第25話 バレーボールはキケンがいっぱい
バレーボールの授業。
男女それぞれ3チームに別れて、男女交互に試合する。必ず男子同士、女子同士で試合を行うため、男女同士で試合することはないようだ。
つまり、名月さんが試合をしている時は、俺が見ることが出来て、俺が試合している時は、名月さんが見ることが出来るということだ。
だから、なんだって話だけど。
まずは二人が所属していないチーム同士の試合、ということで、俺と名月さんは二人仲良く体操座りして、観戦する。
距離が近いせいで、偶にお互いの肩が触れ合うと、思わずドキッとしてしまう。
「みんな、上手いわね」
「だよなあ。あんな風にできる自信ないなあ」
「平谷君は運動苦手?」
「あの柔軟体操を見たらわかるでしょ」
「夜の運動は得意なんでしょ?♡」
「ひえっ!」
また俺にだけ聞こえるように、艶めかしい声で囁く名月さん。
この会話から、下ネタに移行できるのはもはや才能だろ。
「私と夜の運動したい?」
「ひぎゃっ! …………し、したいです」
「正直でよろしい。でもダメ。今はこれで我慢なさい」
そう言うと、名月さんはスッと俺の方に手を伸ばした。
彼女の手は悪戯に俺の尻を弄った。
なぞるように、優しくなでられ、天に召されるような気分になる。
「な、何をしているの、名月さん⁉」
「どう、気持ちいい?」
「はい。幸せです」
「『気持ちいい?』って聞いているのに『幸せです』なんて答えるあたり、やっぱり平谷君はドスケベね」
そんな至福のひと時を過ごしていると……、
「次、女子AチームとCチーム」
名月さんが所属しているチームが呼ばれる。
「じゃあ、私行ってくるわね」
「うん、頑張ってきて」
俺はコートに向かう、名月さんを見送った。
ここだけ切り取ると、なんだかカップルみたいだよな。
バシーン!
そこには全く想像できない光景が広がっていた。
俺の目には、バシバシ、スパイクを決め込む、名月さんの姿が。
ボーリングでも思ったけど、名月さんって普通に運動神経が良いんだよなあ。
なんだか全てが並以下のモブキャラの俺にとって、遠い存在に見えてきた。
そんなことよりも、彼女の上半身から揺れる二房の巨峰から目が離せない。
ダイナミックな動きをするたびに揺れる、その巨峰に、俺は完全に釘付けになっている。
「うわっ……、おっぱいでけえ……」
「あんな子、うちのクラスに居たっけ? えっろ」
「ほら、名月夏輝じゃね? あの、クラスで本ばっかり読んでいて目立たない女」
「マジか……エッロ、やりてえ」
「何言っているんだよ、お前。彼女いるだろうが」
名月さんの存在に気づいた陽キャの男子共が、下世話なトークを展開している。
それを聞いて、なぜか俺の胸がモヤモヤする。
名月さんは俺だけのドスケベフレンド。他の男に取られたくない。
そんな身勝手な独占欲が支配していく。
「はい、そこまで!」
試合が終わったようだ。
名月さんの活躍により、彼女の所属したチームが勝ったようだ。
「名月さん、凄かったよ~」
「きみのおかげで勝てたよ。ありがとう~」
「……ええ」
運動が得意そうな同じチームの陽キャ女子たちに名月さんが祝福を受けている。
恥ずかしそうにしながらも、満更もでもない様子だ。
その様子を見て、寂しい気持ちになる。
同じ陰キャといえど、俺と彼女は違う。
嫌われ者の陰キャである俺とは違い、彼女は愛される陰キャなのだ。
そんなことを考えていると、試合を終えた名月さんがこちらに近づいてきた。
健康的な汗をかき、体操着が湿っているのが、なんだかエッチですね。
「ふー、疲れたわー」
「大活躍だったじゃないか。ボーリングの時も思ったけれど、本当に運動神経がいいんだなあ」
「褒められて嬉しいわ。さて、次は平谷君の番よ。いってらっしゃい」
「うん。いってくる」
「ええ。健闘を祈るわ」
ここだけ切り取ると、スポーツ作品のかっこいいシーンみたいだ。
女子の応援というバフもかかって、なんだか行けそうな気がしてきた。
結果はというと……。
レシーブは思った方向に飛ばないし、サーブはネットにかかるし、スパイクは空振りするし、もう散々だった。
「は~あ」
完全に意気消沈。
これがモブキャラである俺の残酷な現実だ。
名月さんに顔向けできない。
あとは、チームの皆に迷惑が掛からないように、出来るだけボールに触れないでおこう。
いつものネガティブ陰キャモードに逆戻りした俺は、目でボールを追わず、ただひたすら床を見ている。
その俺の愚行が災いした。
「あぶなっ!」
バシン――!
ボールが俺の顔面に直撃したのだった。




