第17話 ドキドキ相合傘♡
「どうだった? たくさん、出たかしら?」
「お、おう。そりゃあ、もう」
「ピンは倒れたみたいね。ボーリング成功ってことで♪」
「ボーリングって何だっけ……?」
ボーリングを2ゲームしたところでお開きとなった。
球や靴を片付けながらするトークにしては、余りにも品性下劣すぎるが……。
「しかし、昨日三発抜いたはずなのに、また出るなんて、本当にドスケベなのね、平谷君」
「しょ、しょうがないだろ……。ドスケベ童貞陰キャモブには刺激が強すぎるんだよ……」
「そう。私のことを魅力的に感じてくれて良かったわ」
「そりゃあ、そうだろ……!」
「ど、どうしたの……?」
ヤ、ヤバい……。
これじゃあ、まるで告白みたいじゃないか……!
なんか気まずい空気が流れているし。
「何でもないって……! とにかく帰ろうぜ」
「午後五時半……ちょうどいい頃合いね」
「頃合い? 何のことだ?」
「何でもないわ。さあ、帰りましょう」
意味深なことを呟く名月さん。
一体、何を考えているんだ……?
その答えは、意外にも早く判明する。
ボーリング場の外に出ると、ざあざあと雨が降り注いでいた。
「うわっ、雨降ってるじゃん!」
「そうね。雨、降っているわね」
雨を目の当たりにしても、妙に落ち着いている名月さん。
「雨、降るの、知っていたのか?」
「ええ……まあ」
とは言っているが、傘は持っていないように見える。
どういうことだ……?
「折りたたみ傘、持ってきていたから助かったけど」
リュックに常備していた、折りたたみ傘を取り出す。
「平谷君」
「うん?」
「私、傘忘れちゃったのよね~、隣とかって空いていないのかしらね~」
なぜか棒読みをしている名月さん。
様子が変なので彼女の方を振り向くと、なぜか、したり顔をしていた。
ま、ま。ま、まさか…………。
「今日は午後五時頃から雨予報。平谷君は折りたたみ傘を一つしか持っていないことは把握済み」
「全て、計算に入れて……」
「雨が降る午後五時台まで屋内の施設で時間を潰せば、必然相合傘をせざるを得ない状況へと」
「す、凄すぎる……!」
だから電車でスマホを難しい顔で眺め、屋内で時間を潰すには絶好のボーリング場を指定していたのか……!
やっぱりガチモンの天才だ、名月夏輝は……!
どこまでのドスケベを重ねれば、この境地に辿り着くんだ……!
「ということで、入れてもらえるかしら」
「どどど、どうぞ」
「お邪魔します♡」
「~~~~~ッッ‼」
折りたたみ傘というものは、普通のそれと比べれば一回り小さい。
一人でも入るのがやっとなのに、二人なんて入ればギチギチになるのは当然なわけで……。
小さな折りたたみ傘を分け合っている俺と名月さんの距離は限りなくゼロ。
名月さんの太ももや腕、そして彼女ご自慢の柔らかなマシュマロが密着している。
ヤバい……ヤバい……ヤバい……!
今日、色々なドスケベを味わってきたが、これは今日一かもしれない……!
この半密室空間での、ゼロ距離密着。
余りにもドスケベすぎるだろ……。
待ってくれ。
また、俺のムスコが元気になり始めているのだが……⁉
嘘だろ……。
さっき、絞り切ったばかりじゃないか……!
どうなっているんだよ、このバカムスコは……!
「はあ……はあ……」
「息遣い荒いわよ、平谷君?」
「これは……しょうがないよ……」
「またドスケベな気分になってきたのかしら?♡ 平谷君のドスケベ棒、さっき放出したばかりのはずなのに、もう準備万端って感じ」
また、頭がおかしくなっちゃいそうだ……。
というか、今気づいたのだが、折りたたみ傘が小さすぎて、名月さんの左肩しか傘の中に入っていない。
右肩から頭にかけて名月さんはずぶ濡れだ。お似合いの黒縁メガネもビショビショで前が見えているか怪しいほど。
俺も左半身が野晒だが、比率としては俺の方が占領してしまっている状況だ。
いくら俺がドスケベクズ陰キャだとしても、この状況は流石に男が廃る。
「ちょっ――平谷君?」
俺は名月さんの肩を抱き寄せ、出来るだけ彼女の身体が傘に隠れるようにする。
代わりに俺が頭からずぶ濡れだけど、仕方がないことだ。
「流石に、これ以上濡れたらまずいだろ……」
「平谷君……ドスケベだけじゃなくて、案外優しいところもあるのね」
「そ、そうか……? とりあえず、駅まで送ればいいか?」
「何を言っているのかしら?」
「えっ……?」
「こんなずぶ濡れの女の子を電車に乗せる気? それに電車を降りてから結構あるのよ、私の家」
確かに名月さんの制服はびっしょり濡れて、肌にぴったりくっついてしまっている。
そのせいで、彼女の下着が見え隠れしている。
確かに、こんな状況で満員電車に乗ったら、ドスケベな殿方たちにイヤらしい目で見られることだってある。
まあ、ドスケベな名月さんならそれも平気かもしれないが、いくら彼女でも、れっきとした女子高生だ。
その考えはいくら何でも無責任すぎる。
とはいえ、どうすれば……。
すると、名月さんはとんでもない提案をしてきた。
「平谷君の家、お邪魔してもいいかしら?」
「え……?」
とんでもないことを言い始めたぞ……。




