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第20話 ドスケベ地味子は超絶美少女でした

「だ、だれ……ですか?」

「何を言っているのかしら? あなたのドスケベフレンド、名月夏輝じゃないの」

「めめめめ、名月さん⁉」


 今、目の前にいる美少女は、俺が知る名月夏輝の姿と随分違っていた。


 背中まで長く伸びている艶やかで整った黒髪。

 全てを吸い込みそうな黒曜石みたいな力強いくりくりの瞳。

 細く高い鼻梁、セクシーな口元、完全無欠のボディライン。

 テレビに出てくるモデルや女優並みの圧倒的なビジュアル……これが、俺のドスケベフレンドである名月夏輝さん……⁉


 ……いや、そうか。

 彼女は今、三つ編みを解き、眼鏡を外している。

 普段の名月から、それらを無くし、隠されていた部分の全てを上方修正すると……確かに、辻褄が合う。

 それに、その声とセリフ回しは、名月夏輝であるという何よりの証左。

 そもそも、俺の部屋に謎の美少女がノックするわけないし……。


 というか、可愛すぎるだろ……!

 可愛い部類に入るのは分かっていたが、眼鏡と三つ編みを解放するだけで、ここまで変貌を遂げるなんて……。

 誰がどう見たってS級美少女……!

 例えるなら、バトルアニメでよくある、作中では強すぎて普段は拘束具をつけて力を抑えているが、その拘束具を外して本来の力を得た時みたいな……。


「何よその顔。口をあんぐり開けて、お化けが出たような反応は……?」

「か、可愛すぎるよ……」

「えっ?」

「い……いやいやいや、何でもない」

「ふーん、興奮しちゃった?♡」


 そのタイミングで部屋の扉を閉める。

 完全狙っているだろ。

 おかげでめちゃくちゃ興奮してる!


「はい……興奮しています」

「へー」


 名月さんは四つん這いになり、グイっと自分の顔を俺の顔に近づけてくる。


「ちっか……ヤバい……! か、可愛すぎる……!」


 そのS級の顔面近づけられたら、ヤバいって……!


 しかも、俺の部屋で二人きり……。

 普通におかしくなっちゃうって……!

 少し顔を前にずらせば、キスできそうな距離。

 キスしてやろうか、いっそのこと。セックス以外はオッケーって話だよな。だったらキス……してもいいよな。


 キスしたい。その瑞々しい唇を俺の唾液で満たしてあげたい。

 理性の制御が効かず、本能が勝手に動く。

 雌を欲する雄の本能が、キスせんと、俺の顔を勝手に動かす。

 微動だにしない、名月さん。


 本当に、キスしちゃうよ……?

 その時、名月さんは徐に立ち上がった。

 彼女の膝が、俺のあごにクリーンヒットする。


「いった!」

「あっ、ごめんなさい。そんなつもりじゃ……」


 激痛で、情けなくゴロンと後ろに倒れてしまう。


「いや、名月さんは悪くない。これは邪な気持ちを抱いた俺に天罰が下っただけだから」


 そりゃあ、キスしようとしていたんだから、これくらいの罰は甘んじて受けるしかない。

 名月さんはにやりと不敵な笑みを浮かべ始めた。


「キスしようとしたでしょ?」

「うげっ……! バレテーラ!」

「『セックス以外はいい』って言ったけど、キスはちょっと審議よね」

「で、ですよねえ……ごめんなさい」

「いや、キスのこと明確に言っていなかったから、こっちのミスよ」

「流石に名月さんのせいじゃ……」

「平谷君って女子とキスしたことはある?」

「あ、あるわけないでしょ……」

「そうよね。私もよ。セックス同様、初キスはやっぱり好きな人とするべきだし、申し訳ないけどキスは無しにしましょう」

「そ、そうだな」

「まあ、ラッキースケベで偶然、唇と唇が重なった……というシチュエーションはあるかもしれないけれど」

「えっ、あるの⁉」

「ちょっとガッツキすぎ。本当に平谷君はドスケベね」

「ごめん」

「まあ、それはおいおい決めるとして……今は」

「ん?」


 急に名月さんは俺の部屋をキョロキョロと見渡し始める。

 ん……? なんだか、嫌な予感が……。


「さあ、ドスケベな本やディスクはどこにあるのかしら!」

「言うと思った」


 名月さんは眼鏡を装着して、意気揚々と捜索を始めた。

 どうして、そんなくだらないことで、血沸き肉躍っているんだよ。


「あれ? やけに冷静ね」

「いや、期待しているところ申し訳ないんだが、俺、そういうの全部、スマホにいれているから、本当に無いんだよ」

「はぁ、ガッカリね。これだから現代っ子は」

「きみもだろ!」


 これだけネット社会に感謝した日はないだろう。


「つまらないわねえ。……うん? この匂いは……」


 次に名月さんは四つん這いで歩きなが、クンクンと鼻を嗅ぎ回っている。その様はまるで警察犬のよう。


 ……今度はなんだ?

 なぜか名月さんは、俺の部屋のゴミ箱に近づいていった。


 ゴミ箱……?

 ま、まずい……!

 その中には……。


「丸まったティッシュが三つ。今日三発抜いたという容疑者の証言とも一致……。はは~ん、これは昨日のシコティッシュね」

「ご名答だよ! このドスケベ名探偵が!」


 最悪だあああああああ!

 昨日のシコティッシュ捨ててねええええええ!

 いや、仕方ねえよ。

 まさか、俺の部屋に名月さんが来るとは夢にも思わないじゃんか!

 というか、今俺、同級生の女子にシコティッシュ見られたの? しかも、まさにその同級生女子をオカズにしたシコティッシュなんけど。

 これどういうプレイ⁉

 名月さんはシコティッシュが捨てられているゴミ箱の臭いは嗅いでいる。


「う~ん、ザーメンの香り~」

「柔軟剤のCMみたいに言うな!」


 もう手遅れだよ、この人……。

 現在、名月さんの姿は眼鏡をかけているが、髪は降りしている。

 例えるなら、50%解放状態。

 これでも、超が付くほどの美少女なのに、こんな奇行をしているのだから脳がバグる。

 そんなハチャメチャなことをしていると、下の階から母さんの声が聞こえてきた。


「セックス中、ごめんなさーい! ごはん出来たわよー。セックスが終わったら降りてくるのよー」 

「してねえよ‼」


 同級生の女子が居る時に、セックスとか言うのやめてくれよ……。


「お母様、セックスはしていないので、今、行きます~!」

「それに乗じてきみもセックスって言わなくていいから!」


 なんでこの人たち、こんなところでフュージョンしているんだよ……。

 母親と同級生の女子がセックスって言い合っているのを聞く、俺の身にもなってくれよ……。


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