第21話 俺vs母vsドスケベ美少女(カオス)
「平谷君の部屋に入る前、お母様とお話させて頂いたのだけれど、なかなかユーモアのあるお母様ね」
「あの母親をユーモアで片付けられるきみの度量の方がユーモアに満ちていると思うけど」
「根拠はないけれど、あのお母様とは気が合いそうね」
「そうだろうよ……」
「それと、色々と頂き物も貰ったわ」
「何をあげたんだ、あの人……」
「それは秘密よ」
「怖すぎるだろ……」
それだけ会話を交わすと、夕飯を食べに俺たちは階段を降りる。
食卓には、豪勢なローストチキンが並べられていた。
「ローストチキンなんて、うちにあったっけ?」
「今、買ってきたのよ」
「ええええ! わざわざ?」
「だって今日は記念日じゃないの」
だから、ちょっと時間かかっていたのか……。
ここまでやってくれてしまうと、嘘をついているのが途端に申し訳なってくる。
それは隣に座っている名月さんも同じようで、複雑な表情をしていた。
「(ごめんなさい、お母様には悪いことしてしまったわ)」
「(いや、仕方ないよ。俺も、ああ言うのが妥当だって思ったから)」
母さんに聞こえない音量でコソコソ話をしていると、
「ねえ、何の話しているの~? おばさんも興味あるな~。デートのプラン? おばさんが考えてあげよっか。まずは遊園地ね。そこでお化け屋敷に入って、自然と身体を密着させるの。盛り上がった頃合いを見計らい、公園のイルミネーションを見に行って、そこでキス。その後に家に連れ込み、セックスってわけ。どうかしら?」
「うぎゃあああ! うるせえええええ!」
前言撤回。
このセックスのことしか考えられない、性獣おばさんに申し訳ない気持ちなんて抱かなくてけっこう。
「食事中よ、大きい声出さない。ごめんなさいね、夏輝ちゃん。うちの子、デリカシー無くて」
「お構いなく」
「なんで、俺が悪いみたいになっているの⁉」
「それよりも二人に聞きたいことがあるの」
まだ、何かあるのかよ……。
この人が口を開くたびに、心臓が縮まる。
「それぞれの好きなところを聞かせてもらおうかしら」
まーた、嫌な質問をぶつけてきている。
「母さん。そんなことよりも、早く飯食べようよ。せっかく、ローストチキン買ってきたんだから」
俺はようやく、母さんが買ってきてくれたローストチキンにありつくことが出来た。
美味い……。ジューシーで食べ応えも抜群だ。
「話を逸らさないで。さあ、教えてもらおうかしら」
母さんは期待の眼差しでこちらを見ている。
辞めてくれ……。
この難解な質問に、名月さんが嬉々として答えた。
「はい。優しくて面白くて……そして、何よりドスケベなところです!」
何言っちゃってるの、この人おおおおおおお⁉
彼氏の母親に(彼氏じゃないけど)好きなところ聞かれて、『ドスケベなところです!(ニッコリ)』じゃねえんだよ!
それに対して、この母親はというと……、
「そうなの、そうなの! 並介ってすっごくドスケベなのよ! 昔ね、プールに行ったとき、やけに長い間、水に潜っているなあ、って思っていたら、お姉さんの水着を水中から見ていたの。そのお姉さんにぶつかっちゃって、色々とトラブルが起きちゃったの。懐かしいわね。ドスケベなのはお母さん譲りなのかねえ……」
この母親も何言っちゃっているのおおおおおおお⁉
『ドスケベなのはお母さん譲りなのかねえ……(しんみり)』じゃねえんだよ!
しかも、さらっと俺の黒歴史が暴露されているんだが!
やっぱり、この人たち頭おかしいよ(褒め言葉)。
「で、並介はどうなのよ……?」
「どうなの……?」
母さん、そしてなぜか名月さんまでもが、俺の答えに期待している。
これ、どういう答えが正解……?
無難に「優しいところです」と答えるべきなのか、ノリに合わせて「ドスケベなところです」と答えるべきなのか。
迷った挙句……。
「ど……いや、優しいところ……かな」
これがつまらないモブキャラの模範解答ですよ、っと。
……いや、言えないって。
彼女とされている人に好きなところ聞かれて、「ドスケベなところです」は言う流れだったとはいえ、言えないって。
まあ、「優しい(ドスケベなことさせてくれる)」と拡大解釈すれば、俺の言葉は何ら間違いではない。
「ごちそうさまでした。本日はお世話になりました。ありがとうございます」
「はーい。制服は後日、並介に学校に持ってこさせるから」
名月さんは玄関で自分の靴を履き、帰り支度をしている。
しかし、家に同級生の女子が来た、なんて、『ドスケベ平谷』と呼ばれた時の現状を考えると、夢にも思わなかった。
「ほら、並介も挨拶しなさい」
「うん。じゃ、じゃあな、名月さん」
「名月さん……?」
「あっ、間違えた。じゃ、じゃあね、夏輝ちゃん」
最後でミスるあたりが、モブ陰キャの詰めの甘さだよな……。
そんなどうしようもない俺に対して、名月さん……いやここでは夏輝ちゃんは、白い歯を見せて満面の笑みを見せてくれた。
「ええ、またね……並介君っ♡」
「いつでも来ていいからね、夏輝ちゃん」
何気ない母さんのその言葉の意味を、俺は身をもって味わることになることを、この時の俺はまだ知らない。
――その後、風呂場にて。
「このお湯に、さっき夏輝ちゃんが……。夏輝ちゃんの体液が……!」
気づいたときには、ドスケベ棒に手を伸ばしていた。
そうして無事、白い遺伝子たちが湯船に解き放たれ、夏輝ちゃんの体液が含まれたお湯と入り混じった。
……これ、もう半分セックスだろ。
そして、無情にも訪れる賢者モード。
ななな、なんて最低な事しているんだ、俺はあああああ!
最高の一日の締めくくりが、こんな最低な行為というのが、何ともドスケベクズ陰キャの俺らしい。




