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秋に咲く華  作者: 風花月
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22/24

結界

「……美しいな」

 アリストスが呟いた。


 ウィレイは振り向いて微笑んだ。

「そうでしょ。これも宝玉……というか魔石かな。この国の半分くらいは結界張れるくらいの力をもっているわ」

「それはすごい」


 ウィレイは、石をそっと持ち上げた。


「師匠は結界張っても大丈夫でしょうから、張ってしまいましょう。……サイモン、うちの皆は全員領地内にいるかしら?」

「はい、お嬢様。午前中のうちに指示を出して参集しております」

「ありがとう。では、大丈夫ね」

「はい」


 ウィレイは、部屋の中の広い空間のあるところへ移動した。


 石を魔力で浮かせると、結界の術式を組み立て始めた。領地全土を覆うため、大きなものになる。細部を丁寧に確認しながら、少しずつ広げていく。


 陣が二メートルほどになった。そろそろ石とともに天空へと上げ、発動だ。

 ウィレイの額から、汗がつぅっと落ちた。

(さすがにキツいわね)

 円陣は半球状になった。術式の光が増してくる。

 ウィレイは手をゆっくりと上に上げ始める。

 石は、光に溶け始めた。

 半球は、どんどん大きくなる。

(あと少し)

 

 石が、完全に光と溶け合った。


 次の瞬間、パンッとあたり一体が光で満たされた。


「終わった……」


 ウィレイは呟いて、その場にへたり込んだ。

「ウィレイ!」

 アリストスが駆け寄ってきた。

 ウィレイは微笑むと、

「何とか一人でやれたみたい」

と言って目を閉じた。

「ウィレイ!!」

 アリストスは、ウィレイを抱き上げた。

「休ませましょう。部屋まで運びます」

「頼む」

 オウトゥクスは、領地内の結界の確認に出るため、準備を始めた。

 娘は心配だが、これは魔力の消費で電池が切れるようなものなので、休めば戻る。領主としてまずは、領民の安全を確かめねばならない。

「オルフェはまだか」

 廊下を歩きながら、声に出して言った。

「父上、遅くなりました!」

 オルフェが向こうから走ってきた。

「領地を回るぞ。ウィレイが結界を張った。隅々まで張れているか確認するぞ。穴があるときは、塞げ。私は左回りで行く。そなたは右回りで確認せよ」

「はい」

「サイモン、馬を!天馬を2頭だ」

「かしこまりました」


 男二人は、バタバタと出ていった。


 アリストスはウィレイを抱えて、カルラとベルーラとともにウィレイの部屋へと向かった。

(相変わらず、自分を顧みないんだから)

 それが彼女の魅力でもあり、放っておけない理由でもあった。

 ベルーラが、ため息をついた。

「本当に……オルフェと一緒にやれば、ここまでにはならないというのにこの子は」

 母として、心配なのであろう。平気で無茶をするから。アリストスが言った。

「何でも引き受けてしまいますよね。あまり人を頼らない」

「そうなのよね……」

「だから、つい手伝っちゃうんです。心配で。放っておけないというか」

 ベルーラは、アリストスをまじまじと見た。

「あら、それがこの子を好きになった理由なの?」

 え……とアリストスがワタワタした。

「いや、その……えっと……」

「他にもあるの?」

「まあ、はい」

 顔が真っ赤だ。そこはあまり突っ込まれたくないところなのだが。

 ベルーラとカルラは、目をキラキラさせてアリストスを見つめている。

(これ、言わないと許されない?)

 カルラが言った。

「まずは、お嬢様をベッドに休ませていただいてからです、奥様」

「そうね」

(続くのか……)

 アリストスは心からため息をついた。


 オウトゥクスはざっと領内に張られた結界を確認し終えた。

(大丈夫そうだな)

 もう一度来た道を戻りながら、穴がないか見回した。

 向こうから、オルフェも戻ってきた。

「父上ー!大丈夫そうです!」

「そうか。ひとまず戻ろう」

 二人は、ゆっくりと旋回しながら降り始めた。

 天馬の厩舎に着いたとき、厩長とリュークが見つけて迎えに来た。

「「お帰りなさいませ」」

「うむ。ただ今戻った。何か特に変わったことはあったか?」

「いえ、ございませんでした。マーロン様から、間もなく参るとのお言付けが届きました」

「そうか。では、厩長。すまないが、世話を頼むよ。領地内をぐるぐる回って来たので、何か美味いものを食べさせてやってくれ」

「かしこまりました」

「オルフェ、汗を流してマーロン師を迎えよう」

「はい、父上」

「では、湯殿の準備を」

「頼む」


 リュークは側にいた別の侍従に指示を出すと、客を迎える準備をするため、厨房に向かった。

 オルフェが寄ってきた。

「父上、他家の領地は大丈夫でしょうか」

「そうだな……御方のいらっしゃる家は、恐らく気づいて対処しているだろう。いないところは……恐らくマーロン師が、あえて王領を抜かしてやっていそうだが」

「そうですね」

「王妃がまさかあそこまでとは思わなかった。愚かな。よりによって、マーロン師を怒らせるなど。そして、それを止めない王にも驚いた。世襲であって世襲ではないとご存じのはずなのにな」

「……それほどだったのですか」

「だったのですよ、だ。ま、マーロン師はウィレイを可愛がってくださっているからな。本当にありがたいことに。そもそも、あんなに魔力の強い方が、中つ国の者であるはずはないというのに。私が幼い頃から、師はあの姿のままなのだぞ。王家だとて、何代も恩恵を受けているはずなのに」

「この国に生まれたのに、そんなに我を通そうとする人もいるのですね」

「そうだな。ま、どこの世界にも外れ者はいる。ただそれが、立場のある者だと非常に影響力がな」

「そうですね。……王家は、どうなると思いますか?」

「そうだな……恐らく、良くて国王夫妻が退陣及び蟄居。皇太子が新たな王に。これ以上さらにやらかせば、間違いなく下つ国へ送られる。せめてまともな皇太子は、救って差し上げたいのだが」

「最悪の場合には、皇太子の身柄はどうなります?」

「一緒に下つ国へ。だが、皇太子と第二王子、姫は何とか離宮ででも暮らせるようにして差し上げたいと思う。第三王子は断るが」

「そうですね。……あとは、上つ国の高次の方が、どのようにお考えになられるか」

「温情を賜るよう祈るしかないな」

 

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