第23話 ドキドキお着換え♡
昼休み。
いつもと違って、少し慌ただしい。
というのは、昼休みの後の五時限目が体育なのだ。
よって、いつものようにのんびり過ごすわけにはいかない。
昼休みの間までに男子更衣室で体育着に着替えて、体育館に集合しなければならない。
昼休みは40分。余裕を持たせるなら、20分で昼飯を済ませて、残り20分を着替え+移動時間にするしかない。
俺は大慌てで、昼飯をかきこむ。
「あら、平谷君。随分とあわてんぼうさんなのね」
すると、名月さんがこんな忙しい時間にも関わらず、呑気に話しかけてきた。
「そりゃあ、そうでしょ! 次の時間、体育だよ? というか、名月さんはもう昼飯済ませたの?」
「体育で動けるようにするから、昼飯は抜くわ」
「それは不健康すぎるのでは……?」
別に、そんなこと気にせず、好きなだけ食えばいいと思うのだが……。
「さて、相手してくれなさそうだし、私は先に行ってくるわ」
「うーい」
名月さんに一瞥もくれず、昼飯に全精力を注ぐ。
ようやく、食べ終わり、更衣室に向かおうとする。
……が、そこで、俺はあることに気づく。
「あれ……? 体育着は……?」
机の横に引っ掛けておいたはずの体育着が入った袋が忽然と姿を消したのだ。
いや、確かに今日は持ってきたはずだぞ。
誰かに盗まれたとかか……?
軽いパニックを起こし、顔面蒼白となる。
このままだと制服で体育の授業を受ける羽目になる。
そんな辱めはなんとしても避けたい。
とにかく、間宮先生に報告か……?
右往左往していると、机の上に四つ折りに畳まれたノートの切れ端があることに気づいた。
藁にも縋る思いで、四つ折りにされたノートの切れ端を開いた。
『あなたの大切な体育着は私が預かったわ。返してほしかったら、3階の国語準備室へ来なさい。ドスケベ怪盗ナツキより』
……何考えているんだ、あの人は‼
俺は紙に書いてあったことを頼りに、大急ぎで紙に記されていた国語準備室へと向かっていった。
国語準備室の前に辿り着くと、勢いよく扉を強引に開いた。
「俺の体育着をかえしてくれええええ! ドスケベ怪盗ナツキいいいい!」
扉を開いた先の光景を目の当たりにした俺は、自分の目を疑ったと同時に、綿密に仕組まれた計略であったことに気づいた。
「女の子のお着換え覗くなんて、平谷君はやっぱりドスケベね♡」
前かがみになってスカートをずりおろして、今まさに純白のパンツを晒した名月さんの姿があった。
「ひぎゃっ!」
反射的に扉を閉めた。
……そういうことか。
この女子の着替えを覗くという、原点回帰の超王道ラッキースケベを演出するために、体育着を盗み、俺を自然にここへ誘導したってわけかよ。
「閉めないでほしいわ」
扉を開けて廊下に出る名月さん。
なんと、パンツ姿のままで。
「せめてズボン履いてから出てきてくれ! 誰かに見られたらどうするんだよ!」
「それもそれで興奮するわね」
そうだった。
この人はとっくに末期患者だった。
「とにかく、入ってくれ」
「パンツ姿の女の子と同じ部屋に入るだなんて、平谷君ドスケベ♡」
「きみにだけは言われたくない!」
パンイチド変態女子には目もくれず、国語準備室の机に置いてあった自分の体育着をさっさと回収する。
「待って、どこへ行く気なの?」
「男子更衣室に決まっているだろ」
「時間を見てごらんなさい」
「うげっ」
国語準備室に立てかけている壁時計を流し見ると、時計の針は体育館に集合する時間の十分前を指していた。
「ここから男子更衣室は逆方向よ。間に合わないんじゃない?」
「どうしろと……」
「ここで着替えるしかないのではないかしら?」
名月さんは意地悪く、舌をペロリと出している。
やはり、ここまで計算していやがったのか。
どうやら、俺に降りかかってくるラッキースケベはこれでは終わらないらしい。
「仕方ない、か」
便所で着替えてくるなど、やりようはいくらでもあったが、ここまで緻密な策略を企てくれた(ラッキースケベの)名月さんに敬意を表し、ここで着替えることにした。
名月さんはようやく着替えてくれた。
とはいえ、ブルマ姿も十二分にドスケベである。
ワイシャツとスラックスを脱ぎ、パンツ一丁という余りに原始的な姿になる。
それを同じクラスの女子に見られるという異様な状況。
「ふーん。平谷君はボクサーパンツなのね。頭に刻んでおくわ」
「刻まなくていいわ。そんな世界一無駄な情報」
「ねえ、その可愛らしいお腹の下に生えている毛はギャランドゥ? それともちん毛?」
「口を閉じてくれ! そして、まじまじと見ないでくれよ、恥ずかしいから!」
女子に見られながら着替えるとか、最大級の恥辱だろ。
まあ、正直、興奮してしまっているが……。
すると、拍車をかけるように、名月さんが耳元で囁いてきた。
「ねえ、今、私と平谷君の二人きり。めちゃくちゃにしても誰にも気づかれないわよ♡」
「ふんが……!」
名月さんから発せられる破壊的な言葉。
それにより、俺の妄想は異次元的な加速をする。
名月さんをこのまま押し倒して、あんなことや、こんなことや……。
良からぬ妄想をしてしまったせいで、息遣いが荒くなり、身体中が熱くなる。
「ドスケベな想像をしてしまっているのね、平谷君」
「ど、どうしてそれを……?」
「身体はいつだって正直よ」
名月さんは視線を、俺の下半身方向に向ける。
彼女の視線の先では、俺のパンツがテントを立てていた。
「うわああ!」
咄嗟に股間を両手で抑える。
そんな満身創痍の俺に対しても名月さんは攻撃の手を緩めない。
「ねえ、その起動してしまったビームサーベルで、どこを貫きたいわけ?」
名月さんはその場で座ると、ワザとらしくM字開脚して見せる。
ブルマの裾から僅かに飛び出るパンツが余りにもイヤらし過ぎる。
股間の熱量が頂点に達しようとしている。もう、限界かも……。
「もう、五分前ね。そろそろ行きましょう」
限界に達しかけたその瞬間、名月さんは徐に立ち上がり、平然としたん顔で教室を出ようとする。
なんという、絶妙なタイミングでの寸止めなんだ。
完全に俺をコントロールしていやがる。
でも、助かった……。
危うく発射するところだった……。
こんなところで暴発したら、もう学校に行けないよ。
俺と名月さんは大慌てで体育館に向かった。




