第18話 家にドスケベ女子が……!
「で、どうなのよ? 平谷君はこんなずぶ濡れの女子を放っておくほど、薄情な人なのかしら?」
そうは言いっつ、お決まりの「計画通り」と言わんばかりの、したり顔。
まままま、まさか……!
俺の家に行くところまで、計画していたというのか……!
「俺が持っているのは小さい折りたたみ傘だからどうしても濡れてしまう。名月さんはそこまで見越して……?」
「知っているかしら? お家が一番ドスケベなのよ?」
ふわああああああああああ……!
やっぱり、ここまで完璧に策略を練っていたんだ…………!
恐るべき、名月夏輝。
時代が時代なら、途轍もない軍師になっていた気がする。
そりゃあ、女の子を家に招く、だなんて夢にまで見たシチュエーションだけど。
今はマズい……。
だって、この時間は俺の母さんが家に居るんだから……!
『本当に彼女が出来たのなら、必ずうちに連れてくるのよ』
あの母さんと名月さんを会わせたら、色々とマズい……!
絶対に厄介なことになる。
俺と名月さんのいびつな関係は絶対に口外してはいけない……。
「平谷君? 何、固まっているのかしら?」
とはいえ、ずぶ濡れの女の子を、そんな私的な理由で断っていいわけはない。
もう、どうにでもなってくれ!
「行こう、俺の家」
こうして俺は名月さんを家に招待することになった。
自宅の玄関前。
ついインターホンを鳴らすのを躊躇ってしまう。
名月さんを目の当りにしたら、母さんがどんな反応を示すのか、想像するのも恐ろしい。
「何をしているの? 早く、入りましょう」
「あの……実は……家に母さんが居るんだ」
「そうなのね。だったらご挨拶しないと」
「ちょちょちょ、ちょっと!」
ピンポーン。
渋る俺の代わりに、名月さんは何のためらいもなくインターホンを押した。
「はーい、お帰りー。雨降られなか――」
玄関から出てきた母さんは、文字通り固まっていた。
「お、お帰り……」
「へへへへへへ、並介が……彼女を‼」
想定通りの反応、どうもありがとう。
じゃなくて!
「違うよ! ただ委員会が同じで――」
「お世話になっております。並介君の彼女の名月夏輝と申します」
何、言っちゃってるのおおおおおお⁉⁉
「(ちょちょちょ、名月さん⁉ どうして、そんな嘘を⁉)」
「(だったら正直に私たちは『ドスケベフレンド』です、とお母様に言うわけ?)」
「(いや、それは……さすがにヤバいだろ……)」
「(『彼女』って言った方が、分かりやすいじゃない)」
「(た、確かにそれはそうか……)」
雨の中、玄関前で密談を交わしていると、
「二人ともビショビショじゃない! ほら、早く、入りなさい!」
こうして母さんに招かれ、名月を俺の家に連れ込むことになった。
「ただいま」
「お邪魔します」
自分の家に帰るという一番のリラックスタイミグであるはずなのに、なんでこんなに緊張感が漂っているんだ?
それもこれも、名月さんが彼女なんて言うから。
……まあ、状況的に仕方がない嘘なのは分かっているけど。
とにもかくにも、母さんの前では名月さんのことを彼女として扱わないといけないってことだよな。
なんだ、このプレッシャー!
彼氏のフリをしないといけないってことだよな?
そんな高度なこと、非モテドスケベ陰キャ童貞モブの俺に果たしてできるのだろうか?
いささか不安である。
「とりあえず、えっと……夏輝ちゃんだっけ? お風呂、入ってきて。着替えは……ごめんね、おばさんのものしかないけれど。用意しておくから。並介は後でいいわよね? こういう時はレディーファーストだから」
「う、うん」
「すみません。では失礼します」
そうか……!
名月はこれから俺の家の風呂に入るのか……!
その後に俺がその風呂に入る……!
名月の体液が混じった風呂に、この後俺が……!
じゅるり……。
アカン、興奮が止まらない……!
「じゃあ、入ってくるわね。並介君♡」
なななな、名前呼び――⁉
そそそ、そうだよな。
ここでは俺と名月は彼氏と彼女だもんな。
「お、おう。ゆっくりしていってね、なな、夏輝ちゃん」
「うん♡」
思わず名前呼びをしてしまった。
めちゃくちゃ恥ずかしい……。
扉越しの脱衣所で、布がこすれる音が微かに聞こえる。
この扉の向こうには、裸の名月さんが……!
なんというドスケベ……!
「さぁて、並介。詳しく、話を聞かせてもらおうかしら」
目の前にはニコニコしながら立っている母さんの姿が。目がガンギマっているのが怖いのだけど……。




