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秋に咲く華  作者: 風花月
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14/24

父の葛藤

 オウトゥクスは、風呂から自室に戻った。

 

 ベッドでは、ベルーラが本を読んでいた。


 娘が帰って来たことの喜びはとても大きかったが、その「恋人」が追ってきたということが、引っかかっていた。


 オウトゥクスは呼び鈴を鳴らした。


 間もなく、ノックの音がした。

「お呼びでしょうか」


 リュークが入ってきた。


「遅くにすまない。何か飲むものを持ってきてくれないか」

「かしこまりました」


 何を、とは訊かずにリュークはドアを閉めていった。


 5分ほど経ったころ、再びノックの音が聞こえてきた、


「入れ」

「失礼いたします」


 リュークは、琥珀酒の入ったグラスと、ワインのボトル、ワイングラスをトレーに載せて持ってきた。ナッツの入った小ぶりの皿と、三種類ほどのチーズを盛った皿を添えて。


「お、ありがとう」


「奥様もよろしければ」


「ありがとう」


 ベルーラは本を閉じて部屋履きを履くと、ソファーに座った。


 リュークはワインの封を切った。


「夜も更けてまいりましたので、今日はミドルのものです」

「嬉しいわ」


 オウトゥクスは、さっさと自分用の琥珀酒を飲んでいた。


「「ふぅ」」


 リュークが微笑んだ。


「揃いましたね」


 ベルーラが笑った。


「そうね」


 オウトゥクスは、目を閉じて天を仰いだ。

「沁みるな」


「……いろいろありましたものね」

「そうだな」

「そうですね」


 男二人も頷いた。


「リューク、あの男を何と見た?」

 オウトゥクスが訊いた。

 リュークはしばらく宙を見つめていたが、オウトゥクスを見て言った。


「まだ、何とも申しがたいですね」

「そうか……」


 ベルーラは、グラスをゆったり揺らしながら言った。


「信用できるとお思い?」


 リュークは少し間を空けて答えた。


「恐らくは」

 

 オウトゥクスが鋭くリュークを見た。

「その根拠は?」


 リュークは目を閉じると、反芻するかのように慎重に言葉を紡いだ。


「お気に障るかもしれませんが……お嬢様はあの通り真っ直ぐな方です。素直ですし。一見、悪い者がいたら、騙されそうな感じを受けます。

 しかし、その実、非常によく見ていらっしゃる。人も周りも。単に空気を読むのが上手い、というのとも違います。冷静に状況を掴み、冷静に判断する力をおもちです。

 そのお嬢様が、単なる馬の骨を選ぶとは思えません。何らかのメリットがあるか、若しくは好きになられるだけの要素を彼がもっているか。どちらにしても、お嬢様は人の本質を察知する能力が非常に高いので、そのお眼鏡にかなうのであれば、信用に足るかと思われます」


「なるほど」

「確かにそうだわ」


 二人は頷いた。


「しかし」

 オウトゥクスは、グラスの中を覗いた。

「彼の扱いをどうするべきか」


 リュークは答えなかった。


 ベルーラが言った。


「ウィレイが本気なら、彼を鍛えるしかないわね。出自は……どうにもならない。でも、それを乗り越えるくらいウィレイを好きというなら、御配となることも不可能ではないわ」


 ベルーラは、ワインを飲んで口を湿した。


「だって、四季の御方は、御配を選ぶ権利をもっているのですもの。そしてそれは、如何なる者にも止められないことになっているのだから」

「……そうだな」


 リュークが言った。

「私が申すのも何ですが、彼は、それを望みますでしょうか?」


「ここまで来たのだ。……どうやってかはわからぬが。よほどの思いがなくば、記憶操作から免れるなんてことはできまい」

「ここで生きる覚悟があるかを、まず訊きましょう。本気であるなら、御配となるための力をつけてもらわねばなりません」

「そうだな」

「そうですね」


 オウトゥクスは、グラスを置いた。


「……にしても、久々に娘と暮らせるというのに、まさか男ができたとは」

「旦那様」

「わかっている。わかっているんだ。でも……」


 ベルーラが笑った。


「鬼の侯爵も形無しね」

「フン!父親なんぞ、どこの奴もそんなものだ」

「フフフ」

「笑うな!」


 リュークは、「お早いお休みを」と言って、辞した。


「さて、何から始めるかな」

「そうね……うちの術師様方にお手伝いいただこうかしら。あとは、子どもたちがお世話になった先生方にも」

「そうだな。……どこまでできるか、見ものだな」

「あらあら、舅のいじめが早くも始まるのね」

「い、いじめる気は……」

「ないとは言わせませんよ。娘ラブの人なのに」

「フン!もう寝る!」


 オウトゥクスは、布団を被った。


「男親って、面倒ねぇ……」


 ベルーラはもう一杯、ワインを注いだ。

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