになってきたわね。なんか四天王の通り名みたいな」
「ふはっ。ドスケベ平谷なんて四天王が居たら、絶対陰で他の四天王に『奴は四天王の中でも最弱』『四天王の面汚しよ』って言われているだろうなあ」
「名前が既に汚れているものね」
「うるさい」
こうして軽いボケツッコミを挟みつつ、普通に会話するのも楽しいんだよなあ。
ドスケベを取り除いて、普通のフレンドでも、何の面白みもない平凡なモブキャラの人生を送る予定だった俺にとっては十分に幸せなんだよな。
「というか、むしろ、そっちの方こそ平気なのか?」
「えっ、私? どうして、そう思うのかしら?」
「いや……俺、たまに欲望に耐え切れなくなって、ライン越えする時もあるし……普通にキモいって思われてもおかしいって言うか……。別に普通に友達で居てくれるだけでも、俺にとっては十分幸せで……」
そんな俺の不安を和らげるように、名月さんはにこやかに笑った。
「何を言っているのかしら、平谷君。私はあなたに負けず劣らずドスケベよ。気兼ねなくドスケベなことが出来る人が見つけられて、私の心と身体は満たされているわ。ありがとう」
「ありがとう……だなんて、俺のセリフだよ。きみが俺の前に現れてから、俺の生きづらい人生を百八十度、変えてくれた。本当にありがとう」
「とにもかくにも、この関係は継続ということでいいかしら? お互いが不快に思ったら、この関係は破綻してしまうから」
「勿論、これからもよろしく」
まるでカップルや夫婦のような美しい会話に思えるが、ドスケベフレンドという傍から見れば品性下劣極まりない最悪な関係なのだ。
でも、そんな最悪な関係が、俺にとっては支えになっているのは紛れもない事実であった。
「ねえ、知っている? 放課後のこの時間の図書室、司書の先生は居ないし、生徒もほとんど来ないのよ」
「ゴクリ。それは、何とも……悦なことで」
「それだけで察するあたり、平谷君は本当にドスケベね♡」
真面目な話から一転、誘惑するような甘い声を出す名月さん。
どうやら、ドスケベモードになったようだ。
「二人きりだからラッキースケベを演出する必要もない。正々堂々とドスケベなことが出来る」
「そうか……!」
ヤバい……興奮してきたぞ。




